ゆめ未来     

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今週の読書! 不思議な羅針盤/もうひとりのタイピスト/切り裂きジャックの告白/

2015年11月28日 | もう一冊読んでみた
 今週は、この3冊。

不思議な羅針盤/梨木香歩   2015.11.28

 梨木香歩さんのエッセーを初めて読みました。
良質な文と時間が流れていく感じが好きです。
特に、植物や動物に対する梨木さんの眼差しがすごく好きです。
ぼくには、「ご隠居さんのお茶と昼酒」が良かった。

 全く理想通りには行かないけれど、ほんの少し、何かに依りかかったり、耽溺したり、また少し、軌道修正したりして、理想からそれほど大きく離れもしない「持続可能な」生活。頼るものがあるときは頼り、支えのないときは一人で立つ。貝母には案外、そういう自分に無理を強いない、生活バランスのための羅針盤が備わっているのかもしれない。

 森下さんの言う、自分が百パーセント、ここにいる、という感覚は、自分自身がその「場」に生起している何者かになりきる、つまり、「場」を生き切っている、ということなのだろう。


 ミミズや菌類のいっぱいいる大地は、祝祭の予感に満ちている。

 『 不思議な羅針盤/梨木香歩/文化出版局 』



もうひとりのタイピスト/スーザン・リンデル   2015.11.28

 これは正義にもあてはまる逆説だと思う。実態からの分離という意味で。正義というものは、すべてをよく見ることだと思われている反面、目をつぶるところも同時にあるのだから。あたしたちタイピストは自分の意見を表明しないことを求められているけど、正義の女神はさらに能力を奪われており、第一印象という偏見を考慮に入れることを許されない。

この小説、『もうひとりのタイピスト』は、このようなモノローグが延々と隙間なくびっしりとp358も続きます、それでも、忍び寄る不幸の兆しを時々、それとなくもらしながら。

「訳者あとがき」に興味ある話が紹介されていました。

 彼女はF・スコット・フィッツジェラルドが多くの短編で描いているような、女同士の競争意識のある友情に興味があり、『グレート・ギャツビー』が大好きでした。一九二〇年代の文学と文化専攻の大学院生だったころ、禁酒法時代の警察署でタイピストとして働いていた女性の死亡記事を見つけ、その人生はどんなだったか、署で何を見たか、どんな報告書をタイプしたのかと想像するうち、彼女が仕事をするなかで事実をゆがめたらどうなるかと考えたことから、自然とローズが語り出し、本書が生まれたそうです。

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 『 もうひとりのタイピスト/スーザン・リンデル/吉澤康子訳/東京創元社 』



切り裂きジャックの告白/中山七里   2015.11.28

 いいか、人間は真っ当に暮らしていても目の前に障壁の立ちはだかる時がある。打ち破るか乗り越えるかして人はその向こう側に行こうとする。だが障壁から逃げようとするヤツは別の道を探す。大抵は楽な道だ。だけどな、楽な道というのは力のない者の専用道路だ。そうやって楽な方、楽な道を選び続けていくとまともに戦う力をなくしていく。そして、楽だからという理由で嘘を覚える。人を陥れることを覚える。

お言葉ですが、この歳になると、真摯に「障壁を、打ち破るか乗り越える」ようとする努力は、上手くいかない結果に終わる、ことを何となく知っている。
それも、周りの人を巻き込んで、さらなる悲劇を招きかねない。
ぼくは、楽な方法であっても、むしろ、楽な方法で、障壁をなんとなくやり過ごすことの方が幸せになれる気がするのですが。
マジメすぎるのが、悲劇を招いてしまうのです。

  切り裂きジャックの告白...........角川書店 HP

 『 切り裂きジャックの告白/中山七里/角川書店 』

コメント
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