ホルマリンのマンネリ感

札幌出身苫小牧在住、ホルマリンです。怪しいスポット訪問、廃墟潜入、道内ミステリー情報、一人旅、昭和レトロなどなど…。

北の島旅 礼文・利尻島へ(その1)

2023-04-27 00:16:53 | 北海道内の旅行・風景
2022年夏。

北海道全域制覇を目指す友人が「礼文島、利尻島に一緒に行かないか?」と誘ってくれた。
道北地方の稚内から西方に60キロほど、日本海上に隣接して浮かぶ二つの島は、どちらも一度行ってみたいと思っていた場所だ。
苫小牧から稚内までがまず遠いうえ、そこから船で約2時間というアクセスの難しさ。この機会を逃してはいつの訪問になるか分からない。
喜んでお誘いに乗る事にした。

二つの島を存分に満喫するため、二人で話し合って2泊3日のプランを作成した。
前日夜に札幌に集合し、夜行バスで稚内へ。
稚内からの早朝のフェリーでまず礼文島へ渡り、約半日の観光後、夕方に利尻島へ移動し一泊。
翌日は利尻島一周を楽しんでもう一泊した後、のんびり稚内→札幌へ帰る行程だ。

島内のレンタカーや吟味した島宿など予約もバッチリなのだが、どうやら北海道へ大型の台風が近づいているらしく、初日は晴れ予報だが2、3日目がやや不安定。
道北地方なので影響はそれほど無いと思いたいが、フェリーの運航に影響が出る可能性がある。
島に軟禁されるのは嫌だなぁ、と多少の心配が残るなか、出発日を迎えた。

2022年9月3日


仕事終わりに苫小牧市内からバスに飛び乗り、札幌中心部へ。
夕食をそれぞれ済ませた後、大通バスセンターに集合し午後11時発の夜行バス「高速わっかない号」に乗車する。
カーテン付きの独立した座席のタイプは初めてなので気分が高まる。
終点の稚内フェリーターミナル着は翌朝5時30分だ。


完全に消灯された車内でいまいちよく眠れないまま、午前4時半に目を覚ますと、バスは朝もやのサロベツ原野を走行している最中だった。
空が白み始め、カーテンの隙間から静かな車内を照らしていく光景は、何やら大陸の長距離バスを想起させ幻想的ですらあった。
そしてバスはほぼ定刻通り、快晴の稚内港のバスターミナルへ到着した。


稚内フェリーターミナルからは礼文島の香深(かふか)港、利尻島の鴛泊(おしどまり)港へそれぞれ向かうフェリーが1日4~6本出ている。
我々がまず乗船するのは午前6時40分発の香深港行きだ。
すでにハートランドフェリーの「アマポーラ宗谷」が朝日の下で待機していた。


定員500人ほどの船体は思ったよりも立派。1等ラウンジ、1等和室、2等指定席、2等席とランクがあり、我々は最も安い片道3000円ほどの2等席。
苫小牧~青森航路でも体験した事のある雑魚寝席だ。乗客の姿はそれなりにといったところか。

船は大きなエンジン音と共に定刻通りに出港し、予想以上のスピードで稚内港を後にした。

礼文島の香深港へは午前8時半着。まだ波が穏やかな本日は揺れもほぼ無く快適だ。
船内探索や大海原の風景などあらかた楽しんだ後、バスでいまいち眠れなかった分しっかりと仮眠した。



仮眠から目覚め、友人が「外出てみな。すごいよ」と言うので甲板に出てみると、大海原に浮かぶ利尻島の利尻富士(標高1721メートル)が近づいてきていた。
冠雪した時の美しい姿がお気に入りで、二島のうち特に利尻島に行ってみたかったのはこの山を間近で見たかったからというのもある。
時期的にさすがに雪は積もっていないが、本土からは見ることができない風景が見られるのが非常に楽しみだ。


午前8時半、フェリーは香深港へ到着し、いよいよ礼文島へ初上陸となった。
すぐに折り返しの船への積み込みが始まるので、半ば急かされる形で船外へ。

乗船していた客は迎えに来ていた旅館の送迎車やツアーのバスに消えていく。
小さい島なのに、本土でもあまりお目にかかれない2階建てバスがいたことに2人で驚いた。
私も友人も共に車好きであるため、島内の車事情には興味津々である。


フェリーターミナルを中心として、旅館や土産物店、食事処、レンタカー会社などがあり、恐らく島内で最も栄えている場所であろう。

さて、南北29キロ、東西8キロほどの礼文島。
自然豊かな島内にはいくつか景勝地があり、周遊する手段として一時レンタル「バイク」も案に上がった。
男2人で原付、「水曜どうでしょう」みがあって良いかもしれないなぁと思ったのだが、共に原付が未経験で、事前調査で未経験者には貸し出されていないことが発覚した。
島料金でかなり割高なのだが、ここは大人しく普通車のレンタカーを使用する。
ちなみに料金は3時間利用で1万円ほど……。


午前9時、ターミナル向かいの小さなレンタカー屋で予約していた車両(日産ノート)を受け取る。
まずは友人の運転で、島内を南北につなぐ海沿いの道道40号線を北上。最北限の「スコトン岬」を目指す。

車通りもまばらな道路は片側1車線なものの思ったよりも立派で、積丹半島の国道229号に少し雰囲気が似ている。
離島を運転できたという満足感で、友人からは笑みがこぼれていた。


道中は香深、船泊と小さな集落を通り過ぎるのだが、すべてが初体験の我々は隅から隅まで興味深く探索する。
集落の中心部に雑貨店を見つけお邪魔すると、年季の入った玩具類がデットストックで売っており2人で歓喜。島内での「収穫」とした。






友人が小さなスーパーで飲み物を買っている時、丘の上に「タコ滑り台」のようなものを見つけ、私のわがままで寄り道してもらう。
小高い場所にある公園は海水浴場が併設しており、「スコトン岬」方面や美しい水色の船泊湾が一望できた。
そしてやはり「タコ」がいた。


あまり見かけた事のない新しそうなタコ滑り台だが、島だけに「固有種」だろうか。
澄んだ風が気持ち良い。


午前10時半、島の最北限「スコトン岬」の駐車場に到着した。
小高くなった草原には土産物店やカフェがあり、観光客らでにぎわっていた。


細く伸びる遊歩道を歩き「スコトン岬」先端に。なんと美しい群青だこと!
北緯45度30分14秒、海の向こうにトドが訪れるという無人島の「トド島」を見ることができる。
遠くサハリンも望めるが、日本最北端の稚内宗谷岬の北緯45度31分22秒に比べて若干南に位置している。
不思議な地名はアイヌ語で「大きな谷にある入り江」という意味なのだそうだ。

2人で記念写真を撮ってから、第二の目的地「澄海岬」へ向けて出発した。

続く。
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2022 日本最東端・根室納沙布岬へ(後編)

2023-04-20 23:57:49 | 北海道内の旅行・風景

午後6時半。
根室名物「エスカロップ」を堪能して飲食店を出ると、日没とともに霧が立ち込めはじめ、だいぶ薄暗くなっていた。
少し市内を走るも見通しは悪くなる一方で、霧がさほど珍しくない苫小牧市民の私でも体験したことの無いほどの濃霧だ。さすが最果ての町。


漁業などでロシア船舶の出入りが頻繁にある根室の町。
至る所にロシア語表記の看板がある。

本日も車中泊の予定であるため、閑静かつ迷惑にならなさそうな駐車場を探して市内を徘徊。
郊外の公園に目星をつけて向かうも、街灯が無く真っ暗。濃霧も相まって不気味な事この上ない。
ひとまず花咲港方面へ行ってみることにした。




ひと気が全く無く、しんと静まり返った港にもロシア語表記の看板があちこちに。
国境を飛び越えてしまったかのような光景が広がっていた。

いまいち良い車中泊スポットが見つからないまま、結局、この日は港近くのコンビニ駐車場の隅で力尽き、そのまま眠りに落ちてしまった。


2022年5月23日


さて、最終日である。
午前7時ごろ起床し、場所をお借りしたコンビニで朝食を買い込んだ後、根室市役所を軽く見物に向かう。
建物の上部に掲げられた「北方領土は日本の領土」(ロシア語付き)という看板が楽しみだったのだが、残念ながら撤去されていた。


さて、いよいよ日本最東端の納沙布岬を目指す。
起床した時はうっすら晴れ間が見えていたのだが、海沿いの根室半島線(道道35号)へ入るとやはり濃霧が。今回の旅は常に暗闇と濃霧に悩まされている気がする。

わずかな集落と岬へ向かう一本道であるため、車通りはほとんどない。
だだっ広い草原で草をはむエゾシカの群れが霧に浮かび上がり、幻想的な光景だった。


そして、午前8時50分ごろ、ついに納沙布岬の駐車場へと到着した。


こちらは北方領土返還祈念の碑「四島の架け橋」。
北方領土を表す4つのブロックが繋がって架け橋になっているデザインなのだそうだ。
中央部には、日本最南端の沖縄県・波照間島から運ばれた「祈りの火」がともされている。
なお、近年は度重なる落書きのいたずらがニュースにもなった。


午前9時、ついに納沙布岬の展望台に到着した。
せっかくなので、持参した北方領土のキャラクター・エトピリカの「エリオくん」と記念撮影する。
前の愛車と同じ名前で縁を感じ、ツイッターの抽選プレゼントに応募したところ見事当選した非売品だ。
里帰りさせてあげられて良かったと思う。


北緯43度23分07秒、東経145度49分01秒。
日本で一番早く朝日が見られる場所だ。
天気の良い日は北方四島の国後島、歯舞群島が見えるらしいが、残念ながら見えず。


左は岬にあった「カニトイレ」。根室特産の花咲ガニをイメージしていると説明書きがあり、確かによく見ると脚やツメ、目などが再現されている。右はみやげ物店にあった花咲ガニのオブジェ。
また、道路を挟んだ向こうには地上96メートルの円形展望台「オーロラタワー」が建っているが、廃墟状態?で荒れており、無人。
展望台部分は低い雲で霞んでいた。


岬にある「根室市北方領土資料館」を見物(入館無料)。
戦前の北方四島の暮らしが写真、パネル等で解説されている。
島民が使っていた食器類など日用品の実物展示や、ドキュメンタリー映像なども。
なお、こちらの施設では「(日本本土四極)最東端証明書」の交付を受けることができ、私もしっかり頂いた。


隣接して北方領土問題啓発が目的の「北方館」があり、こちらも見物(入館無料)。
年季の入ったガランとした建物内には展望室や資料展示のほか、著名運動を呼びかけるコーナーなどもあり、やや緊張感が漂っていた。
なお、こちらの施設では、カード状の「北方領土視察証明書」がもらえる。


岬周辺の観光後、根室半島を時計回りに戻る形で海沿いを走る。
珸瑤瑁(ごようまい)、歯舞、沖根婦と独特な地名の集落(本州民は読めない?)を通り過ぎ、根室市街地に戻る直前。
浜辺に建つトーチカをポツンと見つけて急停車した。




今まで走ってきた歯舞からの約30キロ区間は、戦時中はソ連軍の格好の上陸場所として危惧され、多数のトーチカが建てられたという。
現在も9か所に現存しており、こちらは友知(ともしり)海岸に残る「友知トーチカ」。
根室半島は地形の関係からか防衛には不向きとされ、ここ友知トーチカがいざという時の防衛ラインとされていたらしい。




午後6時。


根室から来た道を延々と戻り、豪雨の天馬街道を越えてようやく浦河へ。
「うらかわ優駿ビレッジAERU」で休憩とする。
日帰り温泉は思ったより小ぶりで、少し残念。そして浦河のソウルフードという「かつめし」を初体験。
卵やソースを使わず、刻みのり、青のり、醤油ベースのタレが特徴のあっさり系カツ丼で新鮮な味わい。これは知らなかった。


終始どんよりした空模様の旅だったが、今回については逆に旅情を掻き立てられたので良しとするか。
……とは言っても、まだ浦河なんだよな。ここから苫小牧までが延々に長いのである……。

2022 日本最東端・根室納沙布岬へ
完。
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2022 日本最東端・根室納沙布岬へ(前編)

2023-04-16 16:57:32 | 北海道内の旅行・風景
2022年5月21日

日本最東端の根室・納沙布岬へ行こうと思い立った。
道央圏からはあまりにも離れているため、道民である私でも未だに訪れた事のない土地だ。
かつては「せっかくなので自転車で踏破したい」と考えていたので今日の今日まで取り置いていたのだが、自転車に乗る気力・体力が年々減退しており一生不可能だと判断。さっさと自家用車で行く事にした。

日本四端制覇を生涯の目標としており、今回は重要な旅になると勇んで出発する。


仕事終わりに苫小牧を出発、日高道を南下し静内に到着。
実はこの日は私の29歳の誕生日であった。せっかくなので自分へご褒美を……と夕食は贅沢することに。


海沿いの町なので海鮮を。良さげな「回らない寿司屋」を見つけ、特上寿司を頂く。
もっと高級なメニューもあったのだが、一食に3000円以上は出せなかった。
こんな日でも私はケチだ。


夕食後、日の沈んだ海沿いの国道をさらに南下。
午後10時ごろ、少し外れた浦河町の「オバケ川」を再訪するも、街灯もなく真っ暗で何も見えず。
本当にオバケが出そうだった。
その後内陸の天馬街道を超えて広尾方面へ抜けるのだが、分岐点付近のコンビニに到着したのは午後10時半過ぎ。動物飛び出しのリスクがあるため少し躊躇しつつ、速度控えめで挑む。

道中はトラック1台しか見かけず。
沿道には深い闇の森が延々と広がり孤独な時間が続くが、このような時間は幽霊よりも野生動物が怖い。

真っ暗闇に加え、途中から不気味な濃霧が立ち込め、広尾~豊頃~浦幌まで続いた。
さすがに疲れたので深夜に辿り着いた浦幌の道の駅で車中泊とした。

2022年5月22日


さて、夜が明けてこの日が1日目。
曇天のなか朝の釧路市に到着し、リサイクルショップめぐりやインデアン(カレー)などを楽しみ午前中は息抜き。
そして午後1時、以前から行きたいと思っていた浜中町の涙岬に立ち寄る
(当ブログ初登場?の愛車SX4セダン)。


案内看板は立っているが知る人ぞ知る景勝地のようで、草原にまっすぐ続く散策路には誰もおらず。
まずは「立岩」方向へ行ってみる。

何もないけもの道を数分歩くと、展望ポイントへと到着した。



中々の絶壁で足がすくむ。
残念ながら海霧で霞んでいるが、ポツンと立っているのが「立岩」。
岩の周りを優雅にカモメが飛んでいるのが見えた。


しばし景観を楽しんだ後、いよいよお目当ての「涙岬」方向へ進む。
断崖の上のわずかな平坦地を縫うようにして遊歩道が延びている。
それにしても静かな場所だ。





こちらも数分歩いた突き当りに、見晴らしの良い展望台が。
岩がトンネル状になっているあの飛び出た部分が涙岬のようだ。絶景である。

この地には古老に伝わる悲しい伝説がある。
厚岸の若い漁師と霧多布の網本の娘が恋に落ちたものの、漁師は嵐の日にこの場所で遭難。
娘は岬に立ち、海の底に消えた漁師の名をいつまでも叫んだ。

断崖には悲しげな女の横顔が浮かび、先ほどの立岩は岸に辿り着こうとする漁師を思わせる……というお話。

涙岬というどことなく悲しげな地名の由来が分かった。


海沿いの集落をのんびり回りながら、午後3時半に同町の霧多布岬に到着した。
霧多布半島の突端で、年を通してラッコが見られるらしく、この日は海にポツンと浮かぶ生き物に向けて立派なカメラを構える先客がいた。
残念ながらあまりにも離れた崖下だったため、ラッコか否かは分からなかった。


霧多布湿原が広がる浜中町。湾に流れ込む広大な琵琶瀬川に面して集落が広がり、今まで見た事の無い北海道の風景が続く。
果てまで来たと実感させてくれる。


ついに根室市へ入り、午後5時ごろ市街地へ到着した。
人影もまばらな駅前通りには北方領土に面した街らしく、主張の強いモニュメントが存在感を放つ。


根室駅前で愛車と記念撮影し、せっかくなので隣駅の「日本最東端の駅」で有名な東根室駅へ立ち寄る。
こちらもずっと来たかった場所だが、周囲に団地が広がる小さな無人駅で、看板が無ければ旅情はそれほど感じられなかった。


根室名物が食べたくなり、夕食は駅前にある良い雰囲気の飲食店で「”元祖”エスカロップ」を頂く。
バターライスの上にポークカツを載せ、ドミグラスソースをかけたご当地料理。美味であった。

満足し店を出ると、次第に霧が濃くなってきた。
さて、今夜はどこへ泊まろうか。

続く。
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