行き暮れて
(神戸市胴塚 忠度墳) 花や (神戸市腕塚 忠度位牌) あるじならまし (埼玉県深谷市 清心寺 忠度五輪塔) 忠度通盛等最後事 今は忠度一人に成給たりけるを、忠澄馳並て引組で落、六弥太上に成。忠度は赤木の管に、銀の筒金巻たる刀を抜儲て座しければ、六弥太を三刀までぞ突給ふ。馬の上にて一刀、落ざまに一刀、落付て一刀、隙あり共見えず。一二の刀は鎧の上を突給へば手も負ず、三の刀に胸板を突はしらかし。頷の下片頬加へにつと突貫、忠澄既にと見えければ、郎等落合て、薩摩守をみしと切、射鞴を以て合せ給たりければ、妻手の腕射鞴加に打落さる。 (神戸市長田区腕塚) 忠度今は叶はじと思召ければ、上なる六弥太を持興て片手に提、こゝのけ、念仏申て死なんとて抛給へば、弓長二長ばかり抛られて、忠澄とゝ走て安堵せず。 其間に忠度は鎧の上帯切、物具脱捨て端座して西に向、念仏高声に唱へ給ふ。其後忠澄太刀を抜寄ければ、今は汝が手に懸て討れん事子細なし。暫相待て最後念仏申さんと宣へば、忠澄畏て、抑君は誰にて渡らせ給候ぞと問ければ、薩摩守、己は不覚仁や、何者ぞ。名乗といはば名乗べきか、景気を以て見も知れかし。己に会て名乗まじ。去ながら最後の暇えさせたるに、己はよき敵取つる者ぞ、同じ勲功と云ながら、必よき勧賞に預りなんとて、最後の十念高声に唱つゝ、はやとくと宣ければ、六弥太進寄て頸を取、脱捨給へる物具とらせけるに、一巻の巻物あり。取具して頸をば太刀の切鋒に貫て指上つゝ、陣に帰て是は誰人の頸ならん、名乗と云つれ共しか/゛\とて名乗ざりつれば、何なる人共見しらざりけるに、巻物を披見れば、歌共多く有ける中に、旅宿花と云題にて一首あり。 (神戸市長田区胴塚) 忠度と書れたりけるにこそ薩摩守とは知りたりけれ。此人は入道の弟公達の中には、心も剛に身も健に御座けれども、運の極に成ぬれば、六弥太にも討れにけり。勧賞の時は、六弥太神妙なりとて、薩摩守の知行の庄園五箇所を給て、勲功に誇けり。 (神戸市長田区の夕日)
木の下蔭を宿とせば
今夜の
源平盛衰記 巻第三十七
行暮て木下陰を宿とせば花や今夜のあるじならまし
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jikan314
sakura
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