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なぜANAホテルは「桜を見る会」問題で最高権力に忖度しないのか

2020年02月21日 14時08分37秒 | お金のこと
なぜANAホテルは「桜を見る会」問題で最高権力に忖度しないのか


● ANAホテルの「回答」に賞賛 しかし企業としては得なのか?

 「桜を見る会」前日の夕食会問題をめぐって、ANAインターコンチネンタルホテル東京が首相答弁と食い違う説明をしたことが、話題になっています。

 同ホテルにおいて、安倍首相関連の後援会が主催した夕食会の記載が政治資金収支報告書にない理由について、首相は参加者から会費を事務所の職員が集金し、その場でホテル側に渡したので収支は発生しておらず、記載の義務はないと説明。

 また、ホテル側が参加者へ宛名のない領収書を発行し、ホテル側からの明細書の提示もなかったと答弁しました。

 しかしホテル側は「代金を参加者個人から会費形式で受け取ることはない」「宛名のない領収書を発行することはない」「会合の主催者に対して見積書や請求明細書を発行しないこともない」と、真っ当な説明で首相の答弁を否定しました。

  政治に忖度しないANAホテルの態度には巷の賞賛が集まっていますが、ここでシンプルな疑問がわいてきます。こうした対応は企業として得なのか、それとも損なのでしょうか。 
 ANAホテルの現経営陣の立場で考えれば、この行動は明らかに損です。実際、自民党幹部がメディアに「もうANAホテルは使えない」と発言したことが報道されています。一流ホテルの大口顧客である自民党の代議士を励ます会や、行政の息のかかった各種団体のイベントは、ほとぼりが冷めるまで「忖度」でANAホテルの利用を控えるでしょうから、ホテルの営業部門は大変だと思います。

● 損な行動をとった理由は 「外資系」だから?

 では、なぜ損なことをするのでしょうか。理由は、ホテルの正式名称を見ればわかります。ANAインターコンチネンタルホテル東京というその名の通り、かつての全日空ホテルズは、現在ではインターコンチネンタルホテルズグループが74%の資本を持つイギリス系企業だからです。

 全く同じメカニズムで起きた、別のニュースを紹介しましょう。デルタ航空は2月6日にホノルルから名古屋に運行したデルタ611便の乗客2名に、新型コロナウイルスの陽性反応が出たことを公表しています。すでに乗客には連絡をとり、安全対策を講じているという話です。定期便の機内でウイルス感染者が出たことを、便名も含めて詳細に情報開示する。これは日本企業がなかなかやらない行動です。

 逆の事例を紹介します。「桜を見る会」に関連してはホテルニューオータニでも宴会をめぐる問題が起きていますが、明細書については「主催者の要請がなければ国会には出せない」と、暗に首相を守る立場をとっています。またJR東海では、首都圏のコロナウイルスの感染者が2月10日と2月15日にそれぞれ新幹線で名古屋方面に向かったことが判明していますが、座席や便名どころか時間帯すら公表していません。

  理由は、忖度したほうが自社の利益上、有利だからです。ホテル経営では宴会場需要は生命線ですし、JRにとってもリニア新幹線建設が最重要課題です。政府の機嫌を損ねていいことなどありません。
● 嘘をつかないことのほうが 目先の利益よりもずっと大事

 それに対して、ANAホテルやデルタ航空といった欧米系の外資系企業の社員は、法律や社内ルールを守らないと、逆に処罰されてしまいます。

 私も外資系企業に勤めていたことや、多くの外資系企業を顧客にしていたことがあるのでわかりますが、外資系企業の社員にとって、グローバルなルールは現地の社会ルールよりも上位に位置します。グローバルブランドを守るほうが、目先の業績よりも重要だからです。

 具体的には、彼らがグローバルで共有する「嘘をつかない」という企業理念を堅持するほうが、グローバル業績の数%程度を占めるに過ぎない日本事業の業績が2~3年低迷する状況を回避するよりも、はるかに重要だと考えるのです。

 同様の判断で、今世紀に入り最もインパクトが大きかった事例が、グーグルの中国からの撤退でしょう。同社は中国政府による検閲を拒否するために、中国という巨大なビジネスチャンスを棒に振りました。それでも政府の検閲に協力しないという理念を優先するほうが、グローバルで見れば長期的な信頼につながると、彼らのような外資系企業は考えるわけです。

 ただ、ワリを食うのは現地の幹部です。ANAホテルでいえば、グローバルなルールに従うことで一国の首相に恥をかかせざるを得ない。そのせいで業績が下がれば、自分の責任になる。まさに板挟みです。日本企業のサラリーマンよりも外資系企業のサラリーマンのほうが、実は悲哀は大きいのです。

  では、忖度によって日本企業は得をしているのかというと、必ずしもそうとはいえません。日本企業の多くが長期の信頼よりも短期の嘘を選ぶメカニズムを持つことに、消費者は何となく気づいているからです。 

 「本当は何か体に悪いものが入っているだろうな」と思いながら食品を口にし、「本当は設計ミスがあるんじゃないか」と勘繰りながら商品を購入する。ないしは「本当は騙されているんじゃないか」と不安なので金融商品は買わない――。よく聞く話です。

● 「無能」を理由にして逃げる 日本組織のガラパゴスルール

 この現象の一番根っこの部分にあるのは、日本企業のガラパゴスルールとして、何かを隠蔽する際に「無能を理由にする」というやり方が、日本だけで許されていることだと思います。

 たとえば、有能な社員がコロナウイルスの感染者の情報を集めようとすれば、あらゆる関係者に聞き取りをしながら、かなりの情報を集めることができます。一方で、無能な社員であれば「個人情報の壁があって情報が入手できません」「厚生労働省に問い合わせたのですが、関係者が多忙でつかまりません」などと、いくらでも情報が集まらない理由をつくることができます。

 外資系企業だと無能な社員は切り捨てられるが、日本企業では無能に振る舞っても切られない。場合によっては、後で「ご褒美」の昇進が待っていることすらあります。

  日本国内の政治問題も、コロナウイルス騒動も、海外メディアのニュースを読むほうが、客観的な情報を手に入れられるようになってきました。メディアも含め、社員が権力者に忖度しないように振る舞わざるを得ない外資系企業という存在は、2020年代の日本社会や日本経済の良心として参考にできるのではないか――。そんなことを感じさせられる一件でした。






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首相補佐官とスイートルーム外遊」それでも厚労省女性幹部が更迭されない理由 >無敵の「医系技官」

2020年02月21日 13時23分45秒 | 政治のこと

首相補佐官とスイートルーム外遊」それでも厚労省女性幹部が更迭されない理由

>医師免許があれば役所を敵に回しても食べていくには困らない。そうした背景が、あの厚労省での記者会見や衆院予算委員会での「やけに堂々とした答弁」にはあるのではないだろうか

安倍首相補佐官 海外出張でも公私混同の疑い 厚労省女性幹部とコネクティングルーム宿泊」。『週刊文春』にそう報じられた「厚労省女性幹部」は、2月6日、新型コロナウイルスに関する記者会見に堂々と出てきた。なぜ更迭されないのか。麻酔科医の筒井冨美氏が考察する――。

【写真】参院予算委員会で山中伸弥教授の京都大iPS細胞研究所の事業予算関連の質問を聞く厚生労働省の大坪寛子官房審議官

■「公費で京都不倫出張」疑惑の厚生女性官僚がのこのこ出てくるワケ

 新型コロナウイルスによる肺炎のニュースが日々、報道されている。

 感染者が増える中、厚生労働省は連日会見を開いている。2月6日は「ダイヤモンド・プリンセス号における集団感染」に関する会見があったが、そのニュース映像を見て、筆者は「まさか」と驚いた。

 厚労省を代表して会見に登場した女性官僚は、『週刊文春』(2019年12月19日号)で「公費による京都不倫出張」という疑惑を報じられた、大坪寛子厚労大臣官房審議官(52)だったからだ。

 2011年に「部下との路チュー写真」を報じられて辞職した原子力保安院の審議官、2018年に「女性記者へ『胸さわっていい』発言」を報じられて辞職した財務省の事務次官など、高級官僚の世界は異性とのスキャンダルには厳しい。

 にもかかわらず、現在も要職にあり、記者会見にも出られるのはなぜか。そのひとつは彼女が「医系技官」という「医師免許をもった官僚」であるからだろう。

 『週刊文春』は2020年2月13日号でも「安倍首相補佐官<和泉洋人>美人官僚と税金でスイートルーム外遊」との見出しで、和泉補佐官が昨年9月に大坪審議官と海外出張した際、ホテルの部屋割りをめぐって外務省に異例の要望を出し、2人の部屋がつながっているスイートルームに宿泊するなど公私混同の疑いがあることなどを報じている。大坪審議官はこの疑惑について衆院予算委員会で「和泉補佐官が体調を崩したから」と衆人環視の中で臆面もなく回答した。

  今回は、この医系技官というシステムについて解説してみたい。

■「東大法卒」だけではないキャリア組官僚の世界

 キャリア組官僚と言えば、なんといっても「東大法学部卒」である。「国家公務員試験合格→中央官庁→課長・局長・次官と出世レース」というイメージが強い。しかし国家公務員総合職(旧:一種)試験では、「法律」「経済」のような人文系のほかに、「工学」「物理」「化学」「自然環境」のような理系分野も募集されている。

 おおまかに言えば、人文系は事務官として広い知識が要求され、理系は技官として専門分野の深い知識が要求される。そして医系技官とは、「医師免許を持った国家公務員総合職」であり、国家公務員試験なしで厚労省キャリア組としての就職試験を受けることができる。

■医系技官とは「医師」と「官僚」の最強ハイブリッドである

 医系技官の採用は厚労省が窓口となっており、その数は現在約280人。厚労省本省や地方厚生局、検疫所などの付属機関で働くケースが多い。内閣官房や環境省、文科省などに出向するポストもあり、国立病院やオリンピック組織委員会、さらには国連、世界保健機構といった国際的分野で活躍するコースもある。

 もちろん厚労省には法学部卒の事務官も勤務している。記憶に新しいのは、2017年6月、秘書を「このハゲー! 」と罵倒するパワハラ音声を『週刊新潮』に報じられた豊田真由子元衆院議員だ。豊田氏は、「東大法学部卒→厚労省入省→ハーバード大院留学」という経歴で、キャリア組官僚として典型的なキャリアパスだった。

 かつて医系技官は、「出世しても局長レベルまで、官僚トップの事務次官には事務官でないとなれない」と言われてきたが、2017年には次官級の医系技官ポストとして「医務技監」が新設されている。

 しかしながら、「医師として成功」「官僚としての出世」を両立することは困難だ。

 初代医務技監の鈴木康裕氏や、新潟県副知事を務めた北島智子氏など「厚労省内の出世コース」を歩むには、医学部卒業後に医師キャリアを重ねるよりも「卒業してすぐ中央官庁に入り、官僚として多様な部署を経験」する「生え抜き組」が有利である(図表参照)。

 一方で「感染症対策」「国際貢献」など、医師キャリアを積んだ後に担当したい職務を明確にして入省する「中途採用」パターンもあるが、こちらは出世も限定的であり、数年間の医系技官経験の後には病院や研究機関などに再度転職するケースが多い。

  『週刊文春』2020年2月13日号が報じた「コネクティングルーム疑惑」で、一部のメディアでは大坪氏を「異例の出世」と報道している。確かに、彼女は16年間の医師キャリアを経てからの中途入省にもかかわらず、2015年に内閣官房に出向した直後に審議官という主要ポストに抜擢されている。

■「医系技官」は最近のドラマや映画にしばしば登場する“花形”

 最近、医療ドラマが数多く制作されているが、この「医系技官」が登場するドラマはあまりない。

 海堂尊の長編小説『チーム・バチスタの栄光』に登場する白鳥圭輔は「厚生労働省・大臣官房秘書課付技官兼医療過誤死関連中立的第三者機関設置推進準備室室長」という肩書で大学病院に多発する医療事故を解決する。映像化もされていて、映画(2008年公開)では阿部寛が、またテレビドラマ(2009年放映)では仲村トオルがこの役を演じている。筆者が見たところ、おそらく白鳥圭輔がドラマに初登場した医系技官だ。

 また、映画『シン・ゴジラ』(2016年公開)に登場する厚生労働省医政局研究開発振興課長の森文哉(演・津田寛治)は、ストーリー中で医系技官と明示された初めてのドラマではないだろうか。彼のセリフ内に「遺伝子情報の解析」「血液凝固剤」などがたびたび登場し、「医師免許を持っている」ことを匂わせている。

■「医系技官」がアンチ厚労省に走りやすいワケ

 図表に、歴代の医系技官の著名人をまとめた。特徴的なのは、在職中に「アンチ厚労省」の本を出版したり、退職後にテレビのニュースバラエティ番組などで厚労省批判のコメンテーターとなったりする人材が目立つことだろう。

 国交省や農水省などにも「土木」や「森林」などの分野で技官が採用されているが、退職後に元職場の批判活動をするようなケースはほとんどない。

 理由は簡単だ。

 「官僚は、辞めればタダの人」だからだ。キャリア組官僚の生涯収入は、現役中よりも退職後の再就職先に依存する部分が大きいと言われる。そして再就職先を確保するためには出身省庁ともめないことが必須となる。女性スキャンダルが報道された原子力保安院の審議官や財務省の事務次官が役所と争うことなく辞めたのも、「再就職先の確保」という生命線を握られているからであろう。

 では、医系技官はどうか。こちらは「官僚を辞めても医師」であり続ける。

  大坪審議官はもともと「私立医大(東京慈恵会医科大学)の学費約3000万円」を出せる富裕層の家庭の出身者であり、医師免許があれば役所を敵に回しても食べていくには困らない。そうした背景が、あの厚労省での記者会見や衆院予算委員会での「やけに堂々とした答弁」にはあるのではないだろうか。自分もそうだが、医師免許を持った女が開き直るととても怖いのである。


■大多数の医系技官はマジメな公務員

 とはいえ、大多数の医系技官はアンチ本など書かない真面目な公務員である。

 医師免許を持っていれば、もっと楽に稼ぐことが可能なのに、「国際貢献」「医療IT化」などの社会貢献を目指して入職した若者も多い。国会待機やコピー取りなど不毛な雑用も多い。薄給・長時間労働・多い転勤・古い官舎……。

 そうした中、「京都アーン不倫」「コネクティングルーム不倫」の疑いをもたれた大坪審議官の存在によって、新型コロナ対策を含む、医療の最前線で働く医系技官に対する世間の目がいっそう厳しくなってしまわないか心配である。



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筒井 冨美(つつい・ふみ)
フリーランス麻酔科医、医学博士
地方の非医師家庭に生まれ、国立大学を卒業。米国留学、医大講師を経て、2007年より「特定の職場を持たないフリーランス医師」に転身。本業の傍ら、12年から「ドクターX~外科医・大門未知子~」など医療ドラマの制作協力や執筆活動も行う。近著に「フリーランス女医が教える「名医」と「迷医」の見分け方」(宝島社)、「フリーランス女医は見た 医者の稼ぎ方」(光文社新書)


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【クルーズ船】80代日本人感染者2名が死亡 下船した乗客が再検査や隔離を要請するも政府が拒否!アベ政権がウイルスの脅威を拡散!

2020年02月21日 11時26分55秒 | 医療のこと
【クルーズ船】80代日本人感染者2名が死亡 下船した乗客が再検査や隔離を要請するも政府が拒否!アベ政権がウイルスの脅威を拡散!

・2020年2月20日、クルーズ船内で新型コロナウイルスに感染した80代の男女2人が死亡したことが報じられた。

・また、陰性と判断されて下船した乗客も、検査から10日以上が経過しており、その後も船内にとどまったことで感染している恐れがあるにもかかわらず、乗客からの隔離や再検査の要請を政府側が拒否。

すでに安倍政権のずさん対応による死者が発生している上に、さらなる感染拡大のリスクが大きく増幅する事態になっている。

以降ソースにて



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新型肺炎で日本のメディアがほとんど報じていない検査体制の真実

2020年02月21日 10時48分19秒 | 医療のこと
新型肺炎で日本のメディアがほとんど報じていない検査体制の真実

すべてが後手後手に回り、海外からの強い批判の声も聞こえ始めた日本政府の新型肺炎への対応。安倍政権は、なぜ今回の「危機管理」でこのような失態を晒してしまったのでしょうか。元全国紙社会部記者の新 恭さんは自身のメルマガ『国家権力&メディア一刀両断』でその原因を検証するとともに、日本のマスコミがほとんど報じていない「事実」を紹介しています。


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【新型肺炎】ダイヤモンド・プリンセスの「勇敢な船長」に賞賛:隔離下でイタリア語なまりの英語ジョークで乗客を励まし続ける

2020年02月21日 08時07分37秒 | 感染症のこと 新型コロナウイルス
【新型肺炎】ダイヤモンド・プリンセスの「勇敢な船長」に賞賛:隔離下でイタリア語なまりの英語ジョークで乗客を励まし続ける・ダイヤモンド・プリンセスの「勇敢な船長」に賞賛、隔離下で乗客励まし続ける

>ダイヤモンド・プリンセス(Diamond Princess)」のジェナーロ・アルマ(Gennaro Arma)船長




【AFP=時事】軽快なイタリア語なまりの英語で、気の利いたジョークを織り交ぜつつ重要な健康情報を連日伝え、新型コロナウイルスの集団感染に不安を募らせる乗客たちを落ち着かせてきたクルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス(Diamond Princess)」のジェナーロ・アルマ(Gennaro Arma)船長に、称賛の声が上がっている。

 運営会社プリンセス・クルーズ(Princess Cruises)によると、イタリア・ソレント(Sorrento)半島出身のアルマ船長は、1998年に入社。研修生からスタートし、2018年にダイヤモンド・プリンセスの船長に就任した。

 しかし、その出世の先で、ダイヤモンド・プリンセスが14日間にわたる過酷な隔離下に置かれ、600人を超える乗客乗員に新型コロナウイルスへの感染が見つかって、船長の資質を試されることになるとは思いも寄らなかっただろう。

 毎日のように新たな感染者が出る中、アルマ船長は船内に一日中閉じ込められた乗客ら2600人に向け、頻繁にメッセージを送った。窓のない小さな客室から出られずにいる乗客もいる中で、情報を提供し続け、励ましの言葉を掛けた。

「ダイヤモンドというのは、高いプレッシャー(圧力)の下で非常にうまくいった炭素の塊です」。アルマ船長は乗客にこう語り掛け、ソーシャルメディア上にハッシュタグ「#hangintherediamondprincess(ダイヤモンド・プリンセス頑張れ)」と一緒に投稿された応援メッセージを読むよう勧めた。

「ここに残る人々が家族のように団結できると確信しています。一緒にこの旅を成功させましょう。世界が私たちに注目しています」

 バレンタインデーには、乗客にチョコレートを贈り、「(愛は)すべてを忍び、すべてを信じ、すべてを望み、すべてに耐える」との聖書の一節を添えた。
■「恐れを知らない司令官」 白髪はちょっと増えた

 神経の擦り減る過酷な隔離生活が続くうちに、乗客たちはアルマ船長の落ち着いたアナウンスに信頼を寄せていった。「乗客の間でパニックが起きていない理由の一つは、船長のリーダーシップだ」と、乗客の一人はツイッター(Twitter)に投稿した。

「定期的に情報を提供し、検疫官に相談して乗客のリクエストに応え、デッキを歩き、医薬品の配布の遅れを謝罪する…こんな人に、私たちの国の指導者になってほしい」

 また、米ニューヨークのハドソン川(Hudson River)に旅客機を不時着水させ、乗客全員の命を救った「ハドソン川の奇跡」のチェズレイ・サレンバーガー(Chesley Sullenberger)機長(当時)を思い出したと投稿した乗客もいた。

 乗客からは「恐れを知らない司令官」への応援メッセージが殺到し、アルマ船長はよく感謝を口にしていた。「私を心配してくれる皆さん、あなた方の優しさにとても心を動かされました。ご安心ください、私は元気そのものです。12日前とそっくりそのまま同じ船長です。ただ、白髪はちょっと増えましたが」

 アルマ船長のメッセージにはしばしばイタリア語のフレーズが登場した。食事の際に「ボナペティート(召し上がれ)」と言ったり、下船する乗客に「アリベデルチ(さようなら)」と声を掛けたり、といった具合だ。一方で、恥ずかしそうにイタリア語なまりの英語を謝罪することもあった。
>>2



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