《2016年11月27日》
国際人権NGOヒューマンライツ・ナウは今年初めにジュネーブで開催された第31会期人権理事会に「福島・原発事故後、日本政府による被災者の基本的人権の継続的侵害に関する声明」を提出した。声明文は英語だが、次のような提案をしている。
(1)2015年の避難地域の解除の見直し、(2)非指定地域からの避難者への住宅援助停止決定の見直し、(3)すべての避難者を国内難民として保護し、住居、健康、環境、家族に関する権利を保障するための経済的、物質的援助を行うこと、(4)最も被害を受けやすい人々を守るための避難地域や線量限度に関する国家プランを策定し、被ばくを1mSv/y以下にすること、(5) 1mSv/y以上の地域からの避難、滞在、帰還する人々への移住、住居、雇用、教育、その他の必要な援助のための資金を提供すること、(6)健康調査政策を見直し、1mSv/y以上の地域に住む人々にたいする包括的かつ長期的な健康診断を行うこと、(7)福島事故被害者に対する効果的な相談業務を行うこと。
つまり、こうした至極当然な提案がなされる背景には、被害者の人権にかかわるきわめて基本的な政策を政府は行っていないということだ。国策としての原子力政策であるがゆえに東京電力への援助は手厚い。であれば、国策の被害者にたいしても手厚くするのが筋だと思うが、現実はまったく非対称である。もう誰でも気づいているにちがいないが、この国にとって大事なのは国民ではないのである。
その国家のありようを示すもう一つの話題として、原子力ロビーである電気事業連合会(電事連)が自民党に7億6千万円の政治献金を行ったということが紹介された。電力9社は電事連を通じて(隠れ蓑として)自民党へ献金をしているわけで、東電と事故被害者に対する政府の手当ての非対称もそこから由来している。「金め」に象徴される政治というのが自民党や公明党のめざす政治なのである。
仕事で飯館に行くように言われている人が「除染等放射線電離検査」なる健康診断を受けさせられたが、これはどういうものかと質問された。私も初めて聞く言葉だった。
帰宅後にネットで調べたら、福島事故の後で急いで発せられた厚生労働省令によって「東日本大震災により生じた放射性物質により汚染された土壌等を除染するための業務に係る電離放射線障害防止規則」に定められた健康診断で、正確には「除染等電離放射線健康診断」という。
除染等の業務に常時従事する労働者に対して、雇入れ時、当該業務に配置替え時、その後6か月以内ごとに1回、定期に、(1)被ばく歴の有無の調査及びその評価、(2)白血球数及び白血球百分率の検査、(3)赤血球数の検査及び血色素量又はヘマトクリット値の検査、(4)白内障に関する眼の検査、(5)皮膚の検査について医師による健康診断を行わなければならない、と定められている。
従来は、放射線管理区域に放射線作業従事者として立ち入る者に対する健康診断であるが、福島の汚染地区を管理区域と定めないままに除染作業をさせるために策定されたものだ。管理区域と定めると作業従事者しか立ち入ることができなくなり、それ以外の人間はすべて区域外に居住しなければならなくなる。政府が進めている帰還計画など問題外ということになってしまう。
いわば、現状をしのぐための泥縄の法令ではあるが、そこで働く人間にとっては将来の放射線障害に対する予防と保障のためには絶対に欠かすことのできない健康診断である。これと、労働期間中の被ばく線量や身体汚染の正確な記録は不可欠である。
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