万葉集巻第二
皇子尊宮舎人等慟傷作歌廿三首
171
高光 我日皇子乃 萬代尓 國所知麻之 【嶋宮】波母
高照らす我が日の御子の万代に国知らさまし【嶋の宮】はも
172
【嶋宮】 上池有 放鳥 荒備勿行 君不座十方
【嶋の宮】上の池なる放ち鳥荒びな行きそ君座さずとも
173
高光 吾日皇子乃 伊座世者 【嶋御門】者 不荒有益乎
高照らす我が日の御子のいましせば【島の御門】は荒れずあらましを
174
外尓見之 【檀乃岡】毛 君座者 常都御門跡 侍宿為鴨
外に見し【真弓の岡】も君座せば常つ御門と侍宿するかも
175
夢尓谷 不見在之物乎 欝悒 宮出毛為鹿 【佐日之隈】廻乎
夢にだに見ずありしものをおほほしく宮出もするかさ桧の隈廻を
176
天地与 共将終登 念乍 奉仕之 情違奴
天地とともに終へむと思ひつつ仕へまつりし心違ひぬ
右日本紀曰 三年己丑夏四月癸未朔乙未薨