心こめり。 一 時は今春に成ぬとみ雪ふる遠き山べにかすみたなびく 古抄に云。この哥はときは、いまに春になりぬとよみ きりて、遠きやまべに霞たなびくと 云句にかけてみるべし。 増抄に云。古体の哥なり。遠きやまべと いへるこゝろをつくべし。遠山はかきくもり 雪がふるが、そのやまべを遠くみわたせば、 かすみてみゆるとなり。やまべはゆきふり、 そのこなたはかすめる景氣なり。時は いまと云五文字、天不言四時行といふまこと を感じたるうたなり。