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宇宙の膨張とハッブル定数

2024-09-29 08:29:13 | ブログ
 千葉大学の大栗真宗先生の「宇宙の大きさってどれくらい?」と題する講演を聴講した。宇宙論において重要な物理定数であるハッブル定数の精密な値を得て、それから宇宙の大きさを推定しようとする試みである。

 宇宙は膨張しており、我々からみて遠くにある銀河の後退速度vは、H0を現在時刻におけるハッブル定数、遠くの銀河までの距離をrとすると、v=H0rの式から計算できるとされる。

 しかしながら、遠くの銀河が光を発したのは遠い過去の時点であり、その時点から現在時刻までの間には過去の宇宙膨張分の積み上げがあるはずであり、v=H0rのような線形式にならないのではないかと疑問に思っていた。そこでこの際、H0が何を意味するものか、再検討することにした。

 この式のH0は現在時刻の値であるから、vとrも現在時刻における変数と考え、v0=H0r0と書く方が分かりやすい。しかし、v=H0rの式は、遠くにある多くの銀河に適用可能であることを示すために、現在時刻よりもそれを優先して(v,r)を変数表記としたのであろう。

 距離r(t)は、r(t)=a(t)xの式で表現される。スケール因子a(t)は1Mpcを単位として付された物差しの一目盛り分の膨張と考えればよく、xはこの目盛り単位で計数する銀河間の距離である。

 銀河の後退速度vは
   v=dr/dt=(1/a)(da/dt)r=H0r
で得られる。定数のaは目盛り単位であり、1Mpcである。rを現在時刻での宇宙膨張なしの距離(つまりr0)とみなすと、x=r/aとなる。こうしてみると、ハッブル定数H0は、関数v=f(r)の単位目盛り当たりの微分係数であり、現在時刻での膨張速度を意味することが分かる。

 宇宙は、一様等方であるとみなすので、時刻が同じであれば宇宙空間のどの部分に1Mpcの距離をとっても膨張速度は同じと考える。銀河間の距離を1Mpcを単位として計数したとき、その値xは時間にはよらず、スケール因子a(t)が時間依存となる。

 同じ時刻のときの全宇宙の膨張速度da/dtが同じとすれば、異なる時刻のときの全宇宙の膨張速度もその時刻において同じと考えてよいはずである。そうであれば、遠くの銀河までの時刻r(t)が異なっても1Mpc当たりの膨張速度として平均値は同じ、すなわちハッブル定数H0は同じと考えてよいのではなかろうか。なお、近くの銀河と最遠の銀河とでは宇宙膨張分の積み上げ履歴が違うはずだが、そのような違いはH0に付いている+-の誤差範囲内に反映されているということだろうか。

 目盛りの膨張速度(1/a)(da/dt)は、一般相対性理論から導かれる目盛りの大きさの時間変化を司る方程式によって支持されており、v=H0rおよびr(t)の式は、シンプルな線形式にもかかわらず、観測値と整合することが確認されている。

 ちなみに、アンドロメダ銀河は天の川銀河から約230万光年離れているが、秒速120km程度で近づいている。1pc=3.26光年とすると、230万光年は0.706Mpcに相当する。1Mpc当たりの膨張速度を70km/sとすると、宇宙膨張分は49.4km/sとなり、引力により両銀河が近づく速度は、見かけの速度120km/sに減速分を加えて約169km/sとなる。1Mpcという目盛り単位は、できるだけ銀河間の引力の影響を避ける方向で決めたものらしい。

 参考文献
 二間瀬敏史著「なっとくする宇宙論」(講談社)

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