(月の巻)
祖父中納言兼輔卿父従五位下藤原
紫式部 爲時也。左衞門佐藤原宣孝妻源氏物
語作者也。
月
めぐり
哉
雲 逢て
かく みし
れ や
にし それとも
よ わかぬ
は まに
の
(花)
紫式部
めぐり逢て
みしや
それとも
わかぬまに
雲かくれ
にしよはの
月かな
新古今集雑歌上
はやくよりわらは
ともだちにはべり
ひとのとし ける
ころへてゆ
きあひたる
がほのかにて
七月十日ごろ
のつきに
きほひて
かへりはべり
ければと有。
はやくは急の
字にてふる
くよりのこゝ
ろ也。
○うたの心はわらは
ともだちにとし
ごろへてめぐり
あひてそのひとが
あらぬかとたどる
まに月の俄にく
もがくれたるやうに
やがてたちかへる名
ごりにおをしきこと
をよめり。そのひとを
月に比してよめるとおも
しろし。すべてうたをみるに
はその人そのをりをおもひ
やりてあぢはふ
べきこと也。