ホルマリンのマンネリ感

札幌出身苫小牧在住、ホルマリンです。怪しいスポット訪問、廃墟潜入、道内ミステリー情報、一人旅、昭和レトロなどなど…。

北の島旅 礼文・利尻島へ(その3・最終回)

2023-05-12 00:41:31 | 北海道内の旅行・風景


2022年9月4日

開けっ放しの窓から涼しい潮風を浴び、最高の目覚めだ。
ただ、気持ちの良い昨日の快晴とは打って変わりどんよりとした曇り空。そのうち雨も降り出すという。
本日はレンタカーを半日借りて島内一周を予定している。景色が良くないのは残念だが、まあ何とか楽しめるだろう。


午前9時半ごろ、宿の朝食を頂き、オーナーのおじさんの車で鴛泊の町まで送ってもらう。
本来はチェックイン/アウト時のみの送迎サービスだったのだが、いくらかのガソリン代で朝、夕方の送り迎えを特別に了承してもらった。ありがたい事この上ない。

面積183キロ、周囲63キロある利尻島は仙法志の宿~鴛泊まで片道30分少々かかる。
気さくなおじさんとは移動中の車中で話がはずみ、利尻島の「シリ」はアイヌ語で「島」を意味することや、島内の電力事情=本土と独立して島内で発電しているため、胆振東部地震ではブラックアウトの被害を免れたらしい=などを教えてくれた。


奥尻島、焼尻島など、北海道に「尻」が付く島が多いのはそういう事だったのか、と友人と納得しているうち、昨日降り立ったフェリーターミナル前に到着し降ろしてもらう。
おじさんはこの後、宿の近くで経営している物産店での仕事があるという。いやはや、忙しいのにも関わらず送って頂き申し訳ない。


昨日は上陸早々に車に乗ってしまったのでゆっくり見物できなかったのだが、改めて見るターミナル周辺はおしゃれな飲食店や雑貨店などがあり、昨日の礼文島よりも開けている印象だ。
間近にそびえる利尻富士も迫力満点である。

午前11時、ターミナル前のレンタカー店で予約していた軽自動車(ダイハツミライース)を受け取る。
夕方5時までの利用で料金は9800円。まずは友人がハンドルを握る。

沓形(くつがた)にある利尻ラーメンの店に行ってみよう、と反時計回りに車をスタートさせると、すぐさま強めの雨が降ってきた。
ほぼ正午ぴったりにありつけたお目当ての利尻ラーメン(焼き醤油)は利尻昆布をたっぷり使用した出汁であっさり系。
人気店舗らしく、ハイキングや観光などで来たであろう島外のお客さんでにぎわっていた。


おじさんが送ってくれた道を反対方向に進み仙法志へと戻り、午後1時、島の最南端に近い仙法志御崎公園へ。
雨が本降りで風もあるため景色を楽しむ余裕がほぼなく、普段は絶景であろう高台からの眺めもこんな感じである。

公園の突端にあるおじさんの土産物店に寄りご挨拶。昆布など豊富にそろった海産物のお土産をそれぞれ買い込んだ。
普段は隣接した海上プールでアザラシへの餌やり体験もやっているそうで、地味に楽しみだったのだが今日は悪天候で無しとのこと。残念だ。

温泉好きの友人が、おじさんに島内おすすめの温泉を聞く。
2か所ほどあるらしいが、そのうち沓形の「利尻ふれあい温泉」が茶褐色に濁った「金の湯」で泉質が良いのだとか。
よし、今日の最後の目的地はそこに決定だ。


運転を私にチェンジし、島の東側を北上するも相変わらずの悪天候。
あの北海道銘菓「白い恋人」の缶にプリントされた利尻富士の風景が見られるという「オタトマリ沼」および「白い恋人の丘」は車から出る気にもなれず。雨に霞んで山も見えないため、運転席からの撮影に留めた。
その後「姫沼」付近にも足を延ばしてみたが、沼まで遊歩道を歩かなくてはならぬようでこちらもすぐに引き返してしまった。
観光らしい観光をしないまま鴛泊へと戻り、ガソリンスタンドへ入ると本土民は皆びっくりの島価格で思わずパチリ。

さて、もう一度沓形に向かって探検の締めに温泉だ。
とその前に、私が利尻島で最も寄りたかった場所へ寄り道させてもらった。


・ミルピス商店(利尻町沓形新湊153)


ごく普通の民家の敷地内に向かって案内看板があり、少し躊躇してしまった。
一軒家の一角に看板が掲げられた販売所への入り口があった。

ミルピスとは、1965年にここの家主(牧場経営)が生み出したオリジナルの「乳酸飲料(乳酸菌飲料ではない)」。
牛乳と乳酸をベースに砂糖、クエン酸、香料を混ぜて作り出し半世紀以上。この民家が全国で唯一の生産場所であるという、(利尻島以外では)知る人ぞ知る激レアドリンクなのだ。


期待を胸にガラガラと扉を開けるも無人。
旅人らの思い出の写真やメッセージが貼られた飲食スペースが広がっていた。
「珍スポ」風味に私だけが盛り上がる。


肝心の「ミルピス」はというと、奥の冷蔵ケースでしっかり冷やされてストックされていた。
どうやら横の料金箱にお金を入れて持って行ってくださいというシステムのようだ。
1本350円(持ち帰りは450円)。さっそくお金を入れて1本取り出す。


味わい深い特製の瓶に入ったミルピス。牛乳が沈殿しているのでよく振ってから頂く。
おぉ!濃い牛乳のようなものを想像していたが、森永マミーをあっさりさせたような味で、のどごしが良くとても美味しい。
乳飲料が苦手な友人も美味しそうに飲んでいた。

近年はギョウジャニンニク、ハマナス、ヤマブドウなど10数種類の味があり、電話やファクスで全国からの注文も可能との事なので、気になった人はぜひ。


無事にミルピスを味わえ満足した後、沓形港近くの「利尻ふれあい温泉」へ。
確かにお湯が茶褐色で、これは空気に触れることで湯の成分が変色しているからなのだそうだ。
露天風呂からは海が一望できるのだが、残念ながら風雨が酷くなっており寒い。いまいち寛げずに終了した。

今夜は素泊まりのため、セイコーマートで夜食と酒を買い込んでからレンタカーを返却。
ターミナルで風雨をしのぎ、朝約束した時間に再びおじさんに迎えに来てもらい宿へと戻った。
フェリーの時刻表を見る限り、明日の船はなんとか出港してくれるようだ。


2022年9月5日

昨晩も夜遅くまで飲んでたはずなのだが、ずいぶん早く目覚めてしまった。今朝も曇りの朝。
本日は正午の稚内行きのフェリーに乗ると2人で決めていたので、ぐっすり眠る友人の横でだらだらしていたのだが、午前7時ごろにおじさんが部屋にやってきた。
なんでも、我々の乗船予定の船までは通常運航なのだが、その次の便は欠航。時間を繰り上げて臨時便の運航が決まっている状況なのだそうだ。
「混雑すると思うし、恐らく揺れるので朝イチの便に早めた方がいい」との事だった。

おじさんのアドバイスに従い友人をたたき起こし、慌ただしく準備して宿を後にすることに。
奥様(実は苫小牧出身なんだとか)へお礼を言ってお別れ。今日もおじさんにターミナルまで送ってもらった。

利尻島での2日間、おじさんには良くしてもらいっぱなしだった。
おじさんと仙法志の宿のおかげで、今回の島旅がより素晴らしい思い出になったことは言うまでもない。
また利尻島に来た際にはぜひ利用させてもらう旨お伝えし、しっかりお礼を伝えてお別れした。


午前8時半、無事に朝イチの稚内行フェリーに乗船。皆予定を繰り上げて乗っているのか、それなりの乗船率だった。
時刻通り出港する船の甲板に出て、少しずつ離れていく鴛泊港を感慨深く眺めた。

夏の終わりの旅の終わり、友人はZONEの「secret base~君がくれたもの~」を聴きながら思い出に浸っていたが、私は出港時の脳内テーマソングはいつもセリーヌ・ディオンの「My heart will go on」である。

幸い船の揺れは覚悟していたほどではなく、隣に居合わせた関西の老夫婦ペアとお菓子を交換したりして楽しむことができた。



2022 北の島旅 礼文・利尻島へ
完。
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北の島旅 礼文・利尻島へ(その2)

2023-05-03 02:38:12 | 北海道内の旅行・風景
午前11時。
「スコトン岬」の観光後、運転を私にバトンタッチし、島の西側にある人気の景勝地「澄海岬」へ向かった。
道道の分かれ道から内陸に逸れ、丘の一本道を20分ほど進むと、すぐに岬のある集落に到着した。


港の駐車スペースに車を停め、展望台へ向かう階段を登ってゆく。
海鳥の声だけが響く静かな港内を見渡すことができ、とても気持ちがよかった。

そして小高い丘の上まで階段を登りきり、楽しみにしていた展望ポイントへ。



入り江状になっている「澄海岬」の海は島内イチの透明度を誇るといい、展望台からでも海底が見えるほど。
道北地方でもこれほど美しい海が見られるとは知らなかった。友人と二人でしばし見惚れる。
新しそうだなと思っていた岬の地名は、香深港へフェリーが就航した1989年に町民が命名したのだとか。




正午ごろ、フェリーターミナルまで戻ってレンタカーを返却し、近くの食堂で昼食。
店主のおばあさんがおススメしてくれたホッケの開き定食を頂いた。身が厚くておいしい。

食材を届けに来ていた地元のおじいさんに話し掛けられ、心配している明日以降の運航状況を聞いてみたところ、我々が帰る明後日までは大丈夫だが翌日から欠航になるだろうとの事。
この地での長年の仕事経験で分かるようだ。有力で頼もしい情報を頂き、ひとまずほっとする。


昼食後、今度は先ほどとは逆方向、島の南部にある「北のカナリアパーク」へ向かう。
レンタサイクルを考えたのだが残念ながら出払っており、バスも来ない時間だったので徒歩で目指すことに決めた。



海に面した一本道を二人でとぼとぼ歩く。
澄んだ空と海、磯の匂い、のどかな漁村とその向こうにそびえる利尻富士……。なんと贅沢な光景だろうか。

集落の中を30分ほど歩き、急坂を息を切らしながら登ったところで、ようやく「北のカナリアパーク」へ到着した。
私が礼文島で最も楽しみにしていた光景が広がっていた。




雄大な利尻富士をバックに、年季の入った平屋建ての木造校舎がポツンと建つ。
なんとも写真映えのする風景だが、それもそのはず。
校舎は2012年制作の映画『北のカナリアたち』(阪本順二監督)のために建てられた撮影用のセットで、クランクアップ後も残され、翌年2013年から観光地として活用されているのだ。




入館無料の校舎内は、映画の資料が展示された記念館になっており、主演の吉永小百合と生徒たちのパネルがお出迎え。教室や学習机、いすなどの備品もそのまま残されている。

原作は湊かなえ。
吉永小百合演じる主人公「川島はる」は離島の小学校教師で、合唱を通じて子ども達と心を通わせていたが、悲しい事件で島を追われてしまう。
20年後、かつての生徒の一人が事件を起こしたことを聞き、再び島への再訪を決意するというヒューマンサスペンス。

「大自然に建つ平屋建ての木造校舎」というイメージに合うロケ地が無く、利尻富士が見えるこの地を選んで理想の情景をつくり上げた。
撮影は札幌、稚内、礼文島、利尻島で行われ、冬季は厳しい寒さや悪天候にも悩まされたという。






パークには美しい風景を見ながらくつろげる「カナリアカフェ」が併設しており、二人でソフトクリームを食べながらひと息ついた。

午後3時半。

路線バスを利用しフェリーターミナルへと戻り、利尻島へ渡るべく「鴛泊(おしどまり)」港行きの乗船券を購入する。
少し名残惜しいが礼文島とはここでお別れだ。
礼文島から利尻島までは直線距離で約20キロ、フェリーで40分ほど。利尻富士をバックに、乗船する「ボレアース宗谷」が入港する。


午後5時10分、フェリーは利尻島の「鴛泊」港へ。
船が方向転換して接岸するので、間近の利尻富士と豊かな自然をぐるりと窓から望むことができ、気分が高まった。
いよいよ(個人的に)一番楽しみにしていた利尻島に上陸だ。

この日はフェリーターミナルのロビーで、2日間お世話になる旅館のオーナーと待ち合わせをしていた。
電話でお話しした時から人の良さが出ていたオーナーは思ったよりも若いおじさんだった。あいさつもそこそこに、車で宿まで送っていただく。

利尻島は標高1721メートルの利尻富士を囲むように、道道がぐるりと一周している。
港から最も離れた島の南部「仙法志(せんほうし)」で宿を営むおじさんは漁師が本業で、宿ではご自身で採った海の幸を提供している。


「仙法志」の集落の中にある小さな宿に到着し、さっそく夕食。お料理はオーナーの奥様の手作りのようだ。
この日はニシンがメインの海鮮メニューで、この旅で食べたいと思っていた前浜産の新鮮なウニがたっぷり付いているのがありがたかった。あまりの甘さに友人と二人で変な声が出た。
一般家庭の食卓のような食堂スペースで、徐々に薄暗くなってゆく利尻富士を見上げながらの夕食は大変贅沢であった。
宿のすぐ裏は海なので、部屋の窓からは海が一望。静かな夕暮れのひと時を堪能できた。




日没後は道中で買い込んだ酒を片手に部屋での宴を楽しみ、午後10時、星を見るために散歩に出てみた。
利尻島の夜空がこれまた凄かった。

車や人通りが全くなく、波ひとつ無い海沿いの道は驚くほど静かだった。
漆黒の波打ち際から空を眺めると、満天の星空の中にうっすらと天の川らしきものが見え、時おり流れ星が確認できる。
たまらず二人で道路に寝っ転がり、時を忘れて星空観察を楽しんだ。

流れ星は7~8回は見ることができたのではないだろうか。
この時の夜空は、間違いなく今まで生きてきた中で一番の見応えだった。
一生忘れないであろう最高の思い出がまた増えた。

続く。
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北の島旅 礼文・利尻島へ(その1)

2023-04-27 00:16:53 | 北海道内の旅行・風景
2022年夏。

北海道全域制覇を目指す友人が「礼文島、利尻島に一緒に行かないか?」と誘ってくれた。
道北地方の稚内から西方に60キロほど、日本海上に隣接して浮かぶ二つの島は、どちらも一度行ってみたいと思っていた場所だ。
苫小牧から稚内までがまず遠いうえ、そこから船で約2時間というアクセスの難しさ。この機会を逃してはいつの訪問になるか分からない。
喜んでお誘いに乗る事にした。

二つの島を存分に満喫するため、二人で話し合って2泊3日のプランを作成した。
前日夜に札幌に集合し、夜行バスで稚内へ。
稚内からの早朝のフェリーでまず礼文島へ渡り、約半日の観光後、夕方に利尻島へ移動し一泊。
翌日は利尻島一周を楽しんでもう一泊した後、のんびり稚内→札幌へ帰る行程だ。

島内のレンタカーや吟味した島宿など予約もバッチリなのだが、どうやら北海道へ大型の台風が近づいているらしく、初日は晴れ予報だが2、3日目がやや不安定。
道北地方なので影響はそれほど無いと思いたいが、フェリーの運航に影響が出る可能性がある。
島に軟禁されるのは嫌だなぁ、と多少の心配が残るなか、出発日を迎えた。

2022年9月3日


仕事終わりに苫小牧市内からバスに飛び乗り、札幌中心部へ。
夕食をそれぞれ済ませた後、大通バスセンターに集合し午後11時発の夜行バス「高速わっかない号」に乗車する。
カーテン付きの独立した座席のタイプは初めてなので気分が高まる。
終点の稚内フェリーターミナル着は翌朝5時30分だ。


完全に消灯された車内でいまいちよく眠れないまま、午前4時半に目を覚ますと、バスは朝もやのサロベツ原野を走行している最中だった。
空が白み始め、カーテンの隙間から静かな車内を照らしていく光景は、何やら大陸の長距離バスを想起させ幻想的ですらあった。
そしてバスはほぼ定刻通り、快晴の稚内港のバスターミナルへ到着した。


稚内フェリーターミナルからは礼文島の香深(かふか)港、利尻島の鴛泊(おしどまり)港へそれぞれ向かうフェリーが1日4~6本出ている。
我々がまず乗船するのは午前6時40分発の香深港行きだ。
すでにハートランドフェリーの「アマポーラ宗谷」が朝日の下で待機していた。


定員500人ほどの船体は思ったよりも立派。1等ラウンジ、1等和室、2等指定席、2等席とランクがあり、我々は最も安い片道3000円ほどの2等席。
苫小牧~青森航路でも体験した事のある雑魚寝席だ。乗客の姿はそれなりにといったところか。

船は大きなエンジン音と共に定刻通りに出港し、予想以上のスピードで稚内港を後にした。

礼文島の香深港へは午前8時半着。まだ波が穏やかな本日は揺れもほぼ無く快適だ。
船内探索や大海原の風景などあらかた楽しんだ後、バスでいまいち眠れなかった分しっかりと仮眠した。



仮眠から目覚め、友人が「外出てみな。すごいよ」と言うので甲板に出てみると、大海原に浮かぶ利尻島の利尻富士(標高1721メートル)が近づいてきていた。
冠雪した時の美しい姿がお気に入りで、二島のうち特に利尻島に行ってみたかったのはこの山を間近で見たかったからというのもある。
時期的にさすがに雪は積もっていないが、本土からは見ることができない風景が見られるのが非常に楽しみだ。


午前8時半、フェリーは香深港へ到着し、いよいよ礼文島へ初上陸となった。
すぐに折り返しの船への積み込みが始まるので、半ば急かされる形で船外へ。

乗船していた客は迎えに来ていた旅館の送迎車やツアーのバスに消えていく。
小さい島なのに、本土でもあまりお目にかかれない2階建てバスがいたことに2人で驚いた。
私も友人も共に車好きであるため、島内の車事情には興味津々である。


フェリーターミナルを中心として、旅館や土産物店、食事処、レンタカー会社などがあり、恐らく島内で最も栄えている場所であろう。

さて、南北29キロ、東西8キロほどの礼文島。
自然豊かな島内にはいくつか景勝地があり、周遊する手段として一時レンタル「バイク」も案に上がった。
男2人で原付、「水曜どうでしょう」みがあって良いかもしれないなぁと思ったのだが、共に原付が未経験で、事前調査で未経験者には貸し出されていないことが発覚した。
島料金でかなり割高なのだが、ここは大人しく普通車のレンタカーを使用する。
ちなみに料金は3時間利用で1万円ほど……。


午前9時、ターミナル向かいの小さなレンタカー屋で予約していた車両(日産ノート)を受け取る。
まずは友人の運転で、島内を南北につなぐ海沿いの道道40号線を北上。最北限の「スコトン岬」を目指す。

車通りもまばらな道路は片側1車線なものの思ったよりも立派で、積丹半島の国道229号に少し雰囲気が似ている。
離島を運転できたという満足感で、友人からは笑みがこぼれていた。


道中は香深、船泊と小さな集落を通り過ぎるのだが、すべてが初体験の我々は隅から隅まで興味深く探索する。
集落の中心部に雑貨店を見つけお邪魔すると、年季の入った玩具類がデットストックで売っており2人で歓喜。島内での「収穫」とした。






友人が小さなスーパーで飲み物を買っている時、丘の上に「タコ滑り台」のようなものを見つけ、私のわがままで寄り道してもらう。
小高い場所にある公園は海水浴場が併設しており、「スコトン岬」方面や美しい水色の船泊湾が一望できた。
そしてやはり「タコ」がいた。


あまり見かけた事のない新しそうなタコ滑り台だが、島だけに「固有種」だろうか。
澄んだ風が気持ち良い。


午前10時半、島の最北限「スコトン岬」の駐車場に到着した。
小高くなった草原には土産物店やカフェがあり、観光客らでにぎわっていた。


細く伸びる遊歩道を歩き「スコトン岬」先端に。なんと美しい群青だこと!
北緯45度30分14秒、海の向こうにトドが訪れるという無人島の「トド島」を見ることができる。
遠くサハリンも望めるが、日本最北端の稚内宗谷岬の北緯45度31分22秒に比べて若干南に位置している。
不思議な地名はアイヌ語で「大きな谷にある入り江」という意味なのだそうだ。

2人で記念写真を撮ってから、第二の目的地「澄海岬」へ向けて出発した。

続く。
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2022 日本最東端・根室納沙布岬へ(後編)

2023-04-20 23:57:49 | 北海道内の旅行・風景

午後6時半。
根室名物「エスカロップ」を堪能して飲食店を出ると、日没とともに霧が立ち込めはじめ、だいぶ薄暗くなっていた。
少し市内を走るも見通しは悪くなる一方で、霧がさほど珍しくない苫小牧市民の私でも体験したことの無いほどの濃霧だ。さすが最果ての町。


漁業などでロシア船舶の出入りが頻繁にある根室の町。
至る所にロシア語表記の看板がある。

本日も車中泊の予定であるため、閑静かつ迷惑にならなさそうな駐車場を探して市内を徘徊。
郊外の公園に目星をつけて向かうも、街灯が無く真っ暗。濃霧も相まって不気味な事この上ない。
ひとまず花咲港方面へ行ってみることにした。




ひと気が全く無く、しんと静まり返った港にもロシア語表記の看板があちこちに。
国境を飛び越えてしまったかのような光景が広がっていた。

いまいち良い車中泊スポットが見つからないまま、結局、この日は港近くのコンビニ駐車場の隅で力尽き、そのまま眠りに落ちてしまった。


2022年5月23日


さて、最終日である。
午前7時ごろ起床し、場所をお借りしたコンビニで朝食を買い込んだ後、根室市役所を軽く見物に向かう。
建物の上部に掲げられた「北方領土は日本の領土」(ロシア語付き)という看板が楽しみだったのだが、残念ながら撤去されていた。


さて、いよいよ日本最東端の納沙布岬を目指す。
起床した時はうっすら晴れ間が見えていたのだが、海沿いの根室半島線(道道35号)へ入るとやはり濃霧が。今回の旅は常に暗闇と濃霧に悩まされている気がする。

わずかな集落と岬へ向かう一本道であるため、車通りはほとんどない。
だだっ広い草原で草をはむエゾシカの群れが霧に浮かび上がり、幻想的な光景だった。


そして、午前8時50分ごろ、ついに納沙布岬の駐車場へと到着した。


こちらは北方領土返還祈念の碑「四島の架け橋」。
北方領土を表す4つのブロックが繋がって架け橋になっているデザインなのだそうだ。
中央部には、日本最南端の沖縄県・波照間島から運ばれた「祈りの火」がともされている。
なお、近年は度重なる落書きのいたずらがニュースにもなった。


午前9時、ついに納沙布岬の展望台に到着した。
せっかくなので、持参した北方領土のキャラクター・エトピリカの「エリオくん」と記念撮影する。
前の愛車と同じ名前で縁を感じ、ツイッターの抽選プレゼントに応募したところ見事当選した非売品だ。
里帰りさせてあげられて良かったと思う。


北緯43度23分07秒、東経145度49分01秒。
日本で一番早く朝日が見られる場所だ。
天気の良い日は北方四島の国後島、歯舞群島が見えるらしいが、残念ながら見えず。


左は岬にあった「カニトイレ」。根室特産の花咲ガニをイメージしていると説明書きがあり、確かによく見ると脚やツメ、目などが再現されている。右はみやげ物店にあった花咲ガニのオブジェ。
また、道路を挟んだ向こうには地上96メートルの円形展望台「オーロラタワー」が建っているが、廃墟状態?で荒れており、無人。
展望台部分は低い雲で霞んでいた。


岬にある「根室市北方領土資料館」を見物(入館無料)。
戦前の北方四島の暮らしが写真、パネル等で解説されている。
島民が使っていた食器類など日用品の実物展示や、ドキュメンタリー映像なども。
なお、こちらの施設では「(日本本土四極)最東端証明書」の交付を受けることができ、私もしっかり頂いた。


隣接して北方領土問題啓発が目的の「北方館」があり、こちらも見物(入館無料)。
年季の入ったガランとした建物内には展望室や資料展示のほか、著名運動を呼びかけるコーナーなどもあり、やや緊張感が漂っていた。
なお、こちらの施設では、カード状の「北方領土視察証明書」がもらえる。


岬周辺の観光後、根室半島を時計回りに戻る形で海沿いを走る。
珸瑤瑁(ごようまい)、歯舞、沖根婦と独特な地名の集落(本州民は読めない?)を通り過ぎ、根室市街地に戻る直前。
浜辺に建つトーチカをポツンと見つけて急停車した。




今まで走ってきた歯舞からの約30キロ区間は、戦時中はソ連軍の格好の上陸場所として危惧され、多数のトーチカが建てられたという。
現在も9か所に現存しており、こちらは友知(ともしり)海岸に残る「友知トーチカ」。
根室半島は地形の関係からか防衛には不向きとされ、ここ友知トーチカがいざという時の防衛ラインとされていたらしい。




午後6時。


根室から来た道を延々と戻り、豪雨の天馬街道を越えてようやく浦河へ。
「うらかわ優駿ビレッジAERU」で休憩とする。
日帰り温泉は思ったより小ぶりで、少し残念。そして浦河のソウルフードという「かつめし」を初体験。
卵やソースを使わず、刻みのり、青のり、醤油ベースのタレが特徴のあっさり系カツ丼で新鮮な味わい。これは知らなかった。


終始どんよりした空模様の旅だったが、今回については逆に旅情を掻き立てられたので良しとするか。
……とは言っても、まだ浦河なんだよな。ここから苫小牧までが延々に長いのである……。

2022 日本最東端・根室納沙布岬へ
完。
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2022 日本最東端・根室納沙布岬へ(前編)

2023-04-16 16:57:32 | 北海道内の旅行・風景
2022年5月21日

日本最東端の根室・納沙布岬へ行こうと思い立った。
道央圏からはあまりにも離れているため、道民である私でも未だに訪れた事のない土地だ。
かつては「せっかくなので自転車で踏破したい」と考えていたので今日の今日まで取り置いていたのだが、自転車に乗る気力・体力が年々減退しており一生不可能だと判断。さっさと自家用車で行く事にした。

日本四端制覇を生涯の目標としており、今回は重要な旅になると勇んで出発する。


仕事終わりに苫小牧を出発、日高道を南下し静内に到着。
実はこの日は私の29歳の誕生日であった。せっかくなので自分へご褒美を……と夕食は贅沢することに。


海沿いの町なので海鮮を。良さげな「回らない寿司屋」を見つけ、特上寿司を頂く。
もっと高級なメニューもあったのだが、一食に3000円以上は出せなかった。
こんな日でも私はケチだ。


夕食後、日の沈んだ海沿いの国道をさらに南下。
午後10時ごろ、少し外れた浦河町の「オバケ川」を再訪するも、街灯もなく真っ暗で何も見えず。
本当にオバケが出そうだった。
その後内陸の天馬街道を超えて広尾方面へ抜けるのだが、分岐点付近のコンビニに到着したのは午後10時半過ぎ。動物飛び出しのリスクがあるため少し躊躇しつつ、速度控えめで挑む。

道中はトラック1台しか見かけず。
沿道には深い闇の森が延々と広がり孤独な時間が続くが、このような時間は幽霊よりも野生動物が怖い。

真っ暗闇に加え、途中から不気味な濃霧が立ち込め、広尾~豊頃~浦幌まで続いた。
さすがに疲れたので深夜に辿り着いた浦幌の道の駅で車中泊とした。

2022年5月22日


さて、夜が明けてこの日が1日目。
曇天のなか朝の釧路市に到着し、リサイクルショップめぐりやインデアン(カレー)などを楽しみ午前中は息抜き。
そして午後1時、以前から行きたいと思っていた浜中町の涙岬に立ち寄る
(当ブログ初登場?の愛車SX4セダン)。


案内看板は立っているが知る人ぞ知る景勝地のようで、草原にまっすぐ続く散策路には誰もおらず。
まずは「立岩」方向へ行ってみる。

何もないけもの道を数分歩くと、展望ポイントへと到着した。



中々の絶壁で足がすくむ。
残念ながら海霧で霞んでいるが、ポツンと立っているのが「立岩」。
岩の周りを優雅にカモメが飛んでいるのが見えた。


しばし景観を楽しんだ後、いよいよお目当ての「涙岬」方向へ進む。
断崖の上のわずかな平坦地を縫うようにして遊歩道が延びている。
それにしても静かな場所だ。





こちらも数分歩いた突き当りに、見晴らしの良い展望台が。
岩がトンネル状になっているあの飛び出た部分が涙岬のようだ。絶景である。

この地には古老に伝わる悲しい伝説がある。
厚岸の若い漁師と霧多布の網本の娘が恋に落ちたものの、漁師は嵐の日にこの場所で遭難。
娘は岬に立ち、海の底に消えた漁師の名をいつまでも叫んだ。

断崖には悲しげな女の横顔が浮かび、先ほどの立岩は岸に辿り着こうとする漁師を思わせる……というお話。

涙岬というどことなく悲しげな地名の由来が分かった。


海沿いの集落をのんびり回りながら、午後3時半に同町の霧多布岬に到着した。
霧多布半島の突端で、年を通してラッコが見られるらしく、この日は海にポツンと浮かぶ生き物に向けて立派なカメラを構える先客がいた。
残念ながらあまりにも離れた崖下だったため、ラッコか否かは分からなかった。


霧多布湿原が広がる浜中町。湾に流れ込む広大な琵琶瀬川に面して集落が広がり、今まで見た事の無い北海道の風景が続く。
果てまで来たと実感させてくれる。


ついに根室市へ入り、午後5時ごろ市街地へ到着した。
人影もまばらな駅前通りには北方領土に面した街らしく、主張の強いモニュメントが存在感を放つ。


根室駅前で愛車と記念撮影し、せっかくなので隣駅の「日本最東端の駅」で有名な東根室駅へ立ち寄る。
こちらもずっと来たかった場所だが、周囲に団地が広がる小さな無人駅で、看板が無ければ旅情はそれほど感じられなかった。


根室名物が食べたくなり、夕食は駅前にある良い雰囲気の飲食店で「”元祖”エスカロップ」を頂く。
バターライスの上にポークカツを載せ、ドミグラスソースをかけたご当地料理。美味であった。

満足し店を出ると、次第に霧が濃くなってきた。
さて、今夜はどこへ泊まろうか。

続く。
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