BELOVED

好きな漫画やBL小説の二次小説を書いています。
作者様・出版社様とは一切関係ありません。

海賊と陰陽師 第1話

2024年12月17日 | F&B×火宵の月 クロスオーバーパラレル二次創作小説「海賊と陰陽師~嵐の果て~」
「火宵の月」「FLESH&BLOOD」の二次小説です。

作者様・出版社様とは一切関係ありません。

二次創作・BLが嫌いな方は読まないでください。

―先生・・
波のように、繰り返し己を呼ぶ声。
(火月・・)
土御門有匡が妻の声に気づいて目を静かに開けると、そこは見慣れた鎌倉の邸でも、唐土の紅牙族の村でもなかった。
有匡が居るのは、薄暗く悪臭が漂う奴隷船の中だった。
(ここは、一体・・)
周囲をよく観察しようと有匡が身体を動かしたとき、彼は初めて自分の手足が鎖に繋がれ、それが数珠のように数人の奴隷達とひとまとめにされている事に気づいた。
(火月、火月は何処に!?)
有匡は祭文を唱え、妻・火月を捜した。
彼女は、太った男に凌辱されそうになっていた。
(そうはさせぬ!)
有匡は、火月を救う為、嵐を起こした。
同じ頃、火月は訳が分からぬまま夫と引き離され、太った男に凌辱されそうになっていた。
『大人しくしろ!』
「嫌、放して!」
火月が男の顔を爪で引っ掻いた時、今まで晴れていた空を急に黒雲が覆い、嵐が奴隷船を襲った。
『ギャァァ~!』
『どうした、一体何が起こった!?』
『わ、わかりません!船底に居た奴隷が、急に暴れ出して・・』
『何とかしろ、このままでは船が沈んでしまう!』
「火月、何処に居る!」
「先生!」
火月が太った男を突き飛ばして船室から甲板へと向かうと、そこには両手を広げて立っている有匡の姿があった。
火月は、迷わず夫の胸に飛び込んだ。
『居たぞ、あいつだ!』
『逃がすな!』
「火月、わたしから離れるな。」
「はい・・」
有匡は火月を抱き締めると、嵐の海の中へとその身を躍らせた。
『正気じゃないぞ、あいつら!』
『如何いたしましょう、ラウル様?』
『放っておけ。あの美しい奴隷達を喪ったのは大きな痛手だけれど、すぐに会える気がするよ。』
ラウル=デ=トレドは、そう言った二人が消えた水面を見つめた。
(この借りは、必ず倍にして返してやる。)
「火月、大丈夫か?」
「はい・・」
有匡の呪力で二人共凍死せずに済んでいるが、それもいつまでもつかわからない。
「大丈夫だ、お前はわたしが守るから・・」
有匡は、そう言って火月を抱き締めると、意識を失った。
「ジェフリー、嵐が治まって来たよ。」
「あぁ、そうだな。」
グローリア号船長、ジェフリー=ロックフォードとその恋人の東郷海斗は、嵐が去った後の海を眺めていた。
「それにしても、さっきの嵐、なんだったんだろう?まるで、誰かが魔法で嵐を起こしたみたいに、急に起きて・・」
「そんな魔法使いみたいな奴が、お前の国には居るのか?」
「う~ん、わからないけど、昔俺の国にもオンミョウジっていう魔法使いが居て、アベノセイメイっていう人が有名だよ。」
「へぇ、そんな奴が居たのか。お前の国は興味深いな。一度行ってみたいものだ。」
「そう?」
二人がそんな事を話していると、檣楼の上に居たユアンの声が聞こえた。
「キャプテン、死体が浮いています!」
「ユアン、本当か!」
「へぇ。ん・・待てよ、ありゃ死体じゃありやせん、生きてまさぁ!」
「何だって!?」
ジェフリーが檣楼から下りて来たユアンから望遠鏡を受け取り水面の方を見ると、そこには黒髪の男と金髪の女が浮かんでいた。
「どうした、ジェフリー?」
「ナイジェル、遭難者だ!ボートを!」
「わかった。」
ジェフリー達はボートを出し、遭難者の男女を救助した。
「おい、しっかりしろ!」
「ジェフリー、毛布を持って来て!二人共長時間海水に浸かっていたから、停滞温床になっているかもしれない!」
(火月、無事なのか?)
有匡がそう思いながらゆっくりと目を開けると、そこには見知らぬ男達の姿があった。
「先生、良かった!」
「火月・・無事だったか。」
火月が無事である事を知り、有匡は安堵の表情を浮かべた。
「良かった、二人共無事で。」
そう言って二人の前に現れたのは、赤毛の少年だった。
「お前は、誰だ?」
「俺は東郷海斗。あなた達は?」
「わたしは土御門有匡。わたしの隣に居るのは、妻の火月だ。ここは、何処だ?」
「ここは、グローリア号。あなた達、低体温症になりかけていたんだよ。」

赤毛の少年―海斗がそう言った時、船室に金髪の男と、眼帯をした黒褐色の髪をした男が入って来た。

『漸くお目覚めかい、お二人さん?』

有匡は、金髪の男とは気が合わないと感じた。
それは金髪の男も同じようだったようで、彼は有匡に向かってこう言った。

『色男がこれ以上居たら、船の風紀が乱れるな。』

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