新古今和歌集の部屋

新古今増抄 巻第一 藤原国信 残雪 蔵書

一 堀川院ノ御時、百首哥たてまつりけるに、残雪の

心をよみはべりける。

増抄云。堀河院とは、人皇七十三、諱ハ善仁。白河

㐧二ノ子也。母ハ中宮ノ賢子。藤大政大臣師実ノ猶子

也。実ハ右大臣源ノ顕房ノ之女也。應徳三年二月

廿六日ニ即位。立元在丁卯、在位二十一年、嘉承

二年七月十九日、譲位。崩於堀河院。寿三十。

此百首ハ初度の百首也。或説云。田納言公実

卿勧進云云。仍無院ノ御製欠。年記可勘注。

一 権中納言國信。  從二位右太臣顕房ノ

男。母ハ美濃守藤原良任ヵ女。 五首入。

一 春日のゝ下萌わたる草の上につれなくみゆる春のあは雪

古抄に云。あは雪とは、あはのごとく消やすき雪

をいへり。然るをつれなくみゆるといふ事は、

下萌の草葉の上にのこれば、淡雪をもつ

れなしとよめり。みゆるといへば、しかとつれなし

と云にはかはるべし。又説、つれなし云に、二の心有。

一には心つよき事。一にはたくひなき事をいへり。

此哥わか草の上にあわ雪のふりかゝりたるは、

たぐひなく面白くもみゆると云よしなり。

増抄云。下もえわたるとは、うへには顕然とみえね

ども、春のきて、萌出るとなり。はへ出るをもえ

出といふなり。陽氣の火をえて出生すれば、

もゆるとふぃといへり。つれなくはつよき心成べし。

火のごとくもゆるゆへに、扨も冬の雪さへあるに、

消やすきあわ雪が消ぬ事よとなり。消

ぬは面白と冬よりは一入深切の心なり。

 

頭注

職原云。

中納言 令外
ナカノモノ申ツカサ

官也。権官古来

有之相當今従

三位唐名納言

龍作 黄門

 

春日野 大和添

上郡也。

社前の大鳥

井あたりをいふ

といへども深秘なり

とて所の人もしれ

るは稀なりといへ

り。

 

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