(「河北新報」令和6年12月22日付け記事より引用)
障害者が働く「就労継続支援A型事業所」を各地で運営する同一の会社グループが9月以降、愛知や京都など5府県で事業所11カ所を相次いで閉鎖(廃止)していたことが22日、各自治体への取材で分かった。今後の予定を含めると閉鎖は6府県で少なくとも計16カ所となり、障害者の解雇、退職者数は約300人に上るとみられる。一事業者としては異例の規模で、一部では唐突な閉鎖に利用者が反発、トラブルになった。
A型事業所を巡っては、今年3〜7月に全国で329カ所が閉鎖され、約5千人が解雇、退職となったことが共同通信の調査で判明。公費に依存して収支が悪い事業所を対象に、国が報酬を引き下げたことが主な要因で、撤退が続いている。
この会社は愛知県東海市の「MOON(ムーン)」。取材に対し「報酬改定で事業収益が思ったより上がらなくなった。利用者が困らないよう、一人一人と面談して行き先を調整している」と話した。
同社は事業所ごとに異なる名前の合同会社を設立し、北海道から大阪府まで8道府県の18市で28カ所のA型事業所を運営。うち静岡、愛知、滋賀、京都、大阪の5府県で11カ所を9〜11月に閉鎖した。12月末と来年1月末に閉鎖予定の5カ所を含めると、長野を加えた6府県で利用定員数は320人。
閉鎖した11カ所のうち10カ所では、別の名前で設立された二つの会社がそれぞれ「B型事業所」を開設。半分以上の利用者はB型で働き続けているという。A型は利用者と雇用契約を結び、最低賃金が適用されるが、B型は適用されないため、利用者の賃金は下がる可能性が高い。
閉鎖した件数を市別に見ると、名古屋市が3カ所と最も多く、利用者約100人が解雇されたとみられる。
滋賀県守山市のA型事業所は今年4月の開設だったが、わずか5カ月後の9月に利用者に閉鎖を通告。11月末に閉鎖してB型に転換した。一部の利用者は「B型に移るよう一方的に勧めるだけで、次の仕事先の紹介はなかった」として、弁護士に相談するなどした。
就労継続支援A型事業所 障害者総合支援法に基づく就労支援事業の一つ。一般企業で働くのが難しい障害者を対象に雇用契約を結び、働く場を提供する。原則として最低賃金以上を収益から支払う。職種は事務や清掃、製造、クリーニングなど。利用者は障害が軽めの人が多い。事業所は国から障害福祉サービスの報酬(給付金)や雇用保険の助成金を受け取れる。平均賃金は2022年度で月約8万4千円。B型事業所は雇用契約を結ばないため、最低賃金が適用されず、平均で月約1万7千円。