去程にてうてきほろひてのちは、國はこ
くしにしたかひ、しゃうはりやうけのまゝ
なりしかは、上下あんとの思ひをなしたり
去程に、同しき七月九日、大地おひたゝしく
うこきて、時うつる程なり。せきけんのうち
白川のほとり、六せう寺、九ちうのとうより
はしめて、さい/\所/\のたうしや、ふつ
かく、くわうきよ、みんおく、あるひはたふれ
かたふき、あるひはやふれくつれ、またきは
一宇もなかりけり。一天くらうして、日のひ
かりも見えす、ろうせうともにきもをまと
はし、てうしゆこと/\くtましいをうし
なふ。都の内は申にをよはす、近國遠國も
又かくのことし。海かたふきて、みねをひた
し、大地さけて水をいたす。山くつれては川
をふさき、岩くたけて谷をうつむ。浦こく舟
はなみにたゝよひ、くかを行ひつめは、あし
のたてとをまとはす。りうにあらされは、
雲にも入かたく、鳥にあらされは、天をもか
けりかたし。こうすいみなきりきたらは、
たかきみねにのほりても、なとかはたす
からさるへき。たゝ心うきは、大地しんなり
けり。
…略…
もんとく天皇の御宇、さいかう三
年三月三日の大地しんには、東大寺の大
佛の御くしおちさせ給けるなり。