(「河北新報」平成27年5月17日(日)付け記事より引用)
◎障害者支援団体「ポラリス」代表・田口ひろみさん(宮城県山元町)
描いた夢を形にする場が整った。宮城県山元町の国道6号沿いの小さな一軒家。田口ひろみさん(51)が2月に設立した障害者支援の民間団体「ポラリス」の拠点だ。
北極星を意味する団体名には「一点にとどまり続ける星のようにぶれないで、私なりの活動を続けたい」との思いを込めた。精神障害者らに絵画や音楽を通じた表現活動で自立を促す。
4月25日には初のワークショップを開いた。集まった障害者や子どもたち30人が、白い紙に思い思いに色とりどりの絵を描いた。「きれいだね」。田口さんが語り掛けると、参加者は誇らしげに笑った。
3月末まで17年間、町の通所授産施設に勤めた。2008年からは施設長として特産のイチゴジャム製造や町内施設の清掃などの作業を指導した。「取ってきた仕事を利用者がこなせるよう世話する平和な毎日」と振り返る生活が、東日本大震災を境に一変した。
若い男性スタッフが津波の犠牲となり、当時38人いた利用者の半数が避難生活を強いられた。2カ月後に施設を再開したものの、イチゴ農家に壊滅的な被害が出るなど請け負っていた仕事の3分の2を失った。
「早く仕事がしたい」。利用者の声に応えようと、支援を名乗り出た一般財団法人たんぽぽの家(奈良市)に窮状を訴えた。11年秋、障害者アートの活動に取り組む法人の協力で、20人の利用者が描いたイチゴやリンゴの絵を入れた手ぬぐいを販売した。
自分の絵が商品化されたことを大喜びする利用者たち。その姿に新たな可能性を感じた。「作品を評価してもらうことが、障害者の生きがいにつながることを知った」
12年からは週1回、施設内でアートのワークショップを続けた。利用者が協力してイチゴをモチーフにした縦3メートル、横1.8メートルの大きなタペストリーを製作し、ことし2、3月に町内で開いたアート展で他の障害者の作品とともに展示した。期間中、延べ2000人の目に触れた。
田口さんは成果を喜びながら、次の目標への準備を進めてきた。ポラリスでは障害者アートを事業化したサービス事業所を運営する一方、障害の有無に関係なく参加できる表現活動のワークショップも続ける。
「震災を機に全国の多くの方から教わった先進的な取り組みを次に生かす。多くの住民にもアートで元気になってほしい」。12日に県からNPO法人の認証を得た。真っ白なキャンバスに復興途上の地域の未来図を描く。
→河北新報オンラインニュース記事
◎障害者支援団体「ポラリス」代表・田口ひろみさん(宮城県山元町)
描いた夢を形にする場が整った。宮城県山元町の国道6号沿いの小さな一軒家。田口ひろみさん(51)が2月に設立した障害者支援の民間団体「ポラリス」の拠点だ。
北極星を意味する団体名には「一点にとどまり続ける星のようにぶれないで、私なりの活動を続けたい」との思いを込めた。精神障害者らに絵画や音楽を通じた表現活動で自立を促す。
4月25日には初のワークショップを開いた。集まった障害者や子どもたち30人が、白い紙に思い思いに色とりどりの絵を描いた。「きれいだね」。田口さんが語り掛けると、参加者は誇らしげに笑った。
3月末まで17年間、町の通所授産施設に勤めた。2008年からは施設長として特産のイチゴジャム製造や町内施設の清掃などの作業を指導した。「取ってきた仕事を利用者がこなせるよう世話する平和な毎日」と振り返る生活が、東日本大震災を境に一変した。
若い男性スタッフが津波の犠牲となり、当時38人いた利用者の半数が避難生活を強いられた。2カ月後に施設を再開したものの、イチゴ農家に壊滅的な被害が出るなど請け負っていた仕事の3分の2を失った。
「早く仕事がしたい」。利用者の声に応えようと、支援を名乗り出た一般財団法人たんぽぽの家(奈良市)に窮状を訴えた。11年秋、障害者アートの活動に取り組む法人の協力で、20人の利用者が描いたイチゴやリンゴの絵を入れた手ぬぐいを販売した。
自分の絵が商品化されたことを大喜びする利用者たち。その姿に新たな可能性を感じた。「作品を評価してもらうことが、障害者の生きがいにつながることを知った」
12年からは週1回、施設内でアートのワークショップを続けた。利用者が協力してイチゴをモチーフにした縦3メートル、横1.8メートルの大きなタペストリーを製作し、ことし2、3月に町内で開いたアート展で他の障害者の作品とともに展示した。期間中、延べ2000人の目に触れた。
田口さんは成果を喜びながら、次の目標への準備を進めてきた。ポラリスでは障害者アートを事業化したサービス事業所を運営する一方、障害の有無に関係なく参加できる表現活動のワークショップも続ける。
「震災を機に全国の多くの方から教わった先進的な取り組みを次に生かす。多くの住民にもアートで元気になってほしい」。12日に県からNPO法人の認証を得た。真っ白なキャンバスに復興途上の地域の未来図を描く。
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