ださいたま 埼玉 彩の国  エッセイ 

埼玉県について新聞、本、雑誌、インターネット、TVで得た情報に基づきできるだけ現場を歩いて書くエッセー風百科事典

上谷の大クス 越生町

2012年07月03日 17時36分29秒 | 盆栽・桜・花・木・緑・動物
上谷の大クス 越生町

「埼玉県一の巨木とは、どんな木なのだろう? 」。

またまた、好奇心に駆られて、12年6月30日(土)、仲間と季節のアジサイ見物を兼ねて出かけた。

「上谷(かみやつ)の大クス」と読むらしい。東武東上線の坂戸駅から越生線に乗り換え、終点の越生駅で下車。バスで十数分の越生梅林で降り、歩いて小一時間。

幹周り15m、樹高30m、太い幹が何本かに枝分かれしている。幹の中に空洞もなく、樹齢千年を感じさせない元気さだ。横への枝と葉の広がりが圧倒的だ。(写真)

1988(昭和63)年度の緑の国勢調査(環境庁)の巨木ランキングで、県内一位、全国で16位のお墨付きを得た。関東甲信越でも1位だという。県の天然記念物に指定されている。

大クスを一回りできるウッドデッキが腐食していたのを、町が腐食しにくい合成材を使って作り直したので、観光客も増えるだろう。

小学生の頃、鹿児島県姶良(あいら)郡蒲生町の八幡神社で、後に同じ調査で「日本一の巨木」と認定された「蒲生(かもう)のクス」を見に行ったことを思い出す。

樹高は同じだが、幹周り24m余。樹齢は推定約1500年。幹の中に大きな空洞(畳八畳分とか)があったのを覚えている。

クスノキは、台湾や中国、ベトナムなど南方の木だ。日本では暖かい西日本に多く、よく神社に植えられている。関東地方の山間部でこんな大木に成長するのは珍しいという。

全国に4万4千社あるという八幡様の総本宮「宇佐神社(八幡宮)」(大分県宇佐市)にも大きなクスノキがあったのが、頭に浮かんだ。

「葉が防虫剤である樟脳の原料」というのが記憶に残っている。埼玉歩きは、自分の過去の記憶をたどる旅でもある。

このクスノキのような「パワースポット」を訪ねるのは今やブームで、歩き仲間の女性たちも柵の外から根元に触れて、霊力を頂いていた。

ここからさらに坂を上り下りして、麦原地区にある「あじさい街道」と「あじさい山公園」に向かう。

近くの案内板を見ると、この公園はかつて、「面積5万6660平方m 1万5千株」あり、「日本一のアジサイ公園」を自負したこともある。

ところが、10年ぐらい前から、花(がく)が葉のように緑色に変わり、下部が衰弱して枯れる「葉化病」が蔓延し始め、園内の三分の二が感染するほどの深刻さだった。

昆虫が媒介するファイトプラズマという細菌が病原で、焼却して、土壌を調整するしか手がないという恐ろしい病気だ。

県の助成を得てここ数年、伐採して新たに植え替える再生事業に取り組んでいるものの、ホンアジサイやガクアジサイなど約8千株しか回復していない。

ちょうど「あじさい祭り」が開かれていた。アジサイが元気を取り戻していないので、なんとなく寂しい。

この公園から越生駅に向かうバス停の麦原入り口までの約3kmは「あじさい街道」と呼ばれる。ここには道の左右に約5千株、地元の人たちの手で植えられてきた。このアジサイは病気の影響を受けず、目を楽しませてくれる。

首都圏でアジサイというと、テレビのおかげで反射的に鎌倉の寺や、箱根登山鉄道を思い出す。それも素晴らしいのだが、「花のまち」越生の山の中にも名所があるのだ。

再生事業の進捗に期待したい。


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