
「港区」に住む超富裕層が資産管理会社を「北区」に登記する「ズル賢い理由」【プライベートバンカーが明かす】(ダイヤモンド・オンライン) - Yahoo!ニュース
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「港区」に住む超富裕層が資産管理会社を「北区」に登記する「ズル賢い理由」【プライベートバンカーが明かす】
3/13(木) 14:02配信
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ダイヤモンド・オンライン
ドラマ『プライベートバンカー』より唐沢寿明さん演じる主人公・庵野甲一 提供:テレビ朝日
「プライベートジェットを買ってきてほしい」「数百億円を超える資産の管理と運用を任せたい」――。こうした超富裕層の贅沢な悩みを解決することを生業とするのが「プライベートバンカー」。税務対策や相続問題、資産運用から特別な買い物やテニスの相手まで、顧客のためなら何でもする、いわば超富裕層に特化した御用聞きだ。放送中のドラマ『プライベートバンカー』(テレビ朝日系列、毎週木曜午後9時〜)を題材に、現役のプライベートバンカー2人に「超富裕層の生態」と「プライベートバンカーの仕事」を教えてもらった。表に出ることがない超富裕層ビジネスの内幕をご案内しよう。(構成/ダイヤモンド・ライフ編集部)
《案内人》
プライベートバンカーA(本文A):香港・シンガポールの外資系プライベートバンカーを経験して日本で独立。現在は複数の一族を相手にするマルチファミリーオフィス型のプライベートバンカー。
プライベートバンカーB(本文B):現役の大手金融機関プライベートバンカー。超富裕層に向けのプロダクト開発に携わるなど、超富裕層の生態を熟知している。
● 「高級賃貸マンション」に住む 富裕層が増えた“恐ろしい理由”
B 税務当局に情報を握られたら厄介です。なので、いかに情報を分散するかみたいなことを富裕層たちは真剣に考えていますよね。
富裕層は、プライベートの領収書を経費として計上するために資産管理会社を設立する人が多くいます。この資産管理会社を登記する住所を分散することもよく使われる節税対策の1つです。
住所を分散することで、税務署の管轄を別にするのです。そうすると、各税務署の情報はすぐにはリンクしないので、税務署の目をかいくぐることができます。1つの税務署に集約してしまうと、税務署にすべて把握されてしまいます。
あとは、税務署によって方針が異なるので、それを把握しておく必要もあります。例えば、新しい節税手法を突きたがる税務署があります。高級住宅街を管轄する税務署に多いのですが、そこで名乗りを上げたがります。新たな節税スキームの把握に税務署が一生懸命だったりするので厄介です。
A 富裕層はいい場所に住みたがるので、そうした税務署の管轄に住むことになってしましまう。だから、資産管理会社は居住地とは別の税務署が管轄する場所で登記する方は確かに多い。住んでる方には申し訳ないですが、北区とか(笑)。
会社は港区や千代田区にあるのに、住むのは世田谷区というのはそうしてできあがったのではないかなと個人的に分析してます。所得が高い人が多く住んでいる地域であれば、自分よりも所得の高い人もたくさんいるわけですから、税務署に狙われにくいと考えることもできます。
B 税務署の話と少し離れるんですけど、最近は、あえて高級賃貸マンションに住む富裕層が増えています。よく目にする「持ち家・借家論争」という観点の話ではなくて、セキュリティ上の理由です。
不動産を所有すると登記が必要です。登記簿は誰でも見ることができるもので、持ち家だと住所がバレてしまいます。今、最近は闇バイトによる強盗のニュースをよく見ますが、小さい子どもを持つ富裕層は本当に怖がっています。
賃貸であれば、居住者が登記する必要はないので、セキュリティ上の安全を確保しやすくなります。収益不動産は資産として持ってるだけなので、登記を見られても問題ありません。若年の富裕層に多い傾向です。
A これまでのセキュリティは、ハード面のセキュリティだったので、防犯システムを入れるといった対策が中心でした。大きなレジデンスの方が、24時間コンシェルジュがいたり、エントランスで車を預けられるバレーパーキングがあったりするので、圧倒的に安全でした。
登記上の情報が犯罪に悪用される可能性があるとなると、富裕層があえて高級賃貸物件に住むことが防犯対策にもなりえます。
不動産を資産管理会社の所有にすると、登記上の名義は資産管理会社になります。それでも資産管理会社の商業登記を見れば、代表者の名前が書いてあるので、そこからばれてしまうことがあります。
なので、プライベートバンカーが資産管理会社の代表になっているケースも多々あります。要は名義貸しですね。私も名義貸しをしているところがあります。
● 超富裕層ほどマイナンバーカードを つくらない「ズル賢い理由」
B この点は、独立したプレイベートバンカーと金融機関のプライベートバンカーの違いかもしれませんね。私の場合は、兼業禁止の規定に抵触するので、名義貸しはできないんです。しかし、こういう話を聞くたびに、つくづく本当に富裕層って大変だなとつくづく思うんです(笑)。
A おっしゃる通りですね(笑)。麻布台ヒルズのレジデンスに居住している人の名前は、鼻が利く高級不動産の営業には把握されているはずです。不動産の場合、手数料は物件価格の3%が相場です。不動産の営業担当であれば、超高級物件が動くときは、そこに絡みたいと考えるのが自然です。
B 他にも、独立系と金融機関での違いということで例を挙げると、マイナンバーの扱い方です。
金融機関は口座開設などにマイナンバーが必要ですが、マイナンバー自体は隠されていて我々にも見えないようにされています。職業倫理上、顧客のマイナンバーは入手してはいけないし、ましてやそれを使って代わりに手続きを進めることは絶対にできません。
しかし、富裕層の側からすると、契約するときにマイナンバーを入力したり、自分で印鑑をしたりすることを非常に面倒だと感じる人が多くいます。顧客のニーズとしては、代わりにやってほしいというのが本音でしょうね。
A でも、現状では、マイナンバーはマストではないですよね。あると便利だし、将来は必要になるので早めに利用してください、といった性質のものです。そうすると、そもそもマイナンバーカードをつくらない富裕層も多いんです。
マイナンバーであらゆる情報が紐づけられやすくすることは、彼らにとってメリットがありませんからね。先ほど説明した税務署を分けたりする努力が水の泡なってしまう。
極端な例ですが、ある富裕層がマイナンバー保険証で都内の病院を利用したとします。同じ日に資産管理会社の経費で山口県のフグを食べた領収書があった場合、物理的な矛盾を税務署から指摘されやすくなってしまいます。こんなイメージです。
B 資産管理会社に税務調査が入るのが一番厄介ですよね。そもそも、資産管理会社は、プライベートで使ったお金を経費として落とすためにあると言っても過言ではありません。
A 経費の管理もザルですし、愛人に使ったお金を経費で落としたりもしてますからね。通常のガバナンスが効いている事業会社ではありえませんが、ガバナンスを効かせないために資産管理会社をつくるわけです。
資産管理会社に税務調査に入られたら、「お土産を渡すか、渡さないか」ではなく「どのくらいのお土産で渡すか」という話になります。要は、追徴課税でどれぐらいの金額を渡すかということです。
税務署側としては、取れるだけ取りたい。富裕層はできるだけ取られたくない。せめぎ合いをするわけです。
ダイヤモンド・ライフ編集部