ホルマリンのマンネリ感

札幌出身苫小牧在住、ホルマリンです。怪しいスポット訪問、廃墟潜入、道内ミステリー情報、一人旅、昭和レトロなどなど…。

北海道昭和残照(5)珈琲館滴

2023-12-17 23:29:53 | 北海道内の旅行・風景


「扉の向こうは別世界」……。

小さく書かれたその言葉は嘘ではなかった。





広い通りに面し、木製の扉を1枚隔てた先にこんな空間が広がっているとは。
創業54年。店の前は何度か通ったことがあるはずだが、今まで気付かなかった。





ブレンドコーヒー450円。深煎りか浅煎りかを選べる。
高齢の女性店主の薦めで今日は深煎りを。
何やら魔法でも使えそうな落ち着いた方で、お店のカウンターが良く似合う。

店員が無口?という口コミがあったので少し緊張していたが、そんな事は無く。
思わず「素晴らしい雰囲気のお店ですね」と伝えると「ありがとうございます。オホホ」とはにかんだ。

「お砂糖入れまで素敵だね」。同行者と感激しきり。






古今東西のあらゆる品が置かれた店内は骨とう品店、アンティークショップのよう。
ワシントン条約で規制され、今では入手が難しいウミガメやクジャク、アルマジロなどの剥製が目を引く。





思わず時間を忘れて滞在してしまうような極上空間であった。

(2023年訪問)
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北海道昭和残照(4)HOTEL GREEN

2023-12-14 23:59:43 | 北海道内の旅行・風景


時刻は午後11時を回るころ。

町はずれの小さなホテルを目指し車を走らせているのだが、周辺には田畑が広がっているのだろうか、ずっと真っ暗だ。
およそ宿泊施設があるとは思えぬ光景に不安になる。

土地勘のない片田舎で同行者を連れ回しており、ただでさえ心細いのに……と思っていたところで、ようやくお目当ての建物がヘッドライトにポツンと浮かび上がった。



とうの昔に廃業していてもおかしくないシチュエーションだが、電気がついている。
車庫に車を入れてそのままチェックインという昔ながらのスタイルだ。


暗闇に目を凝らすと、すぐ隣にはすっかり色あせた同規模のラブホテル廃墟。「ポツンと現役ホテル」の不気味な雰囲気がさらに際立つ。
シャッター付きの車庫は旧規格の車サイズのためか、中々に狭く車幅に気を使った。

車庫の奥に電動シャッターを閉めるボタンと、部屋へ通じる扉がある。






夢にまで見た円形ベッドの一室。名前は「パスティーユ」。
令和の現代に残っているのが奇跡ともいうべき雰囲気が、部屋全体に漂っていた。


風営法の関係で、さすがに回転機構は無くなっており、枕元に並ぶのは照明やラジオのスイッチ。年代物のため反応しないものもある。
部屋に備え付けのミニ自販機には、楽しそうな玩具類や無双ドリンク。




ひとつ問題だったのは洗面台とトイレ。
清掃はされているのだが、恐らく開業時からそのままの設備で、カビの臭いが強烈だこと。
廃墟探索の経験がある私ですら引いてしまうレベルで、同行者の気分を害さないかハラハラしたのだが、笑って許してくれるタイプだったのでほっと一安心。
来てよかったかも。


浴室も部屋と雰囲気を合わせているのだろう、赤いタイルと円形の浴槽が特徴的。
カランとシャワーは新しくなっているので快適であった。スケベ椅子は無かった。



こういう状況のそれとは違う種類の高揚感と興奮で、つい写真撮影に夢中になってしまった。
寝ましょう。寝ますよ。疲れているのでね。はい、おやすみ。





翌朝、目覚めて窓を開けてみると一面に広がる田園風景。どうりで昨夜カエルの鳴き声がしていた訳だ。
素晴らしいロケーションである。

なお、ここにはもう一室、青い円形ベッドの部屋もあるそうだ。
ぜひもう一度訪問してみたい。今度は断られそうだけど……。

(2023年訪問)
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北海道昭和残照(3)ランプ城

2023-05-23 22:38:36 | 北海道内の旅行・風景



崖の突端に建つ魔女の館?

急斜面の住宅街を突き当りまで進むと家々が途切れ、草むらの中に延びるけもの道が。
いざなわれるように進んでいくと左手に海を見下ろすことができ、本当にこの一角だけが崖に突き出していることが分かる。





派手なピンク色の割れた看板、年季の入った住居のような建物に身構えてしまうが、ここは堪えて扉を開けてみよう。
御年92歳!(訪問時)の女性店主と、不思議な雰囲気の娘さんが静かに出迎えてくれるはずだ。
私を歓迎するかのように、色とりどりのステンドグラスのランプやオペラのBGMが入れられると、そこはもう異界の飲食店。







海を望める窓際の席に案内してもらい、看板メニューのオムライスセット(500円)をいただく。
自家製と思われるポテトサラダと、こちらは市販品と思われるコーンポタージュ付き。
おばあちゃん家のオムライス、という表現がぴったりの素朴な味だ。



食後にお菓子の盛り合わせと大きなデコポンを出してくれ、思わず童話に出てきそうな場面だな、と思ったが、店主はとても気さくで良い人。
時おり口をおさえて高い声で笑うのが可愛らしくもある。

店内は少し年季が入って埃っぽいけれど、世界中の風景写真や不思議なアンティーク雑貨、来訪者が感想を書き記すアルバムのようなノートが置いてあって楽しい。
最近はテレビやネットのおかげで、内地からやってくるお客さんも居るらしい。



このお店は約60年前、旦那様(故人)が海を見下ろせる立地を気に入り、岩場を削って建てたのだとか。
本物の岩が配置された旦那様こだわりの空間には、かつて使用していたという大広間の跡。
その先にはいびつな形の小さな扉があり、出てみるとぐるりと海が見渡せるベンチが。
昔はもっと賑わっていたのかな。



普段は店主の使い(?)のネコさんがいるらしいのだが、この日は体調不良とのことで出会えず。
また来てみよう。

(2021年訪問)
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北海道昭和残照(2)かに太郎

2023-05-21 11:52:06 | 北海道内の旅行・風景


数年前まで廃墟だと思っていたこの建物、実は現役の店舗である。
500円で美味しいかにめしが食べられる穴場である。

この日もあまりのひとけの無さに「やってないかな?」と不安になりながら中を覗くと、
薪ストーブの前にポツンと座る店主(訪問時83歳)が。
「寒くてごめんね。かにめししか出来ないけど……」。
静かな店内に案内してもらう。





円形の建物と大きな窓のおかげで、電気が無くても明るい店内。太平洋が一望できる。
「太陽が出ていると暖かくて気持ちが良いんだよ~」と店主。

薪ストーブの燃料なのか、敷地の外や店舗内の大部分に材木が積み上げられている。これはご愛嬌だ。



創業50年超。かつては奥様と経営されていたそうだが、数年前に亡くなってからはおひとりで切り盛りされている。
早朝に室蘭からやってきてごく少量を仕込み、無くなり次第終了、というスタイル。



味の染みたタケノコが乗ったかにめし。味噌汁付きで500円で、これがまぁ美味しいこと。
年季の入った器もまた味わい深し。
雑然とした店内に不安になりつつ、ご飯をかき込んで味の良さに驚く、これが「かに太郎」体験だ。



かつてはあらゆるカニ料理を提供していたようだが、現在はかにめしのみ。
お値段は据え置きのようだ。

なお、店主がご高齢のため提供できる量が限られており、午前11時の開店から早ければ1時間少々で終了してしまう事もあるそう。
常連客もいるため、細々と続けているとの事。にじみ出る人柄の良さが魅力的な店主であった。



(2020年訪問)
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北海道昭和残照(1)濁川温泉新栄館

2023-05-18 22:35:41 | 北海道内の旅行・風景



大雨の中、友人に導かれ辿り着いた秘境の湯屋。
左の建物から明治、大正、昭和と増築が繰り返されているらしい。



呼び鈴を鳴らし、小窓から薄暗いカーテンの向こうへ小銭を渡す。
かなり高齢と思しき主人、ほとんど手しか見えなかった。
趣深い廊下は少し傾いていて強度が心配になる。









木造屋根の浴室へ入ると、コンクリートの床に深く掘られた浴槽が三つ。
床全体が温泉成分ででこぼこになっている。洗い場などという気の利いたスペースは無い。
パイプで源泉を直接引いているらしく、手前の浴槽になるほど熱い。
穴だらけの天井から雨漏りしないのかと見上げてみたが、応急処置のビニールシートが辛うじて受け止めていた。







壁に掲げられた温泉登録証の日付を見ると昭和10年……。
地元の酒造会社から寄贈されたであろう戦前の鏡も右横書きである。



まるで東北地方の温泉宿のような趣。

(2019年訪問)
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