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■■■■■■■■■■■寄付の文化■■■■■■■■■■■■
■「寄付の原点」
●先日、世界遺産のパリノートルダム大聖堂が火事で一部消失した。
フランス大統領は、さっそく全世界の心ある有志に再建資金の寄付
を仰いだところ、わずか2日間で1000億円が集まったという。
潜在的な寄付文化というか,世界の巨大な寄付パワーに驚いている。
●ご存知のように「寄付」は、仏教国タイでは 僧侶による朝の托鉢が
その原点といわれてきた。
タイの人々は毎朝、托鉢に来るお坊さんに施しをする事を欠かさない。
私も去る20年ほど前、チェンマイで早朝6時ごろ、住宅街の街かどで、
托鉢のためにたち並ぶお坊さんの長い列に、街の人とびとが、喜捨
(寄付)するのを見た事がある。
喜捨するのは、炊き立てのお米や、フルーツ、クッキーなど、多岐に
わたるが、お坊さんたちは、喜捨した人々に敬虔な祈りを捧げて感謝
の念をつたえる。
●タイの喜捨には、次のような戒律があり、人々は、徳を積むために、
僧侶に対し身の丈の喜捨を続けて、僧侶と相互扶助の関係を保ち続
けるという。
・お寺に寄付する。
・僧侶に托鉢する。
・出家する。
・息子を出家させる。
・小鳥や魚を逃がす。
・五戒を守る
(殺生しない。盗まない。犯さない。嘘つかない。酒を飲まない)
●仏教国のタイでは、このような僧侶の托鉢が、全国的に行われて
おり、いわゆる仏教徒から僧侶に対する敬虔な寄付行為として定着
している。 毎朝行われる市民の儀式といっていい。
●永らく続いた軍政も、先日の総選挙で民政化に一歩踏み出したか
に見えたが、残念ながらその後の政治体制に動きがない。
以前から軍部側の様々な選挙工作が伝えられてきたが、タイの場合
も仏教と政治は完全に分離されており,仏教への政治介入はない。
また仏教からの政治への介入もない。
私たち苦い戦争体験を持つ国民からすると、宗教と寄付行為と平和
を守るための軍部とは、どこかで有機的に連動して普通に思えるが、
タイの場合、表面上も内面的にも全く繋がりが見えて来ない。
やはりタイの仏教は、国教的な存在として政治以前に国民全てを連
鎖していると見た方が正しいのかもしれない。
■「世界の寄付事情」
●「世界寄付指数ランキング」によると連続4回の断トツの1位は ミヤ
ンマーだった。
これによると、必ずしも お金を持つ人が他人にやさしいわけではなく、
むしろ貧しさを体験したり災害を経験した人たちが、他人の痛みを理
解していることが解った。貴重な調査だと評価が高い。
それにしてもGDP世界第2位の中国が144位、同じくGDP世界第3
位の日本が102位というのは、社会貢献の指数としては全くいただけ
ない。
●「世界の寄付ランキング」 英国「Charities AidsFoundation」
1位 ミャンマー
2位 アメリカ合衆国
3位 ニュージーランド
4位 カナダ
5位 オーストラリア
6位 イギリス
7位 オランダ
8位 スリランカ
9位 アイルランド
10位 マレーシア
11位 ケニア
12位 マルタ共和国
13位 バーレーン
14位 アラブ首長国連邦
15位 ノルウェー
16位 グアテマラ
17位 ブータン
18位 キルギス
19位 タイ ●
20位 ドイツ
102位 日本 ●
144位 中国
■「日本の寄付事情」
●日本の個人寄付は、従来から世界に比べて極めて少ないといわれて
きた。特にキリスト教文化の米国や欧州に比べ、寄付文化が社会的に
根ずかない土壌があるように言われて久しい。
●2007年からの寄付状況
今を去る約12年前、日本では初めてiphoneが発売され、本格のスマホ時
代が開幕した。そして翌年にはリーマンショックが到来、日経平均株価は、
平成時代最低の7054円を付け、2011年の東日本大震災を経て2014まで
厳しい経済環境が続いた。くしくも当時の政権は、民主党政権だった。
当時の日本の寄付総額は、米国の36兆円に対してわずか6000億足らず
だった.
●それから10年後の日米英韓の各国の寄付事情は、-----
(出所「Givinng USA 2017)
●悲観的だった日本の寄付市場は、東日本大地震を寄付元年として、
日本の寄付総額に、やっと好転の兆しが見えてくる。
日本フアンドレイジング協会の調査によると-----
・2010年 4874億円
・2011年10182億円
・2012年 6931億円
・2013年 7409憶円
●現在,米国の寄付市場を30兆円とすると、日本の寄付市場は、約1兆
円、GDPベースでも米国の2%に対して、日本は0,2%にとどまる。
■「落ち込んではいられない」
●日本は世界の寄付ランキング102位だからと言って、落ち込む事はな
い。わずか100年前の商都大阪では、当時の大阪商人の輝かしい寄付
行為によって、多くの素晴らしい建造物が建てられ、文化的遺産として
今も威容を誇っている。
・株商人、岩本栄之助氏の寄付による 「大阪中央公会堂」
・住友財閥と安宅コレクション寄付による「大阪市立東洋陶器美術館」
・15代住友吉座衛門氏の寄付による 「大阪府立中央図書館」
(中の島東部地区、手前から中央公会堂、上が中央図書館、そして大阪市役所)
●今回は、世界の寄付文化を主題に話を勧めてきたが、寄付と生活文化、
社会貢献活動とNPO活動などを通じて、寄付が社会課題の解決に大きく
つながることを確認した。
そして至近な祖先に、寄付の豊かなDNAが存在することも確認できた。
そこで改めて感じるのは、日本場合、お互いが何かと無駄を省き、それを
寄付に回せば、まだまだ寄付総額を伸ばせるということだ。
例えば1人1円寄付すれば人口1億2000万人で、立ちどころに1億2千万円
が生み出せる。馬鹿馬鹿しい話のようだが、やはり人口の威力は侮れない。
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