そでにみだるゝよと、納得したる哥なり。
詩も折梅花挿頭とある故に、越てといふ
にて、頭にさす事をあひしらひ、二月の雪
と花を詩にもいひたれば、匂ふ雪といひ
て花の事にしてあひしらへる作なり。
句題かく心をまはしてよむものなりとぞ。
一 題しらず 西行法師
一 とめこかし梅さかり成やどはうときも人はおりにこそよれ
増抄云。こひこかしと云本もあり。とめこかし
とは、匂ひにて求め來かしとなり。とひはとぶら
ひ來かし也。うときも人は折にこそよれ
とは、見人家花あれば即入る。貴賤と親疎
とを論ぜずとあれば、うとき人も花を折に
くるほどに、まして親きはとめこかしと也。
又説には、詩にもかゝれば、うときあたりしたし
きをえらびぬるは、折ふしにこそよる事
なれ、花の時分はくるしからぬに、人は遠慮
してこぬ事かな。遠慮するも折節
による事にてあるにとなり。
頭注
花まだしき中は
人をまつもゆるか
せなりしがさかりに
成て待心切に成
しよしなり。
さてもこれをとは
ぬことかなとなげ
くよしなり。
※こひこかしと云本もあり 不明
※見人家花あれば即入る
和漢朗詠集 花 尋春題諸家園林 白居易
遙見人家花便入不論貴賤与親疎
遙に人家を見て花あれば便ち入、貴賤と親疎とを論ぜず