中国語学習者のブログ

これって中国語でどう言うの?様々な中国語表現を紹介します。読者の皆さんと一緒に勉強しましょう。

【対訳】《雲郷話食》を読む: 元宵と湯圓

2011年02月14日 | 中国グルメ(美食)



  旧暦の正月15日は元宵節といいます。元宵節に食べるのが、元宵、湯圓、湯団と呼ばれる米粉で作っただんごです。実はこれ、北京を中心とする北方のもの(元宵と言います)と江南地方のもの(湯圓、湯団と言います)とで作り方や中の餡に大きな違いがあります。

■ 元宵,是北京的叫法,江南叫湯圓。近人徐仲可(珂)《清稗類鈔》云:

     湯圓一曰湯団,北人謂之元宵,以上元之夕必食之也。然実常年有之,
   屑米為粉以制之,粉入水,沉淀之使滑而制成者,為挂粉湯圓。有甜咸各餡者,
   曰実心湯圓。

 “元宵”とは北京の呼び方で、江南では“湯圓”と呼ぶ。近世の人、徐仲可(徐珂)は《清稗類鈔》でこう言っている。

      湯圓は別名、湯団と言い、北方の人は元宵と言う。元旦の夕食に必ず食べないと
   いけないものである。しかし実際は一年中有り、くず米を粉にしてこれを作る。粉を水に入れ、
   沈殿してつるつるしたもので作ったものを、挂粉湯圓と言う。甘い、或いは塩辛い餡の入った
   ものは、実心湯圓と言う。

* ここでは“実心湯圓”は餡の入った湯圓のことで使っているが、一般には、“実心”とは中が詰まったという意味で、“這個湯圓是実心的”というと、だんごの中は餅が詰まっていて餡が入っていない、という正反対の意味になる。

■ 不過厳格地説,元宵和湯圓雖属類似的東西,但做法有很大的差別。北京元宵,都是干磨江米面,不用糯米水磨粉,即徐珂所説的挂粉。北京元宵絶対不做肉餡,而江南湯圓却以肉為主。二者不能劃等号。過去有個很有趣的故事:一位初到北京的江南挙子,正月里到親戚家作客,人家煮了元宵交待他,這位挙子夾起一個,端詳半天才入口,主人感到奇怪,便忍不住問道:“你覚得有什麼不合适?”這位挙子道:“味道很好,只是我想問問這餡心是怎麼擺進去的?”一句話引得衆人哄然大笑,従此便伝為笑談。

・江米 jiang1mi3 / 糯米 nuo4mi3 何れも、もち米のこと。一般に、北方の人は“江米”といい、南方の人は“糯米”という。
・水磨 shui3mo2 水を加えて磨くこと。“水磨 shui3mo4”とすると、水車を利用した臼のことだが、ここでは“干磨”、水を加えず、そのまま臼や機械で挽いた粉との対比なので、“水磨 shui3mo2”である。
・挙子 ju3zi3 “挙人”のこと。郷試に合格した者のことを“挙人”と言う。“挙人”になってはじめて、都で行われる会試を受験することができた。
・哄然 hong1ran2 どっと
・笑談xiao4tan2 笑いぐさ/伝為笑談 chuan2wei2~ お笑いぐさになる

 しかし厳密に言うと、元宵と湯圓はよく似たものだが、作り方には大きな違いがある。北京の元宵は、もち米をそのまま粉に挽いたものを用い、もち米に水を加えて挽いた粉、すなわち徐珂が言うところの挂粉は用いない。北京の元宵は絶対に肉餡は入れないが、江南の湯圓は肉が主である。両者にはイコールはつけられない。昔、面白い話があった。一人のはじめて北京に来た江南の挙人が、正月に親戚の家に招かれた時、その家では元宵を煮てもてなしたが、この挙人はそれをひとつ箸でつまんで、手に持ってしばらくの間仔細に眺めてからようやく口に入れた。主人は不思議に思い、我慢できずに問うた。「何か不具合でもありましたか?」この挙人は言った。「味はたいへんよろしいですが、ただ伺いたいのは、この餡はどうやって中に入れたのですか?」この一言が皆をどっと笑わせ、これ以降、笑い話となった。

■ 江南用糯米水粉包湯圓,是把一小団湿糯米面放在手中,掐成酒杯形,然后放入餡子包起。肉的掐一個尖尖頭,萕菜的掐成橢圓形,中間作個皺紋記号,芝麻的掐成圓的,上面有些花紋 …… 総之都有封口的地方,在碗中可以分辨甜咸和不同的餡子。而北京的元宵,則渾然一体,混沌難分,対不明究竟的人,確是饒有興味,也就難怪那个挙子的惹人招笑了。

・団 tuan2 [量詞]ひと塊りになっているものを数える
・掐 qia1 指先で摘んだり、ひねったりすること。
・萕菜ji4cai4 ナズナ
・橢圓 tuo3yuan2 楕円
・渾然 hun1ran2 渾然。入り混じっている様
・饒 rao2 [接続詞][口語]にもかかわらず。~のに。

 江南では、水で研いだもち米粉で湯圓を作るには、湿ったもち米粉の小さな塊りを手のひらに載せ、酒杯の形に捏ねて、その中に餡を入れて包み込む。肉の餡入りは頭を尖らせ、ナズナの餡入りは楕円形にし、真中に皺をつけて目印にする。胡麻餡のものはまん丸にして、上に模様を付ける……何れにせよ、どれも口を閉じた所により、碗の中で甘いのや塩辛いのや、違った餡の区別をすることができる。一方、北京の元宵は渾然一体で、混沌として区別が難しく、どうなっているか知らない人にとっては、確かに興味を持っているにもかかわらず、あの挙人のように他人の嘲笑を惹き起すのも無理もないことである。

■ 按北京做元宵,俗語曰打。実際是滚gun3和揺両個動作。先把糖熬稀,加玫瑰、山楂、核桃仁、芝麻、瓜子仁、青紅絲等和在一起,或団成龍眼大的小団,或切成小方塊,冷却待用。用大柳条笸po3籮luo,放上干糯米面,北京叫江米面,把糖塊様的餡子倒入面中,一辺洒水,一辺滚gun3,使糯米面在糖塊身上滚gun3満,像滚gun3雪球一様,越滚gun3越大,這是件很吃力的工作,一次可滚gun3百八十個。然后再按不同的餡子,在上面点上鮮紅的点,或一点,或両点,像宝塔一様,堆在大瓦盤中,犹如白雪紅梅,真是漂亮極了。北京人吃元宵,一般是買回家煮了吃,有時也到舗子里吃,廟会上最多,一入冬就有的売了。而且還可油炸了吃,不過我不大愛吃油炸的。再有北京元宵家中做不来,都是外買的,不比江南湯団主要是自己家里做。元宵餡子好,山楂、玫瑰都有核桃仁、松仁等,像月餅餡子,吃起来比江南湯団好多了。北京売元宵,除去点心舗、廟会上而外,還有挑担子到胡同中売的。

 《一歳貨声》挂花元宵下注云:

     挑担前設鍋炉,山楂、白糖、奶油,加果各餡。

・稀 xi1 “密”の反対の意味で、すきまや間隔の大きいこと。ここでは、煮詰らないように、ざっと。
・玫瑰 mei2gui マイカイ。(バラの仲間で、ハマナシ(ハマナス)の近縁種)
・笸籮 po3luo (ヤナギの枝、または竹の皮で編んだ)ざる
・宝塔 bao3ta3 ここでは“宝塔糖”の意味で、虫下しの薬のことのようです。これは形がちょうど百万塔陀羅尼のような円錐形をした小さな粒です。
・做不来 “不来”は結果補語で、動詞の後に付け、経験や修練が足りないため、行うことができないことを表す。

 北京では元宵を作ることを、俗に“打”と言う。実際は“滚”gun3(転がす)、“揺”(揺さぶる)という二つの動作である。先ず砂糖をざっと煮て、マイカイ、サンザシ、くるみ、ゴマ、かぼちゃの種、青梅や赤い梅を細く切ったもの加えて混ぜ合わせ、龍眼くらいの大きさの団子に丸めるか、小さな四角い塊りに切り揃え、冷ましておく。柳の枝で編んだ大ざるに、挽いたもち米の粉を入れる。これを北京では“江米面”(“江米”の粉)と呼ぶ。先ほどの砂糖の塊りのような餡の粒をもち米粉の中に入れ、水を撒きながら転がし、もち米粉が砂糖の塊りの全体に付くように十分に転がしてやると、雪の球を雪の上で転がすのと同様、転がすにつれて球は大きくなる。これはたいへん力の要る作業で、一回に百八十個ほどの粒を転がしてやることができる。その後、餡の違いによって、球の上に真っ赤な点を一つか二つ付けてやると、“宝塔糖”のようで、大きな素焼の盆で盛ってやると、まるで真っ白な雪景色の中に紅梅が咲いたようで、本当にきれいである。北京の人は元宵を食べるには、一般には買ってきて家で煮て食べる。時には店で食べることもあるが、その時は寺の縁日で食べるのが最も多く、冬になると売り出す。また、油で揚げて食べることもあるが、私は揚げたものはあまり好きではない。北京では元宵は手間がかかるので家では作ることができず、外で買ってくるもので、江南の湯団が主に自分で家で作るのと大きな違いがある。元宵の餡は美味しく、サンザシやマイカイのものにはくるみや松の実が入っていて、月餅の餡のようで、食べてみると、江南の湯団よりずっと美味しい。北京で元宵を売るのは、お菓子屋や寺の縁日の他、天秤棒を担いだもの売りが胡同の中まで売りに来る。

 昔のもの売りの様子をまとめた《一歳貨声》の挂花元宵の項の注釈に言う:

     天秤棒の前には鍋とコンロが設えてあり、サンザシ、白砂糖、クリーム、それに干した果物入りの各種の餡があった。

■ 不過几十年前這種元宵担子已很少見了。那時点心舗中,以前門大街正明斎的元宵為最好。

  “現掲鍋的元宵的来 ―― 個大餡好的哎 ――”
 這熟悉的叫売声似乎又在我的耳畔回響了!

・耳畔 er2pan4 =耳旁

 しかし数十年前のこうした元宵売りももうほとんど見かけなくなった。当時は菓子屋では、前門大街の正明斎の元宵が最も良かった。

   「さあ茹でたての元宵が来たよ ―― 大きな美味しい餡入りだよ ――」
  こうしたよく耳にした呼び声は今も私の耳の傍で響き渡るかのようである。


【出典】雲郷《雲郷話食》河北教育出版社 2004年11月


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