実は,この前のPTAイベント(新聞の載った)が終了した夜,ボクは,前PTA会長のUさんと近所のヤキトリ屋で呑んだのであった。
一週間程前に,ボクはUさんに電話をしていて,都合がいい日に呑みに行きませんかと誘っていたのだ。
そんなUさんは,昨年の3月に,義母の看護のために嫁さんの実家に同居というカタチで転居したのだったが,2学期の途中で同じ校区内に戻ってきていたのであった。
会長の仕事は,副会長のそれとは全く違ってタイヘンそのもので,できれば来期は他の誰かに交代してもらいたいと,会長になった当初からボクはそう思っていた。そんな矢先に前会長が戻ってきてたのだった。陰謀半分で会長に担がれたボクとしては思うところがあっても変じゃぁないでしょう。
元々Uさんは,転居という急な話しが出る前までは,続投ということが内々に決まっていたわけだし,ボクはUさんが会長だから副としての手伝いを受けていたのであった。
ヤキトリ屋は客でごった返していた。Uさんとボクはカウンターの隅に腰を掛けて,とりあえずナマで乾杯をした。そして,とりあえずお互いの近況を語り合い,世間話しのネタが尽きた頃,Uさんが神妙な表情で話しだした。
「ねぇ,○○君,うちのヨメさんが最近言ってることなんだけどね, “来年はご主人が会長さんになるんですよね”みたいなことを周囲の人から言われているらしいとたいね~」
ボクは,そのことに関し否定も肯定もしなかった。そのかわり,こう答えた。
「やっぱ,ボクは来年も会長とかはムズカシイカですよ,ホントに・・・,会社でもイロイロ言われてるんですよ・・・。」
Uさんには悪かったが,「Uさんの来年会長説」を流布した張本人はこのボクだった。
そしてUさんは,こう続けた。
「ホントにね~,○○君には悪かったと思っとるよ~。苦労かけたと思っとる~。ばってんね~,出戻りが返り咲くのも,なんだか,問題があるんじゃないのかなと思うとよ。そぎゃん思わんね~。」
ボクにとっては全く問題ない・・・と・・・思った。
さらに,Uさんは続けた。
「いや~,でもホント,西君はよく頑張ったと思うよ。大変だったろ~,老人会とか自治会の付き合いとかさぁ~。いろんな人いるもんね~。」
そりゃぁもう・・・と・・・思った。
「不安はない。うん,はっきり言って,会長になることに不安はないとよ。しかしなぁ~,周囲がなんと言うかなぁ。スタッフも入れ替わるんだろ~。」
よ~し,よ~し・・・と・・・思った。
と,そのとき,Uさんのケイタイが鳴った。同じ校区に住むYさんからだった。Yさんは,世話好きオバサン(オバサンなんて言ったことがYさんに知られたらボクはこの校区で生きていけなくなるかもしれない)としてPTAではあまりにも有名な人物で,昨年までPTA役員をしていた。そんなYさんは,今年は役員の選考委員長を務めていて,Uさんに掛けてきた電話は,正に来期PTA執行部復帰の打診だった。グッドタイミングだった。
「こんばんは,Uです。・・・・・・・,・・・・・・・実は,その件で,今,話しばしよるとたい。・・・・えっ?。誰って?。○○君とたい。・・・・・・そ~んな簡単に返事はでき~んた~い。・・・・・とにかくね~,もう少し話しばしてみるけん。 ・・・・・はい,は~い,じゃ」
ボクは,あと一押しという雰囲気を感じた。
と,そのとき,お店の入り口の引き戸が,勢いよく開く音が聞こえた。振り向くと,ノレンを邪魔そうに手で掻き分けて入ってきたのは,ボクんちの隣の隣の隣の隣に住んでいる長身のDさんだった。Dさんはボクらを見つけると,ニッと笑って「おう,こんばんは,こんばんは,どうも,どうも」と言いながら隣に座った。そして,ボクとUさんは一様に驚いてしまったのだった。
そんなDさんは,最近,転職して仕事は以前と違ってずいぶん楽チンみたいで,仕事は定時に終わるし,土日に休みが取れるのがなんと言っても一番うれしいと言っていた。そして,バイク免許の限定解除をしたいなぁなんて余裕発言をカマしていた。それを聞いたのは年末のモチツキ大会の時だったけど,これは「ヒョットして」とボクは思ったものだった。
そして,この日のイベントの最中,ボクはそれとな~くDさんに近づき,一緒にタバコを吸いながら,実は,イベントが終わった後にUさんと呑むのだが一緒にどうですかと誘ってみたのだった。DさんとUさんは,息子同士が同じサッカー部で,お互いに顔見知りだったし,さっきも言ったようにボクにはヒョットしてという思いがあったからだ。しかし,Dさんは,イベントの後は家族で外食をするから,それが済んだ後でよければという返事だった。この時点では,ボクはまだUさんと呑む場所を決めておらず,だから,また後で電話するというような約束を交わしたのだった。そして,Uさんと呑み始めてしばらくし経ったとき,ボクはDさんちに電話をしたのだったが,そのときは,もうフロに入ってしまって今日はカンベンという“ありがち”な返事だったので,てっきりDさんは来ないと決め込んでいたのだった。
ところが,長崎出身の自称元ヤンキーのDさんは茶色の皮コートを羽織って店に入ってきたかと思うと,カウンターの椅子をガーッと引いてドカッと座ったのだった。Dさんは体がデカイく,だから,店が急に狭くなったように感じた。超短髪に縁無しメガネ。どことなくインテリっぽくもあるけど,首を時々小刻みにクキクキっと動かす様子は,なんだか確かにヤンキーっぽい。武勇伝としては,家族とドライブ中に煽った車を抜き返してその車を急停車させ,運転席の窓ガラスを拳で叩き割ってやったというのが挙げられる。そして極めてつけはキョクシンのクロオビ。
そんなわけで,濃い~オトコの飲み会がスタートしてしまった。
話題はモッパラ,Uさんの今後の去就についてだった。
「あ~でもない,こ~でもない」とクダを巻き始めたUさんに,
とうとうDさんは,シビレを切らせて「Uさんが会長やるんだったら,オレ,なんでも手伝いますよ。副会長,いいじゃないですか,しますよ,ホントに」と言ってしまった。
キョクシンクロオビに二言はあるまい・・・と思った瞬間だった。
ボクは思わず「キターッ!」と叫んでしまった。
客はいつの間にか我々だけになっていた。
焼酎はボトルにしておけば良かったと思った。
店を出ると,駐車された車にビッシリと霜が降りていた。外気は相当冷えていたようだが,あまり寒さは感じなかった。
別れ際,Uさんは「考えとくよ」と言って手を振った。
一週間程前に,ボクはUさんに電話をしていて,都合がいい日に呑みに行きませんかと誘っていたのだ。
そんなUさんは,昨年の3月に,義母の看護のために嫁さんの実家に同居というカタチで転居したのだったが,2学期の途中で同じ校区内に戻ってきていたのであった。
会長の仕事は,副会長のそれとは全く違ってタイヘンそのもので,できれば来期は他の誰かに交代してもらいたいと,会長になった当初からボクはそう思っていた。そんな矢先に前会長が戻ってきてたのだった。陰謀半分で会長に担がれたボクとしては思うところがあっても変じゃぁないでしょう。
元々Uさんは,転居という急な話しが出る前までは,続投ということが内々に決まっていたわけだし,ボクはUさんが会長だから副としての手伝いを受けていたのであった。
ヤキトリ屋は客でごった返していた。Uさんとボクはカウンターの隅に腰を掛けて,とりあえずナマで乾杯をした。そして,とりあえずお互いの近況を語り合い,世間話しのネタが尽きた頃,Uさんが神妙な表情で話しだした。
「ねぇ,○○君,うちのヨメさんが最近言ってることなんだけどね, “来年はご主人が会長さんになるんですよね”みたいなことを周囲の人から言われているらしいとたいね~」
ボクは,そのことに関し否定も肯定もしなかった。そのかわり,こう答えた。
「やっぱ,ボクは来年も会長とかはムズカシイカですよ,ホントに・・・,会社でもイロイロ言われてるんですよ・・・。」
Uさんには悪かったが,「Uさんの来年会長説」を流布した張本人はこのボクだった。
そしてUさんは,こう続けた。
「ホントにね~,○○君には悪かったと思っとるよ~。苦労かけたと思っとる~。ばってんね~,出戻りが返り咲くのも,なんだか,問題があるんじゃないのかなと思うとよ。そぎゃん思わんね~。」
ボクにとっては全く問題ない・・・と・・・思った。
さらに,Uさんは続けた。
「いや~,でもホント,西君はよく頑張ったと思うよ。大変だったろ~,老人会とか自治会の付き合いとかさぁ~。いろんな人いるもんね~。」
そりゃぁもう・・・と・・・思った。
「不安はない。うん,はっきり言って,会長になることに不安はないとよ。しかしなぁ~,周囲がなんと言うかなぁ。スタッフも入れ替わるんだろ~。」
よ~し,よ~し・・・と・・・思った。
と,そのとき,Uさんのケイタイが鳴った。同じ校区に住むYさんからだった。Yさんは,世話好きオバサン(オバサンなんて言ったことがYさんに知られたらボクはこの校区で生きていけなくなるかもしれない)としてPTAではあまりにも有名な人物で,昨年までPTA役員をしていた。そんなYさんは,今年は役員の選考委員長を務めていて,Uさんに掛けてきた電話は,正に来期PTA執行部復帰の打診だった。グッドタイミングだった。
「こんばんは,Uです。・・・・・・・,・・・・・・・実は,その件で,今,話しばしよるとたい。・・・・えっ?。誰って?。○○君とたい。・・・・・・そ~んな簡単に返事はでき~んた~い。・・・・・とにかくね~,もう少し話しばしてみるけん。 ・・・・・はい,は~い,じゃ」
ボクは,あと一押しという雰囲気を感じた。
と,そのとき,お店の入り口の引き戸が,勢いよく開く音が聞こえた。振り向くと,ノレンを邪魔そうに手で掻き分けて入ってきたのは,ボクんちの隣の隣の隣の隣に住んでいる長身のDさんだった。Dさんはボクらを見つけると,ニッと笑って「おう,こんばんは,こんばんは,どうも,どうも」と言いながら隣に座った。そして,ボクとUさんは一様に驚いてしまったのだった。
そんなDさんは,最近,転職して仕事は以前と違ってずいぶん楽チンみたいで,仕事は定時に終わるし,土日に休みが取れるのがなんと言っても一番うれしいと言っていた。そして,バイク免許の限定解除をしたいなぁなんて余裕発言をカマしていた。それを聞いたのは年末のモチツキ大会の時だったけど,これは「ヒョットして」とボクは思ったものだった。
そして,この日のイベントの最中,ボクはそれとな~くDさんに近づき,一緒にタバコを吸いながら,実は,イベントが終わった後にUさんと呑むのだが一緒にどうですかと誘ってみたのだった。DさんとUさんは,息子同士が同じサッカー部で,お互いに顔見知りだったし,さっきも言ったようにボクにはヒョットしてという思いがあったからだ。しかし,Dさんは,イベントの後は家族で外食をするから,それが済んだ後でよければという返事だった。この時点では,ボクはまだUさんと呑む場所を決めておらず,だから,また後で電話するというような約束を交わしたのだった。そして,Uさんと呑み始めてしばらくし経ったとき,ボクはDさんちに電話をしたのだったが,そのときは,もうフロに入ってしまって今日はカンベンという“ありがち”な返事だったので,てっきりDさんは来ないと決め込んでいたのだった。
ところが,長崎出身の自称元ヤンキーのDさんは茶色の皮コートを羽織って店に入ってきたかと思うと,カウンターの椅子をガーッと引いてドカッと座ったのだった。Dさんは体がデカイく,だから,店が急に狭くなったように感じた。超短髪に縁無しメガネ。どことなくインテリっぽくもあるけど,首を時々小刻みにクキクキっと動かす様子は,なんだか確かにヤンキーっぽい。武勇伝としては,家族とドライブ中に煽った車を抜き返してその車を急停車させ,運転席の窓ガラスを拳で叩き割ってやったというのが挙げられる。そして極めてつけはキョクシンのクロオビ。
そんなわけで,濃い~オトコの飲み会がスタートしてしまった。
話題はモッパラ,Uさんの今後の去就についてだった。
「あ~でもない,こ~でもない」とクダを巻き始めたUさんに,
とうとうDさんは,シビレを切らせて「Uさんが会長やるんだったら,オレ,なんでも手伝いますよ。副会長,いいじゃないですか,しますよ,ホントに」と言ってしまった。
キョクシンクロオビに二言はあるまい・・・と思った瞬間だった。
ボクは思わず「キターッ!」と叫んでしまった。
客はいつの間にか我々だけになっていた。
焼酎はボトルにしておけば良かったと思った。
店を出ると,駐車された車にビッシリと霜が降りていた。外気は相当冷えていたようだが,あまり寒さは感じなかった。
別れ際,Uさんは「考えとくよ」と言って手を振った。
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