契沖
○参議雅経
みよしのゝ山の秋風さよ更けて古郷さむく衣うつなり
新古今集秋下擣衣の心をと有。此ふるさとは
吉野ゝ里なり。よしのをふる郷とよめるは古今
集に
ふる郷は吉野ゝ山し近けれはひと日もみゆきふらぬ日はなし
躬恒が長哥にもふるさとのよしのゝ山の山あら
しもとよめり。昔吉野離宮とて皇居のあり
し所なれば後〃行幸絶てより故郷とはよめる也。
追考よしのを故郷とよめる事は日本紀第二
十六斉明帝元年冬災飛鳥板蓋宮二年於飛
鳥岡本更定宮地号曰後飛鳥岡本宮又作吉
野宮と有。此事により皇都によみならはするなるべし。