今週は、この3冊。
■平成猿蟹合戦図/吉田修一 2015.10.24
吉田修一さんの『平成猿蟹合戦図』を読んでいて思ったことが、ふたつあります。
ひとつは、「姫の虎退治」を連想したこと。
もうひとつは、この作品を勝手に『横道世之介』の後日譚として読んだことです。
人生、「人間関係を築く」ことは、いかに意味あることか、「他人に自然に受け入れられる性格」の大切さを知りました。
AV嬢や風俗嬢がいけないというわけではない。..........
彼女が一念発起して幸せになりそうになった時に、その過去が彼女を食い潰してしまうのだ。最愛の男と最愛の子供に自分の過去を隠し続けて暮らすのは地獄だ。これは何かビジネスを始めて成功したとしても、噂はあっという間に広がる。これまでそんな女たちを何人見てきたことか。
どの党員たちも数十分言葉を交わすと、その態度からこの若造を育ててやるのは自分たちなのかもしれないという熱意のようなものが微かに伝わってくる。
「私、思うんです。人を騙す人間にも、その人間なりの理屈があるんだろうって。だから平気で人を騙せるんだろうって。結局、人を騙せる人間は自分のことを正しいと思える人なんです。逆に騙される方は、自分が本当に正しいのかといつも疑うことができる人間なんです。本来ならそっちの方が人として正しいと思うんです。でも、自分のことを疑う人間を、今の世の中は簡単に見捨てます。すぐに足を掬われるんです。正しいと言い張る者だけが正しいと勘違いしてるんです」
『 平成猿蟹合戦図/吉田修一/朝日新聞出版 』
■パレード/吉田修一 2015.10.24
そして、『パレード』です。
この一冊で、吉田修一さんの作品は一段落とします。
この物語の顛末から考えて、最後の結末は、ぼくには奇異な感じがしました。
これがなければ、心優しい吉田さんの心地よい世界にどっぷりとつかることができたはずなのですが。
「ちょっとぉ、暗闇でコソコソ話すのやめてくれない。余計気になっちゃうのよねぇ」と文句を言われた。
貴和子さんは、「ねぇ、ちょっと考えてみて。先輩の彼女と平気で寝る男と、彼氏の後輩と平気で寝る女の恋愛映画のストーリー」なんてことを、どういうつもりか平気で口にしたりする。もちろんぼくは、ただうろたえるだけで気の利いた返事などできやしない。
あの頃の私はまだ二十歳になったばかりの女子大生で、笑いたいから人に会いたい、楽しみたいから生きていた。善玉の分身も悪玉の分身も、私の周りを飛び跳ねながら、「次、何して遊ぶ? 次は? 次は?」と無邪気に浮かれていたかっただけなのだと思う。
ときどき美咲も、「たった二年間の思い出、一生付き合っていけるなんて、私たちってかなり効率いいわよね」というようなことを言う。
余談ですが、「ビデオテープの爪を折ればいい」という話が出てくるのですが、あと数年もすれば若い人たちには、何のことか意味が分からなくなるかもしれないなあ、と読みながら思いました。
DVDも鑑賞しました...........映画.com
あの日に返りたいとは、思わないが、若いっていいなあ~、すばらしい!
『 パレード/吉田修一/幻冬舎 』
■悲しみのイレーヌ/ピエール・ルメートル 2015.10.24
巻末 解説(杉江松恋氏)より
さて、そんなわけで『悲しみのイレーヌ』のお話である。
本書の発表年は二〇〇六年、『その女アレックス』で主役を務めるカミーユ・ヴェルーヴェン警部の初登場作にして、ルメートル自身の作家デビュー作でもあった。
このような紹介文を目にされて、このミステリーを手にされた方も多かったことと思います。
作中少し古いミステリーが5作品ほど引用されているのですが、これなんて、オールドミステリーファンにはたまらないのではないかと感じました。
ぼくは、『ブラック・ダリア』を読んだ気がしたのですが、ぼくの記録簿には記述がありませんでした。
物語は、凄惨な殺人現場に読者の皆さんを引きづり込みます。
ですが、ぼくにはおもしろかった。
『 悲しみのイレーヌ/ピエール・ルメートル/橘明美訳/文春文庫 』
■平成猿蟹合戦図/吉田修一 2015.10.24
吉田修一さんの『平成猿蟹合戦図』を読んでいて思ったことが、ふたつあります。
ひとつは、「姫の虎退治」を連想したこと。
もうひとつは、この作品を勝手に『横道世之介』の後日譚として読んだことです。
人生、「人間関係を築く」ことは、いかに意味あることか、「他人に自然に受け入れられる性格」の大切さを知りました。
AV嬢や風俗嬢がいけないというわけではない。..........
彼女が一念発起して幸せになりそうになった時に、その過去が彼女を食い潰してしまうのだ。最愛の男と最愛の子供に自分の過去を隠し続けて暮らすのは地獄だ。これは何かビジネスを始めて成功したとしても、噂はあっという間に広がる。これまでそんな女たちを何人見てきたことか。
どの党員たちも数十分言葉を交わすと、その態度からこの若造を育ててやるのは自分たちなのかもしれないという熱意のようなものが微かに伝わってくる。
「私、思うんです。人を騙す人間にも、その人間なりの理屈があるんだろうって。だから平気で人を騙せるんだろうって。結局、人を騙せる人間は自分のことを正しいと思える人なんです。逆に騙される方は、自分が本当に正しいのかといつも疑うことができる人間なんです。本来ならそっちの方が人として正しいと思うんです。でも、自分のことを疑う人間を、今の世の中は簡単に見捨てます。すぐに足を掬われるんです。正しいと言い張る者だけが正しいと勘違いしてるんです」
『 平成猿蟹合戦図/吉田修一/朝日新聞出版 』
■パレード/吉田修一 2015.10.24
そして、『パレード』です。
この一冊で、吉田修一さんの作品は一段落とします。
この物語の顛末から考えて、最後の結末は、ぼくには奇異な感じがしました。
これがなければ、心優しい吉田さんの心地よい世界にどっぷりとつかることができたはずなのですが。
「ちょっとぉ、暗闇でコソコソ話すのやめてくれない。余計気になっちゃうのよねぇ」と文句を言われた。
貴和子さんは、「ねぇ、ちょっと考えてみて。先輩の彼女と平気で寝る男と、彼氏の後輩と平気で寝る女の恋愛映画のストーリー」なんてことを、どういうつもりか平気で口にしたりする。もちろんぼくは、ただうろたえるだけで気の利いた返事などできやしない。
あの頃の私はまだ二十歳になったばかりの女子大生で、笑いたいから人に会いたい、楽しみたいから生きていた。善玉の分身も悪玉の分身も、私の周りを飛び跳ねながら、「次、何して遊ぶ? 次は? 次は?」と無邪気に浮かれていたかっただけなのだと思う。
ときどき美咲も、「たった二年間の思い出、一生付き合っていけるなんて、私たちってかなり効率いいわよね」というようなことを言う。
余談ですが、「ビデオテープの爪を折ればいい」という話が出てくるのですが、あと数年もすれば若い人たちには、何のことか意味が分からなくなるかもしれないなあ、と読みながら思いました。
DVDも鑑賞しました...........映画.com
あの日に返りたいとは、思わないが、若いっていいなあ~、すばらしい!
『 パレード/吉田修一/幻冬舎 』
■悲しみのイレーヌ/ピエール・ルメートル 2015.10.24
巻末 解説(杉江松恋氏)より
さて、そんなわけで『悲しみのイレーヌ』のお話である。
本書の発表年は二〇〇六年、『その女アレックス』で主役を務めるカミーユ・ヴェルーヴェン警部の初登場作にして、ルメートル自身の作家デビュー作でもあった。
このような紹介文を目にされて、このミステリーを手にされた方も多かったことと思います。
作中少し古いミステリーが5作品ほど引用されているのですが、これなんて、オールドミステリーファンにはたまらないのではないかと感じました。
ぼくは、『ブラック・ダリア』を読んだ気がしたのですが、ぼくの記録簿には記述がありませんでした。
物語は、凄惨な殺人現場に読者の皆さんを引きづり込みます。
ですが、ぼくにはおもしろかった。
『 悲しみのイレーヌ/ピエール・ルメートル/橘明美訳/文春文庫 』
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