2022年7月21日(木)の深夜、火星が月の裏側に隠される天体現象「火星食」を自宅屋上で見ることができました。
21日21時に自宅屋上のスラィディングルーフの屋根を開けスタンバイ。
予報時刻の2時間以上前にスタンバイしたのは、口径40cm反射望遠鏡を外気温に馴染ませ、鏡面から立ち上る気流の乱れを少なくするためです。
今回の火星食は、東の地平線近くで見える超低空の現象のため、口径40cmF10反射望遠鏡が開閉式屋根に遮られないよう 【 昇降式ピラーを最大限の60cmほどリフトアップ 】させました。
札幌での火星潜入時刻は23時43分ごろで、そのときの火星の高度は約4度と超低空という厳しい条件です。これでも日本国内では条件が良い方で、関東以西だと火星の潜入時刻には月が地平線の下なので見えず、九州以西だと火星の出現時刻でも月が地平線下です。
東の地平線は晴れわたり、地平線から昇ってきた月齢23の月が23時20分ごろに見えてきました。
透明度も良好で、月のすぐ左下に火星も見え始めました。
まあ、一般的には「火星食を観測!」と書くのが最近の風潮ですが、何の測定も記録も報告もしていないので、単なる「観望」です。撮影しただけなのも観測とは言いません。
91500169RUT
潜入20秒前の火星(左下)です。月と火星の地平高度が約4度と低空のため、低空の太陽と同じ理由で月がオレンジ色に染まり、ほんの少しだけ上下が潰れた円形(楕円形)です。
大気の色収差の影響で月縁の上端には青色が、下端には赤色の滲みが出るのを画像補整しています。42mm接眼鏡を使用しコリメート撮影。
SkySafari というアプリで求めた自宅屋上における火星の潜入時間は、23時43分20秒から38秒です。
恒星の食の場合は一瞬で月に隠されますが、火星は視直径が角度の8秒ほどあるため、時間にして約18秒かかって徐々に隠されます。
なお、月の赤道直径3476kmに対し、火星の赤道直径は6794kmと倍近い大きさですが、撮影時点の地球から月までの距離が約39万5千kmなのに対し、火星までは約1億7800万kmと450倍ほどの距離差があります。(火星は2022年12月上旬に約8150万kmまで地球に近づき、マイナス2等級まで明るくなります)
91500170RUT
潜入し始めた火星を拡大撮影するため、大急ぎで20mm接眼鏡に変えました。大気の色収差の影響を打ち消す画像補整済みですが、大気の揺れの影響が大きくボケボケの画像になっています。
火星はすでに半分以上が月に隠されています。
月の視直径は角度の30.3分。火星の視直径は角度の7.9秒なので、火星のみかけの大きさは月の大きさの1/230ほどです。
左上の暗く細長い楕円形は、グリマルディーというクレーターで、右上のクレーターはブリアルドスです。
なお、2022年12月上旬の火星接近時の視直径は角度の17.1秒になります。このときの大きさは木星の視直径の半分ほどです。
地球から見る火星は点光源ではなく面積体のため、月の暗い部分から火星が出現する時刻は、見え始めが0時32分02秒。19秒かけてユックリと全体が見えてきます。
この出現予報時刻は、火星全面が光り輝いていることを前提としていますが、このときの火星は輝面比が約85%で西側が少しだけ欠けているため、実際に火星の光っている部分が見え始めるのは2秒遅れの0時32分04秒からで、火星が月縁から離れるのはその17秒後の32分21秒という予報になります。
月の暗い部分から出てきた火星です。
3枚の画像は5秒間隔で撮影しました。
右端の淡い恒星は、おひつじ座の10等星。今夜の火星は0等級なので、火星は10等星の1万倍ほどの明るさです。
(1等級の明るさの差は約2.5倍、2等級で約6.3倍、3等級で約15.9倍、4等級で約39.8倍、5等級の差でちょうど100倍なので、10等級の差ということは100倍×100倍=1万倍)
月の暗い部分「地球照」が写るように露出を多めにしたことから、まるでクロスフィルターをかけたような十字線が火星の周囲に出ました。
これは、口径40cm反射望遠鏡の副鏡を支える金具(スパイダー)の影響なのですが、これはこれでピカッとした雰囲気が出ていいかもしれません。(笑)
91500200RU
出現時刻から2分ほど経過した火星(右)です。月の暗部から火星が徐々に離れていきます。
撮影時の月と火星の高度は13度ほど。火星潜入時の月の赤っぽさがかなり消えています。月の周辺部画像が乱れ気味なのは、42mm接眼鏡の収差の影響です。
s220722
火星食が終わった直後の0時38分、口径40cm反射望遠鏡にコンデジを装着し火星食を撮影した様子を写しました。
今回の火星食を見ていると、55年前の1967年1月4日深夜の火星食を思い出しました。
深夜2時過ぎ、おとめ座に輝く月齢23の月が火星を隠しました。奇しくも今回の月齢とほぼ同じで、火星の明るさもほぼ同じでした。
確か、関勉さんのベストセラー「未知の星を求めて」にこのときの様子が少しだけ書かれています。
50年以上も星を見続けられる幸せを感じながら、2時過ぎに屋上から撤収。気温は18度でした。
※ このブログ記事は、札幌市青少年科学館が育成している現役天文指導員さん達も見ているそうなので、自主研修効果を期待し今回の記事はいつもより「ちょっとだけ説明がしつこい」記述をしています。(笑)
21日21時に自宅屋上のスラィディングルーフの屋根を開けスタンバイ。
予報時刻の2時間以上前にスタンバイしたのは、口径40cm反射望遠鏡を外気温に馴染ませ、鏡面から立ち上る気流の乱れを少なくするためです。
今回の火星食は、東の地平線近くで見える超低空の現象のため、口径40cmF10反射望遠鏡が開閉式屋根に遮られないよう 【 昇降式ピラーを最大限の60cmほどリフトアップ 】させました。
札幌での火星潜入時刻は23時43分ごろで、そのときの火星の高度は約4度と超低空という厳しい条件です。これでも日本国内では条件が良い方で、関東以西だと火星の潜入時刻には月が地平線の下なので見えず、九州以西だと火星の出現時刻でも月が地平線下です。
東の地平線は晴れわたり、地平線から昇ってきた月齢23の月が23時20分ごろに見えてきました。
透明度も良好で、月のすぐ左下に火星も見え始めました。
まあ、一般的には「火星食を観測!」と書くのが最近の風潮ですが、何の測定も記録も報告もしていないので、単なる「観望」です。撮影しただけなのも観測とは言いません。
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潜入20秒前の火星(左下)です。月と火星の地平高度が約4度と低空のため、低空の太陽と同じ理由で月がオレンジ色に染まり、ほんの少しだけ上下が潰れた円形(楕円形)です。
大気の色収差の影響で月縁の上端には青色が、下端には赤色の滲みが出るのを画像補整しています。42mm接眼鏡を使用しコリメート撮影。
SkySafari というアプリで求めた自宅屋上における火星の潜入時間は、23時43分20秒から38秒です。
恒星の食の場合は一瞬で月に隠されますが、火星は視直径が角度の8秒ほどあるため、時間にして約18秒かかって徐々に隠されます。
なお、月の赤道直径3476kmに対し、火星の赤道直径は6794kmと倍近い大きさですが、撮影時点の地球から月までの距離が約39万5千kmなのに対し、火星までは約1億7800万kmと450倍ほどの距離差があります。(火星は2022年12月上旬に約8150万kmまで地球に近づき、マイナス2等級まで明るくなります)
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潜入し始めた火星を拡大撮影するため、大急ぎで20mm接眼鏡に変えました。大気の色収差の影響を打ち消す画像補整済みですが、大気の揺れの影響が大きくボケボケの画像になっています。
火星はすでに半分以上が月に隠されています。
月の視直径は角度の30.3分。火星の視直径は角度の7.9秒なので、火星のみかけの大きさは月の大きさの1/230ほどです。
左上の暗く細長い楕円形は、グリマルディーというクレーターで、右上のクレーターはブリアルドスです。
なお、2022年12月上旬の火星接近時の視直径は角度の17.1秒になります。このときの大きさは木星の視直径の半分ほどです。
地球から見る火星は点光源ではなく面積体のため、月の暗い部分から火星が出現する時刻は、見え始めが0時32分02秒。19秒かけてユックリと全体が見えてきます。
この出現予報時刻は、火星全面が光り輝いていることを前提としていますが、このときの火星は輝面比が約85%で西側が少しだけ欠けているため、実際に火星の光っている部分が見え始めるのは2秒遅れの0時32分04秒からで、火星が月縁から離れるのはその17秒後の32分21秒という予報になります。
月の暗い部分から出てきた火星です。
3枚の画像は5秒間隔で撮影しました。
右端の淡い恒星は、おひつじ座の10等星。今夜の火星は0等級なので、火星は10等星の1万倍ほどの明るさです。
(1等級の明るさの差は約2.5倍、2等級で約6.3倍、3等級で約15.9倍、4等級で約39.8倍、5等級の差でちょうど100倍なので、10等級の差ということは100倍×100倍=1万倍)
月の暗い部分「地球照」が写るように露出を多めにしたことから、まるでクロスフィルターをかけたような十字線が火星の周囲に出ました。
これは、口径40cm反射望遠鏡の副鏡を支える金具(スパイダー)の影響なのですが、これはこれでピカッとした雰囲気が出ていいかもしれません。(笑)
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出現時刻から2分ほど経過した火星(右)です。月の暗部から火星が徐々に離れていきます。
撮影時の月と火星の高度は13度ほど。火星潜入時の月の赤っぽさがかなり消えています。月の周辺部画像が乱れ気味なのは、42mm接眼鏡の収差の影響です。
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火星食が終わった直後の0時38分、口径40cm反射望遠鏡にコンデジを装着し火星食を撮影した様子を写しました。
今回の火星食を見ていると、55年前の1967年1月4日深夜の火星食を思い出しました。
深夜2時過ぎ、おとめ座に輝く月齢23の月が火星を隠しました。奇しくも今回の月齢とほぼ同じで、火星の明るさもほぼ同じでした。
確か、関勉さんのベストセラー「未知の星を求めて」にこのときの様子が少しだけ書かれています。
50年以上も星を見続けられる幸せを感じながら、2時過ぎに屋上から撤収。気温は18度でした。
※ このブログ記事は、札幌市青少年科学館が育成している現役天文指導員さん達も見ているそうなので、自主研修効果を期待し今回の記事はいつもより「ちょっとだけ説明がしつこい」記述をしています。(笑)
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