
トランプ政権は国際法の情勢安定化効果を無視して、その時々の取引で世界を安定させられると考えていると思われるが、結果として何をしているのか、よく理解せずに世界を悪い方向に向わせていると思われる。
アメリカはなぜ”世界のならず者国家″に同調したのか?トランプ的ディールでは世界は安定しない、日本がいよいよ考えるべきことは
3/14(金) 5:02配信
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Wedge(ウェッジ)
(Viktor Sidorov/gettyimages・dvids)
ロシアのウクライナ侵略を非難する国連総会の決議で、自由の国米国がロシアと共に反対票を投じたことに、2月24日付けウォールストリート・ジャーナル紙の社説‘A Sad Day for the U.S. at the U.N.’が慨嘆している。要旨は次の通り。
国連は決して善悪の裁定者ではないが、少なくとも米国は、悪事を働いた国について国連がその事実を認めるよう長年努めてきた。しかし今回は違った。国連総会で米国はロシアと共に、ロシアが3年前にウクライナを侵略したとする決議に反対票を投じたのだ。
非常に残念だ。ウクライナと欧州諸国が提出した決議案は、さほど厳しい内容ではなく、単に「ロシア連邦による大規模なウクライナ侵略」は「破壊的かつ長期的な影響」を与えたとして、「戦闘の早期停止」を求めるものだった。
しかし、交渉でウクライナ戦争を終結させようとしているトランプ大統領にとっては、この程度でも容認できないプーチン非難だったようだ。米国は従来はこうした決議を支持してきたが、今や同盟国ではなく、世界のならず者国家と共に投票するようになってしまった。
決議に現実的な重要性はないが、今回の紛争に関してトランプがロシア側に傾いたことを浮き彫りにした。
冷戦で平和を求め、それを達成したレーガン大統領は、ソ連について真実を述べることを躊躇わなかった。真実はレーガンが「悪の帝国」と呼んだソ連を打ち負かす上で不可欠な武器だった。
一方、同日、ホワイトハウスではフランスのマクロン大統領とトランプがウクライナ協議について会談した。マクロンはトランプの和平努力を称賛し、交渉成立後は欧州が平和維持部隊をウクライナに派遣すると述べたが、同時に、和平は米国の信頼できる保証によって支えられねばならないとも述べた。
米国が欧州を見捨てれば、停戦はロシアに次の侵略のための再武装の機会を与えてしまう。それを考えれば、マクロンが保証を求めたのはもちろん正しい。
しかし、トランプは米国が保証を与えるかどうか明言しなかった。どちらの国がウクライナ戦争を始めたのか、トランプ氏が真実を言わないのであれば、楽観的にはなれない。
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ならず者国家と共同歩調
1月24日、国連総会でウクライナ戦争についての決議が採択された。
ウクライナがロシアによる侵略を非難する総会決議案を提示し、米国と欧州諸国は修正した文言での共同提案を模索していたが、21日に米側がロシアへの非難を控えた決議案を出すと欧州側に一方的に通告、欧州側は反発し、総会では米国と欧州主導の決議案がそれぞれ採決にかけられた。欧州の決議案が日本を含む93カ国の賛成で採択されたが、米国はロシア、北朝鮮、イスラエルなどとともにこの決議に反対した。
この米国の態度は極めて遺憾なものであり、ウォールストリート・ジャーナル紙が社説で慨嘆するのは当然であろう。米国はならず者国家と共同歩調を取ったと言わざるを得ない。
同日、安保理では米国が提案したロシアとウクライナによる「紛争」の早期終結を求め、ロシアの侵略を批判しない決議がロシアも賛成して採択された。
英仏は「ロシアによる全面侵攻」と表現を強める修正案を出したが、ロシアの拒否権で採択されず、米国提案には拒否権を持つ英仏は棄権した。
トランプは気づかずうちに世界を悪い方へ
ウクライナ戦争はプーチンのウクライナは真の独立国家たる資格はないとの妄想によってはじめられた国連憲章に違反する侵略戦争であるのであって、それを非難しないことはそれを容認することに等しいと思われる。
領土の一体性尊重や安保理が許可した場合と自衛権としての武力の行使以外の武力行使を排除してきた国連憲章の根幹が、揺さぶられる事態が生じたと言わざるを得ない。
トランプ政権は国際法の情勢安定化効果を無視して、その時々の取引で世界を安定させられると考えていると思われるが、結果として何をしているのか、よく理解せずに世界を悪い方向に向わせていると思われる。
ドイツの次期首相候補メルツは、「欧州の絶対的な優先事項は米国からの独立である」とドイツ連邦議会選挙での勝利宣言で言ったが、わが国ももっと自前の安全保障を考える時期に来ていると思われる。
岡崎研究所