新型コロナウイルスの「本当の怖さ」が、いよいよ目の前に現れてきた。それは、コロナで亡くなる人より、「コロナ経済危機」で亡くなる人のほうが多くなるかもしれない、ということだ。 企業の倒産、解雇、派遣切り、雇い止めなどによる失業の先に、最悪のシナリオが待ち構えているかもしれないのである。
失業予備軍の休業者が600万人いる
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すでに失業者は増加している。コロナの影響による解雇や雇い止めは、5月28日時点で、見込みも含めて1万5823人。そして、まだ解雇はされていないが働いていない休業者は、4月に突然、前年同月比で420万人増え、597万人になった。 休業者は、「失業予備軍」になりうる。会社から「1か月間、休んで」と言われていたのが、「もう来なくていいよ」にいつ変わってもおかしくない。 このコロナ経済危機をなんとか乗り切るには、どうすればよいだろうか。それは、とにかく国や自治体が出している「支援策を使い倒す」ということだ。
画像:コロナのお金110番 会社と個人のお金、こうやって守れ!(アスコム)
1万社以上の中小企業の相談に応じてきた企業再生コンサルタントの八木宏之氏は、『コロナのお金110番 会社と個人のお金、こうやって守れ!』(アスコム刊)という本を緊急出版した。 この本では、国や自治体が出しているさまざまな支援策を紹介している。第1章は、中小企業向け、第2章は、個人事業主、会社員、派遣社員、契約社員、パート、アルバイト、学生向け、第3章は、すべての人向けの内容になっている。
給付金を借金の返済に迫られたらどうする?
八木宏之氏といえば、かつて共著書『借りたカネは返すな!』(2002年)で、借金で破滅しない“合法的裏ワザ”を紹介してベストセラーとなった。 そして、今回のコロナショックで注意しなければいけないのは、せっかく支給された給付金を、借金の返済にあててはいけない、ということ。たとえば、全国民に一律10万円が給付される「特別定額給付金」を回収しようと、銀行もだが、街金や債権回収業者(サービサー)が、手ぐすね引いて待ち構えているかもしれないのだ。
この本を監修した田中健一弁護士は、 「国から入ってくるお金は、事業資金や生活資金のためのもの。また、新たな法律(令和二年度特別定額給付金等に係る差押禁止等に関する法律)により、10万円の特別定額給付金は、『差押禁止財産』になりました。ですから、もし回収しにきたら、『これは、生活資金のためのものです。返済資金ではありません』とはっきり相手に言ってください。
政府は、生活資金のために全国民に10万円を支給するのです。そのお金を返済にまわしてしまっては、政府は返済のために支給した、ということになりかねません」 と警鐘を鳴らしている。
事業主が返済の時間稼ぎをする方法「手形貸付」
この記事を読んでいる人の中には、会社経営、個人事業主、あるいは会社財務担当者もいるだろう。ぜひ、そういう友人や家族、あるいは会社の上司に教えてあげてほしい。『コロナのお金110番 会社と個人のお金、こうやって守れ!』では、八木氏がいままで駆使してきた合法的裏ワザや交渉術なども書かれているが、その一例を紹介したい。
金融機関の担当者でもあまり知らない「手形貸付」という手法がある。聞き慣れない言葉だが、簡単に言うと、一定期間、金利だけの支払いになるので、支払いの負担額が減るということ。
これまでの「約定弁済」(当事者間で締結した契約に基づく債務弁済。住宅ローンなどの一般的な返し方)を「手形貸付」(借り手が貸し手を受取人とする約束手形を振り出し、貸し手が手形額面を貸し付けること)に切り替える方法で、支払い期限が1年なら、1年間金利だけを支払って元金はそのまま。この期間は、金利のみの支払いになるので、返済の時間稼ぎができる。 ただし、注意しなければならないのが、「約定弁済」から「手形貸付」に切り替える相談をするときに、「満期がきたら必ず約定弁済に戻す」と約束を取りつけること。そうしないと、満期がきたときに全額を返済しなければならない。
一度であきらめず、粘り強く交渉することが、この状況を乗り越える鍵だと八木氏は語る。
知らない支援制度はけっこうある。とことん使おう!
個人でも企業でも、あまり知らない支援制度はけっこうあるものだ。同書の巻末には、さまざまな制度と問い合わせ先が一覧で見られる「お役立ち連絡先一覧」が掲載されている。
また、支援策の紹介に加えて、解雇や雇い止めが心配なときの対応法や問い合わせ窓口、電気、ガス、水道などの光熱費、携帯電話料金の支払いを遅らせる方法、住宅ローンの返済に困ったときの対応法なども書かれている。 本と連携した公式サイトでは、発表される支援内容などを毎日更新している。 この戦いには、必ず終わりがくると信じ、使える制度はすべて使い、家族や従業員の生活を守り、そしてあなた自身が生きぬくことが、なによりも大事なことなのなのだ。