藤裏葉
やう/\夜更行ほどに、いたうそらなやみして、
みだり心ちいとたへがたうて、まかでん空もほと/ヾしうこそ侍ぬべけれ。とのいどころゆづり給てんやと、中將にうれへ給。おとゞ朝臣や、御やすみ所もとめよ。おきないたうゑひすゝみてむらいなれば、まかりいりぬといひすてていり給ぬ。中將はなのかげの旅ねよ。いかにぞや、くるしきしるべにぞ侍やといへば
松にちぎれるはあだなる花かは。ゆゝしや
とせめ給。
巻ニ 春歌下
藤の松にかかれるをよめる 紀貫之
みどりなる松にかかれる藤なれどおのが頃とぞ花は咲きける
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