契沖
○儀同三司母
わすれじの行末まではかたければけふを限りのいのちとも哉
新古今恋三中関白かよひそめ侍りける比と有。
哥の心は男の心のならひ打つけのほどはあかぬ思
ひ有。ゆへに行末かけてわするまじきよしいひ
ちぎれとも後にはうつろひやすき事世の中の
例なり。よりて今我中のたのめも末うたがはし
ければ、只今人の心のかはらぬ内に死なばやとよめ
るなり。命ばかり惜かるものなけれど人の心のかは
る世をみむことのうきによりてかくはいへり。後拾
遺集に和泉式部
今宵さへあらばかくこそ思ほへめけふ暮ぬまの命ともがな
赤染衛門
あすならば忘らるゝ身に成ぬべしけふをすごさぬ命ともがな
此二首似たる哥なり。新古今集
わすれじの言の葉いかに成ぬらんたのめし暮は秋風ぞ吹
同
わすれじの人だにとはぬ山路哉桜は雪にふりかはれとも
※わすれしの言の葉
新古今和歌集巻第十四 恋歌四
建仁元年三月歌合に遭不遭恋の心を
宜秋門院丹後
忘れじの言の葉いかになりにけむ頼めし暮は秋風ぞ吹く
新宮撰歌合
※わすれしの人たにとはぬ
新古今和歌集巻第十七 雑歌中
百首たてまつりしに山家の心を
摂政太政大臣
忘れじの人だに問はぬ山路かな桜は雪に降り変れども
正治二年後鳥羽院初度百首 九条良経