二條中將(雅經)談云
哥には、この文字のながくもがなと覺ゆる事の有るなり。
兼資と云ふ者の哥に、
月は知るや憂き世の中のはかなさを眺めても又幾めぐりとは (出典不明)
これ、よろしくよめるにとといりて「世の中」の「なか」と云ふ二文字がいみじうわろき也。たゝ「憂き世のはかなさを」といはまほしき也。
又、頼政卿哥に、
澄みのぼる月の光に横切りて渡るあきさの音の寒けさ
(源三位頼政家集)
是も、「光」と云ふ三文字わろきなり。「月に横切りて」とあらば、今少しきら/\しく聞ゆべきなり。此詞をば、哥の中の疵とや云ふべからん。深く思ひ入らざらん人は辨へ難し。
○二條中將(雅經)
藤原雅経(1170~1221年)飛鳥井家の祖。新古今和歌集の撰者。蹴鞠の名手として有名で飛鳥井流の祖。若い頃義経との関係を父が疑われて、鎌倉で過ごし、鎌倉での人脈から、源実朝から歌の師匠として長明を推挙。
○兼資
不明だが、源兼資か?
○頼政
源頼政(1104~1180年)源三位入道とも称された武将で平治の乱には平清盛につき、後に以仁王を奉じて挙兵するが、宇治で敗死。鵺(ぬえ)退治で有名。
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