本誌は、医師専用のコミュニティーサイトを運営するメドピア社の協力で、1200人を超える医師に緊急アンケートを実施。アンケートでは、政府と現場の危機感の温度差が大きいことがわかった。「政府にどんな対策を期待するか」「新型コロナウイルス感染症全般について」の問いに、「緊急事態宣言」「ロックダウン」「医療崩壊」といった言葉などで危機感を表した回答が計300超あった。
【医師1200人に緊急調査】医療現場で起きている危機、予防策、アドバイスなど…アンケートの結果はこちら
今回のアンケートは、政府が東京や大阪、福岡など7都府県に対して最初に緊急事態宣言を出した4月7日以前に実施したが、すでに多くの医師が「すぐに出すべきだ」との考えを示していたわけだ。
また、ロックダウン(都市封鎖)し、自粛要請ではなく、法改正などで外出を規制するのが望ましいと考える医師も多く、「手遅れになる前に、早急にロックダウンを」(群馬・40代・一般内科)、「厳しくロックダウンを維持する」(福岡・40代・その他)といった回答があった。E医師ももう少し厳しい制約を設ける必要があると考えている。
「国の動きは遅いし、要請はゆるい。もっと強く外出制限をするべきで、海外のように罰則を設けないと」
大阪の3次救急を担う四つの医療機関が救急診療を休止するなど後がないなか、医療崩壊を防ぐための対策として考えられている、軽症者や無症候性感染者は隔離し、重症者を医療機関で診るべきと訴える回答も、全体の1割にあたる約130件あった。「軽症者を受け入れる宿泊施設を確保する」(東京・50代・血液内科)、「軽症者の隔離を速やかに実行する」(北海道・60代・消化器内科)などだ。
世界的に見て実施件数が少ないと言われている日本のPCR検査。日本感染症学会などが共同で、軽症者には推奨しないとする考え方を示した。現場からは、
「PCR検査の体制の基準をもう少し緩くしてほしい」(愛知・60代・耳鼻咽喉[いんこう]科)、「PCR検査数を他国並みに増やす」(東京・50代・皮膚科)などの回答があった。
薬の使用やワクチンの開発を望む声も強い。
「なぜこの緊急事態でアビガンを使わないのか理解できない。国は治験を始めているが、待っていられない。適応外処方なので医師の裁量だけでなく、患者やその家族の同意も必要にはなるが、それでももっと多くの医療機関で使えるようにすべきだ。また、使う人は重症者ではなく早期の感染者。それにより重症化を防ぐことができる」(E医師)
福岡の50代医師の「政府の対策は緩くて遅すぎ。経済はいつか立て直せるかもしれないが、人は生き返らない」という言葉は重い。
◇ ◇
来年に延期が決まった東京五輪・パラリンピックについても聞くと、もっとも多かったのは「開催できない」という回答で46%。「開催できる」が35%だった。
オリンピックに対する回答を見ると、「2年後に延期したらよかった」(大阪・40代・病理)、「新型コロナの第2波、3波の時期と重なるため、開催できないでしょう」(京都・40代・精神科)など否定的な意見が多い。本心は「ここまで死者が増え、深刻な状況で、正直オリンピックなんてどうでもいい」(神奈川・30代・整形外科)のかもしれない──。(本誌・山内リカ、吉崎洋夫)
※週刊朝日 2020年5月1日号より抜粋
「なぜこの緊急事態でアビガンを使わないのか理解できない。国は治験を始めているが、待っていられない。適応外処方なので医師の裁量だけでなく、患者やその家族の同意も必要にはなるが、それでももっと多くの医療機関で使えるようにすべきだ。また、使う人は重症者ではなく早期の感染者。それにより重症化を防ぐことができる」(E医師)
福岡の50代医師の「政府の対策は緩くて遅すぎ。経済はいつか立て直せるかもしれないが、人は生き返らない」という言葉は重い。
◇ ◇
来年に延期が決まった東京五輪・パラリンピックについても聞くと、もっとも多かったのは「開催できない」という回答で46%。「開催できる」が35%だった。
オリンピックに対する回答を見ると、「2年後に延期したらよかった」(大阪・40代・病理)、「新型コロナの第2波、3波の時期と重なるため、開催できないでしょう」(京都・40代・精神科)など否定的な意見が多い。本心は「ここまで死者が増え、深刻な状況で、正直オリンピックなんてどうでもいい」(神奈川・30代・整形外科)のかもしれない──。(本誌・山内リカ、吉崎洋夫)
※週刊朝日 2020年5月1日号より抜粋
