雲のたまてばこ~ゆうすげびとに捧げる詩とひとりごと

窓の雨つぶのような、高原のヒグラシの声のような、青春の日々の大切な箱の中の詩を、ゆうすげびとに捧げます

おとなりの国

2012年09月21日 | ポエム

 おとなりの国

 スイスのバーゼルには、フランスとドイツとの3カ国の国境がある。島国である日本人の国境の感覚からは遠い。
 バーゼルには若い頃美術館を訪ねて行ったことがあるが、ヨーロッパの交通の要所でもあるスイス国鉄のバーゼルの駅のホームはフランス国鉄のホームと隣接しており、確かホームに国境があったような記憶がある。そしてそのとき、スイス人は美味しいパンを求めて国境を越えて毎日フランスに買い物に行くのだと聞き、不思議な感じがしたのを覚えている。
 日本には、陸地の国境線が無い。大小の島々から成り立ち、国境はすべて海で囲まれている。海外という言い方があるように、外国はすべて海の向こうにあるのである。
 韓国も中国も私の頭の中では、ずっと遠い国だった。でもある時に、九州に住む私達は東京よりもソウルや上海が近くにあることを知った。そう言えば、夜中にラジオを聴くと、日本語より韓国語や中国語が多く聴こえて来ていた。東京の放送局より近かったのだから当然のことだ。
 それでも長い間、私にとって韓国や中国は遠い国だった。
 その距離を縮めたのは、韓国ドラマである。
 最初に興味を持ったのは「チャングム」という朝鮮王朝時代の宮廷の女官が主人公のドラマ。主役のイ・ヨンエという女優さんの聡明な美しさと料理に惹かれて見始めた。次に「面白いからとにかく見て」と家人に勧められたのが、世の大ブームより数年遅れて見た「冬のソナタ」。ヒットした主題歌と共に、若いチェ・ジウの輝く様な美しさにすっかり心を奪われてしまった。その二つのドラマをきっかけに、韓国ドラマや韓国映画を夫婦で次々に見た。今や韓国ドラマは、私達夫婦の生活の一部となっている。
 国民性や習慣の違いに驚く事も多いが、共通点も多いことにもっと驚いた。吹き替えでなく、原語の放送を見ていると、まったく同じ意味でほとんど同じ発音の単語が多い事に気付き、うれしくなった。焼き肉やキムチしか知らなかった韓国料理も豆腐チゲやビビンバ、チャプチェやチジミなどは、今やすっかり我が家の定番メニューとなっている。
 中国は、もともと高校生の頃からあこがれがあった。
 漢文の教科書に載っていた桂林の写真を見て、山水画に描かれた風景が写実であって誇張ではないことを知って驚愕したのがきっかけだった。
 日本の歴史、文化、生活、そのほとんどすべてにおいて、中国は手本となり切っても切れない日本国の親のような存在である。その長い長い歴史や文化を尊敬申し上げている。
 今、この両国との関係が悪化している。
 竹島、尖閣諸島の領有問題がその大きな原因となっている。
 連日の報道を見聞きしていて、私は腹が立つより悲しい。心が痛い。
 だからといって、北方領土を含めた領土問題は、一国民としても熱くなってしまうし、簡単に譲ったりあきらめたりはできないのは、私自身も同じである。
 ああ、何かよい解決法は無いのだろうか。
 ロンドンオリンピック。
 一番興味があり応援していた男子サッカーは、準決勝でメキシコに敗れ、同様にブラジルに敗れた宿敵の韓国と3位決定戦で対戦した。日韓戦は、親善試合であっても「韓国だけには負けたくない」とただでさえ応援にも熱が入る。
 しかし結果は0-2で日本が敗れ、1968年のメキシコ大会以来のメダルを逃した。内容も韓国がすばらしかった。私は素直に「おめでとう」と韓国チームに拍手をして寝た。ところがその後の表彰式でのプラカード事件。
 初めて知ったときは、悲しくなった。
 あの舞台でそこまで韓国選手をさせるエネルギーは何なのだろう。
 悲しい出来事だけど、オリンピックの場であることを考えたら、やはり許せない。チームの銅メダルは認めても、張本人にはメダルをあげたくない。
 オリンピック精神の第1は、「スポーツを通して世界の平和に貢献する」とあるのだから。
(2012.9.21)
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