ゆめ未来     

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我が名は切り裂きジャック/永い言い訳/偽りの書簡/

2016年07月30日 | もう一冊読んでみた
 今週は、この3冊。
 我が名は切り裂きジャック(上・下)/永い言い訳/偽りの書簡/

我が名は切り裂きジャック(上・下)/スティーヴン・ハンター  2016.7.30

 「切り裂きジャック」は誰だったのか。
1世紀以上の長きにわたり、興味ある人々の頭を悩ませてきた疑問です。

英国で起こった「切り裂きジャック」の事件は、未解決事件であるだけに、『我が名は切り裂きジャック』は、完全にフィクションなのか、それともある程度史実に即して書かれているのか、ぼくは気になりました。
この小説の「解説」でミステリ評論家三橋暁氏は次のように書いています。

 本作『我が名は切り裂きジャック』においても、描かれる事件の経緯は後世に残されている記録に忠実で、最初の被害者メアリ・アン・ニコルズから、五人日のメアリ・ジェイン・ケリーまで、彼女らの身に降りかかった不運としかいいようのない悲劇が、次々と詳らかにされていく。そこには、犯人の通称となった"リッパー"の語源や、後にプロファイリングとして確立されていく捜査手法への考察なども織り込まれ、さながらジャック・ザ・リッパーをめぐるエンサイクロペディア的な面白さも生んでいる。

全p600程が、1ページ17行×38字べったりと字で埋め尽くされているので、ちょっと見た目には読みにくそうです。
重たい感じがしましたが、ぼくは読みとおしました。
それなりに面白かったです。

 『 我が名は切り裂きジャック(上・下)/スティーヴン・ハンター/公手成幸訳/扶桑社ミステリー 』



永い言い訳/西川美和   2016.7.30

 西川美和作、『永い言い訳』を読みました。
2016年の本屋大賞の候補になって、西川さんを初めて知りました。

 <もう愛していない。ひとかれらも。>

この一言を残して主人公の妻は事故死する。
その後が、主な話なのです。
「ユーモア」と言うには少し雰囲気が違う、「滑稽」な行動をとったり、心に思ったりする衣笠幸夫。
衣笠幸夫は、男性ですが、ぼくには女性の目線、感覚を強く感じてしまいます。

 時間には限りがあるということ、人は後悔する生き物だと言うことを、頭の芯から理解しているはずなのに、最も身近な人間に、誠意を欠いてしまうのは、どういうわけだろう。

 愛すべき日々に愛することを怠ったことの、代償は小さくない。

 他者の無いところに人生なんて存在しないんだって。
 人生は他者だ。


 『 永い言い訳/西川美和/文藝春秋 』

 西川美和さんインタビュー
 映画「永い言い訳」



偽りの書簡/R・リーバス&S・ホフマン  2016.7.30

 『偽りの書簡』は、独裁政権下のスペインの話です。
独裁政権の元では、正義はどのようにして行われるのか、物語のような状況に追い込まれたら、どのように、その苦境から抜け出したらよいのか、考えると空恐ろしくなります。

 知っていることを口に出せないのがこの国では当たり前だわ。でも、それを知っていると言うと都合が悪いからあえて知ろうとせず、目をつむっておくのはただの日和見主義よ

そんな状況下でも、国の歴史や文化の重みをこの作品では感じます。
大切に受け継がれてきた、古書のあじわい。

本を読み、思索した。文学は人間の生の営みの深淵をわれわれに開示する。
強欲、愚かさ、嫉妬、邪悪、野望。すべてがそこにある。しかし本の表紙を閉じさえすれば、自分自身に戻ることができる。


ところで、この「偽りの書簡」とは、どの手紙だったのでしょうか、ぼくは考えてしまいました。
それに、「日和見主義」、この言葉、大学紛争華やかしき時代には、毎日のように口にしたり、聞いたりした言葉ですが、最近はとんとご無沙汰です、ああ、なつかしや。
とってもおもしろい作品で、強く、みなさんにお薦めしたい一冊です。

 『 偽りの書簡/R・リーバス&S・ホフマン/宮崎真紀訳/創元推理文庫 』
コメント
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