新古今和歌集の部屋

新古今増抄 巻第一 定家 帰雁春雨 蔵書

かひなき名のたゝんがおしけれど、月花の名

にみるべしとぞ。かりといふものは、かへるにさだ

まりたるものなれば、かへるにとりなし、それを

えとめぬは、かひなき月花の名にたゝんとなり。

月花は人をばとゞむる事あればかく云へると也。

随分とめんよしをおもひわづらひての上にて

月花がとめんによと思ひよりたる義成べし。

一 守覚法親王の五十首哥に、藤原定家朝臣

一 霜まよふ空にしほれし鳫金のかへる翅に春雨ぞふる

古抄云。鳫金の春秋往来の辛苦をあはれみ

たる哥なり。

増抄云。霜まよふとは、霜の置たるやうにあると也。

まよふとは、似たると云ふ心有。いかんとなれば、かりのかへる

時分に、霜のおきたるやうにはげしき秋天

の事也。或説にはかへる翅とあるに、對すれば、

翅に霜置てまよひこしといふ心をかと也。

此哥は、かりのうへとばかりみるべから。世界の

物うき事をいへり。人間ばかりにてもなく

鳥類までもかゝる事よと観じたる義也。

 
 
頭注
○雨元命包云。陰
陽和而為雨
釈名云。雨水從雲
下也。雨輔也。言輔
時生養。
 
※古抄云 
 
※元命包 春秋元命苞 百科知識 台湾より。
 
釈名 後漢末の劉熙が著した辞典。全8巻。 その形式は「爾雅」に似ているが、類語を集めたものではない。声訓を用いた説明を採用しているところに特徴がある。著者の劉熙については、北海出身の学者で、後漢の末ごろに交州にいたということのほかはほとんど不明である。「隋書」経籍志には、劉熙の著作として「釈名」のほかに「諡法」および「孟子」の注を載せている。

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