ゆめ未来     

遊びをせんとや生れけむ....
好きなことを、心から楽しもうよ。
しなやかに、のびやかに毎日を過ごそう。

夜に星を放つ/窪美澄 

2022年11月28日 | もう一冊読んでみた
夜に星を放つ 2022.11.28

窪美澄 『 夜に星を放つ 』 を読みました。
第167回直木賞受賞作です。
最近は、直木賞や芥川賞作品を追いかけて読むことをしていません。
久しぶりに読みました。



 婚活アプリで恋人を探し初めて半年。この人いいかも、と、去年の冬にやっとマッチングして、やりとりを初めて、コロナの自粛期間に入る前に二度ほど食事をした人だった。
 服装も決しておしゃれでないが、こざっぱりしているし、妙に女慣れしていない感じもとてもよかった。身長も誤魔化していないみたいだし、眼鏡もよく似合っていた。ほかの人みたいに、食事のあと、すぐにホテルに行こうとも言わなかったし。


 家に誘うということは、家に行くということは、そういうこと(つまり肉体関係を持ってもいいということ)だと思っていたけれど......

 浮気ばかりして、離婚したらしたで、再就職が。保育園も入れるのが大変だって言うじゃない。

 「ああ、……あれは、アルタイルです。わし座の。アンタレスは南のほうに見える赤い星ですね……蠍座の、ここからだと、よく見えないけれど」
 「わたしは蠍座なの。蠍座は嫉妬深くて執念深いらしいね」


 彼女から向けられる憐れみのの視線。それに混じる好奇の眼差しに耐えられなかった。ほうっておいてほしい。それが僕の本音だった。

 「約束してくれる? どんなにつらくても途中で生きることをあきらめては駄目よ。つらい思いをするのはいつも子どもだけれどね。それでも、生きていれば、きっといいことがある。……私はあなたにこのマンションで出会えて良かった。いつか忘れてしまうかもしれないけれど、なるべくあなたのことは忘れないようにするね」

  『 夜に星を放つ/窪美澄/文藝春秋 』




コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 日経平均、2万8000円を中心... | トップ | パティスリーシーのケーキ »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

もう一冊読んでみた」カテゴリの最新記事