小中学生に「殺し」の報酬として200万円を提示…増え続ける「スウェーデンギャング」の衝撃的な内情(現代ビジネス) - Yahoo!ニュース
小中学生に「殺し」の報酬として200万円を提示…増え続ける「スウェーデンギャング」の衝撃的な内情
1/28(火) 7:04配信
12
コメント12件
現代ビジネス
Photo by Getty Images
昨今日本で大きな社会問題となっている「闇バイト」。おもに10代から20代の若者が高額な報酬目当てに、詐欺・強盗・殺人などの犯行に及んでいるケースが相次いでいる。そんな闇バイトだが、実は日本のみならず海外でも似たような犯罪、いや、それ以上に凶悪な犯罪が横行していることをご存じだろうか。
【写真】増え続ける「スウェーデンギャング」の衝撃的な内情
昨年11月30日付けのAFP通信の報道によると、北欧のスウェーデンでは数年前からギャング犯罪が横行しており、同国のギャング集団は、暗号化機能を備えたテレグラムなどのメッセージアプリを使用し、刑事責任を問われない15歳未満の子どもたちを「殺し屋」として勧誘しているとのこと。また、「殺し」の報酬として200万円越えの高額を提示するケースもあるというのだ。
今回、元神奈川県警所属で、現在はスウェーデンの大手通信機器メーカーに勤務し、『北欧、幸福の安全保障』、『スウェーデン 福祉大国の深層』(水曜社)の著者でもある近藤浩一氏に、スウェーデンのギャング犯罪の実情について解説してもらった。(以下、「」内は近藤氏のコメント)
記事前編は【「スウェーデン」のヤバすぎる実態…貧しい若者が急増し「凶悪犯罪」が多発していた】から。
若者のネットワークを利用した巧妙な勧誘
ではギャング犯罪組織が若者たちをどのように組織に引き込むのか、その具体的な手法について近藤氏に聞いていこう。
「スウェーデン警察によると、SNSなどを利用して若者を勧誘する手法が本格的に始まったのは2022年頃から。この頃からギャングはSNSを、犯罪実行役を集めるためのデジタル市場として認識していたとみられます。そして、こうした募集に引っかかる多くが、移民や難民が多く暮らす低所得者地域の若者で、軽犯罪などを犯す非行グループに所属していることがほとんどです。
また、スウェーデン国家犯罪防止委員会によると、ギャングの16歳の青年が、麻薬の販売などでキャリアを積み、さらに収益を上げるため、そうした非行グループの12歳から13歳の子どもたちを、"舎弟"としてギャング犯罪に引き入れる役割を担っているとの報告があります。ギャングの年上メンバーは、脅しや高額な報酬などの金銭的な誘惑を使って年下の舎弟を逃げられないように追い詰めて、組織に引き入れています。
ギャング組織がこうした若者のネットワークを利用し、幼い子どもをターゲットにするようになった理由は、経験値が少なく、判断力が未熟であるため、コントロールがしやすいことに加え、安価な労働力で責任の押し付けができる存在として目を付け始めたからです」
1/28(火) 7:04配信
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昨今日本で大きな社会問題となっている「闇バイト」。おもに10代から20代の若者が高額な報酬目当てに、詐欺・強盗・殺人などの犯行に及んでいるケースが相次いでいる。そんな闇バイトだが、実は日本のみならず海外でも似たような犯罪、いや、それ以上に凶悪な犯罪が横行していることをご存じだろうか。
【写真】増え続ける「スウェーデンギャング」の衝撃的な内情
昨年11月30日付けのAFP通信の報道によると、北欧のスウェーデンでは数年前からギャング犯罪が横行しており、同国のギャング集団は、暗号化機能を備えたテレグラムなどのメッセージアプリを使用し、刑事責任を問われない15歳未満の子どもたちを「殺し屋」として勧誘しているとのこと。また、「殺し」の報酬として200万円越えの高額を提示するケースもあるというのだ。
今回、元神奈川県警所属で、現在はスウェーデンの大手通信機器メーカーに勤務し、『北欧、幸福の安全保障』、『スウェーデン 福祉大国の深層』(水曜社)の著者でもある近藤浩一氏に、スウェーデンのギャング犯罪の実情について解説してもらった。(以下、「」内は近藤氏のコメント)
記事前編は【「スウェーデン」のヤバすぎる実態…貧しい若者が急増し「凶悪犯罪」が多発していた】から。
若者のネットワークを利用した巧妙な勧誘
ではギャング犯罪組織が若者たちをどのように組織に引き込むのか、その具体的な手法について近藤氏に聞いていこう。
「スウェーデン警察によると、SNSなどを利用して若者を勧誘する手法が本格的に始まったのは2022年頃から。この頃からギャングはSNSを、犯罪実行役を集めるためのデジタル市場として認識していたとみられます。そして、こうした募集に引っかかる多くが、移民や難民が多く暮らす低所得者地域の若者で、軽犯罪などを犯す非行グループに所属していることがほとんどです。
また、スウェーデン国家犯罪防止委員会によると、ギャングの16歳の青年が、麻薬の販売などでキャリアを積み、さらに収益を上げるため、そうした非行グループの12歳から13歳の子どもたちを、"舎弟"としてギャング犯罪に引き入れる役割を担っているとの報告があります。ギャングの年上メンバーは、脅しや高額な報酬などの金銭的な誘惑を使って年下の舎弟を逃げられないように追い詰めて、組織に引き入れています。
ギャング組織がこうした若者のネットワークを利用し、幼い子どもをターゲットにするようになった理由は、経験値が少なく、判断力が未熟であるため、コントロールがしやすいことに加え、安価な労働力で責任の押し付けができる存在として目を付け始めたからです」
日本とは大きく異なる実情
photo by gettyimages
“犯罪の実行役として若者がターゲットになっている”、“高額な報酬が提示される”、“SNSで募集している”など、日本の闇バイトとスウェーデンのギャング犯罪にはいくつかの共通点が存在する。しかし、近藤氏が第一声で否定していたように「その実情は大きく異なるもの」だという。
「日本とスウェーデンではそもそも犯罪の規模が大きく異なります。日本の闇バイトのなかには強盗殺人などもありますが、多くは比較的影響が限定的な詐欺犯罪が占めています。一方スウェーデンでは、日本の闇バイトのような犯罪組織のビジネスとして行われる詐欺犯罪の範疇を超え、殺人や銃撃、爆弾事件などの凶悪犯罪が多くを占めており、現在軍隊に支援を依頼するほど深刻な状況になっているのです。
また現在、スウェーデンギャングの構成員は約3万人と推定されており、推定2万5000人とされているイタリアのマフィアや、推定2万400人とされている日本の暴力団を上回っています」
前述したとおりスウェーデンの総人口は約1000万人。イタリアの総人口は約5900万人、日本の総人口は約1億2300万人のため、人口比率から考えると、スウェーデンのギャングが桁違いに多いことがわかるだろう。
国家に影響を及ぼす深刻な問題に
「またスウェーデンギャングの年間収入は約1兆4200億円から2兆1400億円にもなり、日本の暴力団の年間収入である約1兆数千億円よりも大きな収入となっています。このことからもわかるように、スウェーデンギャングは構成員、取引量、収入のすべてにおいて日本の暴力団を圧倒的に凌駕するほどの犯罪組織となっているんです」
近藤氏によれば、最近スウェーデンではギャング組織と政治家の繋がりも指摘されており、いまやスウェーデンギャングは国家安全保障や行政機能にも影響を及ぼすほど深刻な問題となっているとのことだ。日本の闇バイトのような“治安の悪化”にとどまらないレベルに達してしまっているのである。
photo by gettyimages
“犯罪の実行役として若者がターゲットになっている”、“高額な報酬が提示される”、“SNSで募集している”など、日本の闇バイトとスウェーデンのギャング犯罪にはいくつかの共通点が存在する。しかし、近藤氏が第一声で否定していたように「その実情は大きく異なるもの」だという。
「日本とスウェーデンではそもそも犯罪の規模が大きく異なります。日本の闇バイトのなかには強盗殺人などもありますが、多くは比較的影響が限定的な詐欺犯罪が占めています。一方スウェーデンでは、日本の闇バイトのような犯罪組織のビジネスとして行われる詐欺犯罪の範疇を超え、殺人や銃撃、爆弾事件などの凶悪犯罪が多くを占めており、現在軍隊に支援を依頼するほど深刻な状況になっているのです。
また現在、スウェーデンギャングの構成員は約3万人と推定されており、推定2万5000人とされているイタリアのマフィアや、推定2万400人とされている日本の暴力団を上回っています」
前述したとおりスウェーデンの総人口は約1000万人。イタリアの総人口は約5900万人、日本の総人口は約1億2300万人のため、人口比率から考えると、スウェーデンのギャングが桁違いに多いことがわかるだろう。
国家に影響を及ぼす深刻な問題に
「またスウェーデンギャングの年間収入は約1兆4200億円から2兆1400億円にもなり、日本の暴力団の年間収入である約1兆数千億円よりも大きな収入となっています。このことからもわかるように、スウェーデンギャングは構成員、取引量、収入のすべてにおいて日本の暴力団を圧倒的に凌駕するほどの犯罪組織となっているんです」
近藤氏によれば、最近スウェーデンではギャング組織と政治家の繋がりも指摘されており、いまやスウェーデンギャングは国家安全保障や行政機能にも影響を及ぼすほど深刻な問題となっているとのことだ。日本の闇バイトのような“治安の悪化”にとどまらないレベルに達してしまっているのである。
近隣諸国にも進出
photo by gettyimages
さらにスウェーデンのギャングは現在、近隣諸国にも進出し始めており、その勢いはさらに増しているという。
「スウェーデン公共テレビSVTによれば、2018年以降、スウェーデンのギャングがスペインに勢力を伸ばし始め、現在は1000人ほどいるとみられています。また、スペインのみならず、ノルウェーにもスウェーデンギャング組織が定着し始めているとの報道があります。さらにはデンマーク、フィンランド、セルビア、ポーランドにも勢力を拡大し、麻薬の密売などの犯罪が広がっています。
私のフィンランド人の知人に話を聞いたところ、まだ直接的な脅威は感じないとのことでした。ですがフィンランドの若者たちは、スウェーデンギャングのファッションスタイルをクールだと感じ、真似することもあるようで、フィンランド国内で新たなギャング組織が誕生するのではないかと不安に思っているということを語っていました」
日本ではどうなっていくのか
近藤浩一『スウェーデン 福祉大国の深層: 金持ち支配の影と真実』(水曜社)
日本の闇バイトとスウェーデンのギャング犯罪の実情にはかなりの差があるとのことだったが、今後日本でもスウェーデンのように子どもたちが犯罪組織に取り込まれていく社会になる可能性はあるのだろうか。
「現段階では、日本がスウェーデンのように凶悪犯罪が急増することは考えにくいでしょう。スウェーデンは1990年代以降、新自由主義の影響を強く受け、経済政策を優先した結果、貧富の差が拡大し、移民も増えていきましたが、日本は世界的に見れば移民や難民も少なく、多民族国家でもないため人種差別や宗教問題も少ないです。
しかし、今も問題となっている少子高齢化がさらに深刻になれば状況は変わるかもしれません。日本政府が『経済成長のため』として労働者不足の解消を移民で補おうとすれば、スウェーデンの現状のようなことが起こる可能性もあります」
さらに近藤氏は、「スウェーデンの二の舞にならないためには、短期的な経済成長を優先するような利益重視主義に陥ることなく、また安易に移民や難民を受け入れることもなく、これまでどおり国民の幸せを主とした社会政策を継続していくことが大切なのではないか」とも語る。
――日本国内でも闇バイトという呼称ではなく、れっきとした犯罪だということをもっと周知していくべきという風潮になってきているが、多くの若者たちが取り込まれているスウェーデンのギャング犯罪は、国家全体を揺るがすレベルになっている模様。
日本の若者たちが凶悪犯罪に手を染めないようにするために、これまで以上に抑止力が働く社会づくりをしていく必要があるだろう。
(取材・文=瑠璃光丸凪/A4studio)
A4studio(編集プロダクション)
photo by gettyimages
さらにスウェーデンのギャングは現在、近隣諸国にも進出し始めており、その勢いはさらに増しているという。
「スウェーデン公共テレビSVTによれば、2018年以降、スウェーデンのギャングがスペインに勢力を伸ばし始め、現在は1000人ほどいるとみられています。また、スペインのみならず、ノルウェーにもスウェーデンギャング組織が定着し始めているとの報道があります。さらにはデンマーク、フィンランド、セルビア、ポーランドにも勢力を拡大し、麻薬の密売などの犯罪が広がっています。
私のフィンランド人の知人に話を聞いたところ、まだ直接的な脅威は感じないとのことでした。ですがフィンランドの若者たちは、スウェーデンギャングのファッションスタイルをクールだと感じ、真似することもあるようで、フィンランド国内で新たなギャング組織が誕生するのではないかと不安に思っているということを語っていました」
日本ではどうなっていくのか
近藤浩一『スウェーデン 福祉大国の深層: 金持ち支配の影と真実』(水曜社)
日本の闇バイトとスウェーデンのギャング犯罪の実情にはかなりの差があるとのことだったが、今後日本でもスウェーデンのように子どもたちが犯罪組織に取り込まれていく社会になる可能性はあるのだろうか。
「現段階では、日本がスウェーデンのように凶悪犯罪が急増することは考えにくいでしょう。スウェーデンは1990年代以降、新自由主義の影響を強く受け、経済政策を優先した結果、貧富の差が拡大し、移民も増えていきましたが、日本は世界的に見れば移民や難民も少なく、多民族国家でもないため人種差別や宗教問題も少ないです。
しかし、今も問題となっている少子高齢化がさらに深刻になれば状況は変わるかもしれません。日本政府が『経済成長のため』として労働者不足の解消を移民で補おうとすれば、スウェーデンの現状のようなことが起こる可能性もあります」
さらに近藤氏は、「スウェーデンの二の舞にならないためには、短期的な経済成長を優先するような利益重視主義に陥ることなく、また安易に移民や難民を受け入れることもなく、これまでどおり国民の幸せを主とした社会政策を継続していくことが大切なのではないか」とも語る。
――日本国内でも闇バイトという呼称ではなく、れっきとした犯罪だということをもっと周知していくべきという風潮になってきているが、多くの若者たちが取り込まれているスウェーデンのギャング犯罪は、国家全体を揺るがすレベルになっている模様。
日本の若者たちが凶悪犯罪に手を染めないようにするために、これまで以上に抑止力が働く社会づくりをしていく必要があるだろう。
(取材・文=瑠璃光丸凪/A4studio)
A4studio(編集プロダクション)