巨大な“地下神殿” 首都圏外郭放水路 春日部市
「川の県」と自称する埼玉には、さまざまな河川関係の地上施設がある。地下空間にも春日部市には、国交省江戸川河川事務所が管理する“地下神殿”と呼ばれる貯水・排水能力が世界最大級の巨大な地下排水路がある。
同省では春日部市とともに、公募で選んだ提携事業者の東部トップツアーズを交え、防災施設では日本初という民間運営による見学システムを導入、月間受け入れを拡大しようと実験を始めている。社会資本を観光に活用しようとする「インフラツーリズム」である。観光地の少ない県の新たな観光スポットだ。
「首都圏外郭放水路」――。周辺の中川、大落古利根川などの5つの中小河川で洪水が起きると、あふれた水を最大で内径30m、深さ70mの5ヶ所の立坑から取り込み、巨大な水勢を弱める調圧水槽(写真)にため、国道16号の地下50mに掘られた直径約10mの全長6.3kmの水を流していくトンネル(地下の人工河川)を通じて、水を排出するポンプ施設で川幅が広い江戸川に排出する。排水用の巨大な羽根車「インペラ」は直径3.7m、重さ約35tある。
地下放水路全体で、東京ドームの半分の約67万立方mをためることができる。19年10月の首都圏などを襲った巨大な台風19号では、12~15日までに稼働以来3番目の約1150万立方mを排出、周辺の中川・綾瀬川流域を水害から守った。
首都圏の洪水を防ぐのが主目的で、2300億円を投じて13年かけ、06年に完成した。浸水に悩まされていた周辺地区の被害は大幅に軽減された。
圧巻は、江戸川に最も近くポンプの手前にある「調圧水槽」と呼ばれる庄和排水機場下の巨大空間である。トンネルを流れてきた水の勢いを弱め、江戸川へスムーズに流し込むため、地下約22mに造られた長さ177m,幅78m,高さ18mの巨大な水槽である。広さはほぼサッカー場2面分ある。ポンプ運転に必要な水量の確保と逆流の水圧を調整するのが役割だ。
116段の階段を下りたこの巨大水槽が“地下神殿”と呼ばれる。59本の高さ18m、幅78m、重量500tの支えの円柱が林立する光景は、荘厳な雰囲気を漂わせているので、この名がある。(写真)
「アテネのパルテノン神殿のようだ」という人が多い。エジプトに3年余いた経験からすると、むしろルクソール宮殿を思わせる。ルクソールには直径3.6m、高さ21mの巨大な石柱12本が立つ。パルテノンは高さ約10m。
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