近代の浪曲師では国本武春師が好きである。4年前に55才で亡くなられたそうで残念なのだが・・・
母がまだ元気だった頃、「最近若手ですごく上手な人が出てるよ、聴いてごらん」という。
その頃は中村富士夫師が好きだったから(今も大好き♡)余り興味はなかったが、母が言うのでCDを買った。
成る程、若手なのに上手い。
というか、私は浪曲はすっかり廃れた芸能だとばかり思っていたから、若手の浪曲師がいることに驚いた。
先ず聴いたのが『南部坂雪の別れ』
吉良邸への討ち入りを控えた大石内蔵助が、浅野内匠頭の奥方瑶泉院に別れを告げようと訪ねるのだが、
お女中の中にスパイがいるのに気付いて、本心を打ち明けることが出来ず、
「仇討ちなんかしませんよ、里に帰って小間物屋を始めます」なんて言うものだから、
瑶泉院が怒って追い返すという、あまたある赤穂義士伝の中のひとつ。
その出だしを聴いたときハッとした。父の節回しとソックリだったからだ。
父の舞台姿は余り記憶にないのだけど、家でしょっちゅう唸っていたので、この一節はよく覚えていた。
〽おなんどらしゃの長合羽ァ~二段はじきの渋蛇の目~ツマガケナシタ高足駄ァ~
父は若い頃は東家燕丸と名乗っていたらしい。
国本武春師の師匠は桃中軒雲右衛門の流れの東家幸楽師だというから同じ系統なのかなあ?!
その辺のことは知らないが、とにかく、節回しが父とソックリだったのである。
それからは余り聴くこともなかったが、最近車にCDプレーヤーを付けてもらったから、
運転しながら、8枚しかない浪曲CDを繰り返し聴くようになった。
〽御納戸羅紗の長合羽ァ~二段はじきの渋蛇の目~ツマガケナシタ高足駄ァ~
これは雪の南部坂を訪れた内蔵助の出で立ちを描写しているのだが、
この、『妻がけなした高足駄』がどうしても理解できない。
似合わないとか言ってけなしたの?だけど奥方のりくさんは、討ち入りのために離縁されて里に帰ってるはずだし?
と引っ掛かりつつもスルーしていた。
最近である。国本武春師の著書があることを知り、取り寄せた。
浪曲師の娘でありながら、私自身は舞台に立ったこともないから素人同然である。
それでも浪曲や三味の音は私の心のふるさと。詳しく知りたくなったのだ。
で、読んでいて『目からウロコ』だったのがこのページ!
『妻がけなした』じゃなくて『爪掛けなした』だったんですよ!!(゚д゚)!
爪掛けとは、雨や雪の時に下駄の先に掛けるカバーのこと。これで納得いった。
しかし、今の今まで『妻がけなした』と思い込んでいたから、可笑しくて堪らない。
父や母が生きてたら、さぞ笑われたことだろうと思う。
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