三流読書人

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おすすめコラム 「発信箱」

2007年12月15日 09時32分01秒 | 読書

  『毎日新聞』のコラム「発信箱」。このコラムが好きです。毎日読みます。『毎日新聞』の第一線の記者、編集者などが書いているようです。 
 昨日(2007年12月14日)の「発信箱」です。

 「機械の至らなさ」中村秀明(経済部) 
 JRのある駅。つえをついたおばあさんを伴った女性が駅員に尋ねた。「あそこは怖くて行けない。遠回りでいい、他の道はありませんか」
 あそことは「動く歩道」。歩いている速さからの加速と、再び歩き出す速さへの減速を、自分の足腰でコントロールしなければならない。つえ頼みの老人には無理だ。誰かが体を支えても、こけそうで足が踏み出せない。約100メートルの通路は動く歩道だけ。遠回りは、階段も多く10分以上余計にかかるが……。
 高齢者や弱者にも配慮した便利で快適な設備のはずが、危険や不安の種として自由な通行を妨げる。機械には、どこか人の心理や行動となじまないものがある。
 「夢の技術」のロボットにも、そんな面がないか。
 トヨタやホンダの研究に水を差す気はないが、「お茶くみの連係作業ができた」が大きな進歩とは。技術開発が進み、人に近づいたと言われれば言われるほど、むしろ「ロボットの至らなさ」と、「人の能力の高さ、柔軟さ」を痛感してしまう。介護や接客での実用化も近いと意気込まれても、正直言えば、ロボットのお世話になるのは危なっかしくて遠慮したい。
 さて、窮状を理解した駅員は、備え付けの車いすに乗せ、動く歩道を押してホームへ案内した。そして目的地の駅。動く歩道はないけど、こっちは階段が多い。
 「よいしょ」とつえをつき、歩き始めたおばあさん。ふと前を見やると、車いすを用意した男女の駅員2人の笑顔があった。「連絡を受けてお待ちしていました」。人の力はすごいなあ、と思った。

 所詮機械である。あんまり頼りすぎないことだ。
 窮状を理解した駅員、車いすを用意した男女の駅員2人の笑顔、これが人の住む世の中の最も大事な不可欠の要素だろう。
 しかし、パソコンも器械なんだよな、こんなものにどっぷり浸かってしまっている自分の生活を思いつつ。

 


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