■アックスマンのジャズ 2017.2.20
"はかりごとには魔術もかなわない"って意味だ
ルカは笑みを返した。「覚えておくよ」と応じた。
活気と危険に満ちた街の描写はすばらしい魅力を放ち、読むとわくわくしてくる。
……… 《ガーディアン》
2段組でp470大部なミステリー倦かずに読ませます。
1918年から1919年に実際に起こった未解決の"ニューオリンズのアックスマン事件"に想を得て、当時の恐怖と混迷を深めたニューオリンズの街を生き生きと描いています。
人種差別、黒人、クレオール、ケイジャン、売春産業、第一次世界大戦の帰還兵、息子の戦死、ジャズの興隆、暗躍するマフィア、警察の汚職と政治の腐敗、施設で育つ子供達、ストリートチルドレン。
捜査は、現役刑事・元刑事・探偵の三つルートで行われるので、話は複雑です。
登場人物も多く、エピソードも多彩でぼくのごとく老人の頭には、少々重い。
このミステリーを読んでいて、「俺は、いつまで本を読むことが出来るのだろうか?と真剣に不安になった。」
本が読めなくなったら、人生の楽しみの大事な一本が欠けてしまう。
一度しか出てこない場面などは、読み進むうちに完全に忘れていた、これには悲鳴とため息漏れたですよ、ほんと。
【黒人のおかれた過酷な社会】
ルイジアナ州は黒人が自分たちの文化をおおっぴらに表現することがめったに許されない土地柄なので、葬儀はそれを公然と披露し、踏みにじられている黒人がものものしく扱われる貴重な機会だ。そして、男女を問わず黒人が威厳ある扱いを許されるとき、当の本人が生きてそれを享受することができないという現実が、アイダにしかめ面をさせている。
【貧しい白人のおかれた過酷な社会】
ふたりはもうしばらく店に残り、蓄音機が繰り返し奏でるマリオン・ハリスの歌を聞きながらビールを飲み終えた。この安酒場は客が自分を忘れるために来るような悲しい場所なので、アイダはようやく出ていけることにほっとしながら、教会用の一張羅を着て眠り込み、酔夢に溺れている三人の横を通った。
【南部の美しい自然】
「"おお、ルイジアナ。南部のうるわしき楽園よ。荒廃してなおさほど美しいなれば、栄光の日にはいかにあらん"」老人が言うのを、ルカは横目で見た。老人は笑みを浮かべ、横のテーブルに積まれた本を軽くたたいた。
「ラフカディオ・ハーンだ」説明として言った。
【当時のニューオーリンズの街の雰囲気】
いまのストーリーヴィルは、みだらであると同時に無邪気で陽気で如才なくもあったかつての屈託のない活気と喜びに見放されてしまったようだ。ストーリーヴィルは決して楽園などではない----暴力、死、病気が存在する。そこでの営みには、搾取と、絶対に観光客の目に触れることのない非人道的な側面とが存在している。それでも、マイクルの脳裏に真っ先によみがえるストーリーヴィルは、夜の闇に灯るランタンのような場所----明るく陽気で暖かい場所だ。
"ザ・ディストリクト"は一九一七年に正式に閉鎖され、"売春産業"と呼ばれる商売は存続しているものの、以前と比べるとはるかに地味になった。
【そこで育った食文化】
「このサンドイッチはニューオーリンズでしか食べられないんだ」食通でもないくせに、マイクルは自分の住む街の食文化を誇りに思っている。フランス料理やアフリカ料理、スペイン料理、イタリア料理の影響が何世代にもわたるニューオリンズの料理人たちによって融合された結果、この街にはほかでは観られない料理が豊富にある。
(縦半分に切った長いバゲットから、薄切りにした牛の肩肉と豚肉のベーコン、マヨネーズとディルピクルスとクレオールマスタードのドレッシングをかけたサラダがあふれそうだ。)
【刑事の友情】
ルカは風の強い通りをのんびりと歩み去り、ヘイトナーは寒気にそなえてコートのボタンを留めながら遠ざかる旧友の姿を見送るうち、あのルカ・ダンドレアがああも孤独に見えるのは残念だと思わずにいられなかった。
「施設で育ったんです」
「持ったことがないものを、なくて寂しいと思うことはありませんから」とケリーは答えた。
【捜査を支えた言葉】
「だれしも探している答えをかならず見つける。だからこそ、ボーデの息子もあんなことを
している」
どんな謎でももっとも単純な答えがもっともいい答えだということと、単純さこそが自然物の美しさの源であり、謎は光を当てられていない自然物にほかないということを。
最後に
詫びを言うことに意味はない。
『 アックスマンのジャズ/レイ・セレスティン/北野寿美枝訳/ハヤカワ・ミステリ 』
"はかりごとには魔術もかなわない"って意味だ
ルカは笑みを返した。「覚えておくよ」と応じた。
活気と危険に満ちた街の描写はすばらしい魅力を放ち、読むとわくわくしてくる。
……… 《ガーディアン》
2段組でp470大部なミステリー倦かずに読ませます。
1918年から1919年に実際に起こった未解決の"ニューオリンズのアックスマン事件"に想を得て、当時の恐怖と混迷を深めたニューオリンズの街を生き生きと描いています。
人種差別、黒人、クレオール、ケイジャン、売春産業、第一次世界大戦の帰還兵、息子の戦死、ジャズの興隆、暗躍するマフィア、警察の汚職と政治の腐敗、施設で育つ子供達、ストリートチルドレン。
捜査は、現役刑事・元刑事・探偵の三つルートで行われるので、話は複雑です。
登場人物も多く、エピソードも多彩でぼくのごとく老人の頭には、少々重い。
このミステリーを読んでいて、「俺は、いつまで本を読むことが出来るのだろうか?と真剣に不安になった。」
本が読めなくなったら、人生の楽しみの大事な一本が欠けてしまう。
一度しか出てこない場面などは、読み進むうちに完全に忘れていた、これには悲鳴とため息漏れたですよ、ほんと。
【黒人のおかれた過酷な社会】
ルイジアナ州は黒人が自分たちの文化をおおっぴらに表現することがめったに許されない土地柄なので、葬儀はそれを公然と披露し、踏みにじられている黒人がものものしく扱われる貴重な機会だ。そして、男女を問わず黒人が威厳ある扱いを許されるとき、当の本人が生きてそれを享受することができないという現実が、アイダにしかめ面をさせている。
【貧しい白人のおかれた過酷な社会】
ふたりはもうしばらく店に残り、蓄音機が繰り返し奏でるマリオン・ハリスの歌を聞きながらビールを飲み終えた。この安酒場は客が自分を忘れるために来るような悲しい場所なので、アイダはようやく出ていけることにほっとしながら、教会用の一張羅を着て眠り込み、酔夢に溺れている三人の横を通った。
【南部の美しい自然】
「"おお、ルイジアナ。南部のうるわしき楽園よ。荒廃してなおさほど美しいなれば、栄光の日にはいかにあらん"」老人が言うのを、ルカは横目で見た。老人は笑みを浮かべ、横のテーブルに積まれた本を軽くたたいた。
「ラフカディオ・ハーンだ」説明として言った。
【当時のニューオーリンズの街の雰囲気】
いまのストーリーヴィルは、みだらであると同時に無邪気で陽気で如才なくもあったかつての屈託のない活気と喜びに見放されてしまったようだ。ストーリーヴィルは決して楽園などではない----暴力、死、病気が存在する。そこでの営みには、搾取と、絶対に観光客の目に触れることのない非人道的な側面とが存在している。それでも、マイクルの脳裏に真っ先によみがえるストーリーヴィルは、夜の闇に灯るランタンのような場所----明るく陽気で暖かい場所だ。
"ザ・ディストリクト"は一九一七年に正式に閉鎖され、"売春産業"と呼ばれる商売は存続しているものの、以前と比べるとはるかに地味になった。
【そこで育った食文化】
「このサンドイッチはニューオーリンズでしか食べられないんだ」食通でもないくせに、マイクルは自分の住む街の食文化を誇りに思っている。フランス料理やアフリカ料理、スペイン料理、イタリア料理の影響が何世代にもわたるニューオリンズの料理人たちによって融合された結果、この街にはほかでは観られない料理が豊富にある。
(縦半分に切った長いバゲットから、薄切りにした牛の肩肉と豚肉のベーコン、マヨネーズとディルピクルスとクレオールマスタードのドレッシングをかけたサラダがあふれそうだ。)
【刑事の友情】
ルカは風の強い通りをのんびりと歩み去り、ヘイトナーは寒気にそなえてコートのボタンを留めながら遠ざかる旧友の姿を見送るうち、あのルカ・ダンドレアがああも孤独に見えるのは残念だと思わずにいられなかった。
「施設で育ったんです」
「持ったことがないものを、なくて寂しいと思うことはありませんから」とケリーは答えた。
【捜査を支えた言葉】
「だれしも探している答えをかならず見つける。だからこそ、ボーデの息子もあんなことを
している」
どんな謎でももっとも単純な答えがもっともいい答えだということと、単純さこそが自然物の美しさの源であり、謎は光を当てられていない自然物にほかないということを。
最後に
詫びを言うことに意味はない。
『 アックスマンのジャズ/レイ・セレスティン/北野寿美枝訳/ハヤカワ・ミステリ 』
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