ださいたま 埼玉 彩の国  エッセイ 

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福岡河岸 新河岸川 ふじみ野市

2012年05月04日 16時37分09秒 | 川・水・見沼

福岡河岸 新河岸川 ふじみ野市

海も大きな湖もないものの、県土に占める河川の面積割合は、埼玉県が日本一である。

群馬、茨城の県境を流れる利根川、奥秩父の甲武信ヶ岳中腹から「埼玉県を貫流する母なる川 荒川」の二つの大河。入間川など数多くの川がある埼玉県は「川の国」である。

県では、知事の音頭とりで「川の国 埼玉」を目指して、県民が川に愛着を持ち、ふるさとを実感できるようにと、平成20(2008)年度から4年間、「水辺再生100プラン」を進めてきた。河川70、農業用水30か所である。

その一つ、ふじみ野市の福岡三丁目周辺の新河岸川の岸辺整備が完成、記念式典が開かれるというので、12年4月29日(日)に出かけてみた。

新河岸川には思い入れがある。現役時代、川の浄化の問題を追っかけていた。不老川などに通っているうち、見たこともないこの川への興味が募っていた。

汚い話で恐縮だが、川越からサツマイモを、江戸から肥料としてのし尿を、運んだこの川には、小さな頃百姓として小さな畑を耕し、肥え桶を担ぎ、二輪の荷車で運んだ最後の世代として、親近感があったからである。

新河岸川は、川越市の伊佐沼から荒川と並行して流れ、現在の和光市の下新倉で荒川に合流するまでの約32kmの短い川だった。

しかし、舟運では川越から東京・浅草の花川戸まで約120km、川越地方と江戸(東京)を結んだ。

江戸時代初期の17世紀半ば、当時の川越藩主の松平信綱が整備し、昭和初期まで約300年間、輸送路として重要な役割を果たした。

川幅は、水量保持のため蛇行しているので、一様でなく、約23~150m、水深は約90cm~4.5mだった。

帆を広げた高瀬船の写真が残っているので、今とは違って、これくらいの幅があったのだろう。

船荷は、浅草への「下り」には、サツマイモなどの農産物、木材、薪、炭など、川越方面への上りには、肥料用の灰、干鰯、鳥糞、瀬戸物、金物、荒物、酒、酢、砂糖、塩、干物などだった。

上りには「空き俵」もあった。米産地から東京に出荷された米俵が、サツマイモを詰めるために必要だったからである。

上りの肥料用のし尿(下肥)は、「肥舟(こえぶね)」で運ばれた。「下肥を満載して上ってくる場合、上流に行くほど下肥が水で薄められ、水増しされていることあった」というから笑える。

船便は貨物だけではなく、乗客を運ぶ「早舟」と呼ばれる屋形船の定期便もあった。川越を夕方出発し翌朝に千住、昼に浅草花川戸に到着する夜行の「川越夜船」もあった。「飛切船」という超特急もあった。

サツマイモや野菜を運ぶ便は、秋から冬、雁が来る季節に運行するので「雁舟」と呼ばれた。なんと風流な名前ではないか。

新河岸川には、上・下新河岸などの始発の「川越五河岸」を初め、20数か所の河岸場(船着場)があった。その中で、舟運の中期から後期にかけて、川舟が一番多かったのは、この日記念式典のあった「福岡河岸」だったようだ。

ここに集荷が集まり、3軒の回漕問屋があった。その中で江戸後期から明治後期まで隆盛を極めたのが、「福田屋」である。

十数棟あったうち残った主(母)屋、帳場、台所、文庫蔵、それに木造三階建ての見ものの「離れ」が市に寄贈され、「福岡河岸記念館」になっている。(写真)

「離れ」は1900(明治33)年頃、福田屋十代の星野仙蔵が接客用に建てた。3階まで通し柱が使われ、1923(大正12)年の大正大震災にも耐えた。仙蔵の心意気が伝わってくる建物である。

仙蔵は、文化人で、衆議院議員にも選ばれ、さらに剣術「神道無念流」の免許を持ち、剣道場の館長も務めた。特別公開されていたので、三階まで急な階段を上る。晴れた日には富士山、筑波山、それに東京スカイツリーも見えるという。一回、月見にも来てみたいものだ。

川はまだ、白くにごっているのが残念だ。近くの「養老橋」の下には船着場も造られた。川沿いには、斜面林沿いに木製チップを敷いた全長900mの遊歩道もできた。木を見、雑草を眺めながら、往復して、昔の新河岸川の雰囲気を十分堪能した。

県では12年度から、川筋ごとに複数の自治体ぐるみで河川環境改善を図る「川のまるごと再生プロジェクト」を、大落古利根川(杉戸、宮代、松伏町、春日部市)など10河川を対象にして始める。10月にも着工するという。期待したい。

(この原稿は主に、記念館でもらった資料、「上福岡市立歴史民俗資料館」の「新河岸川舟運の川舟とその周辺」(2004年)による。)
















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