■■■■■■■タイに15年,自分らしく生きる■■■■■■■
中西英樹
・タイ王国、チェンライ市在住
・ロングスティヤー
⬛︎⬛︎「騙されやすい邦人」
🔵旅券法の定めにより在外公館(日本国大使館、総領事館)に届け出さ
れている在留届を基礎資料として、各年10月1日現在の海外在留邦人数を
推計している。
日本人が一番多く住んでいる国は
・米国、41万5千人、
・2位は漸減しているが中国で10万2千人、
・3位は豪州で10万、
1位から3位の国はここ数年変わりない。この2023年の調査によると長ら
く4位につけていたタイが5位7万2千人に後退して、
・4位にはカナダの7万5千人
が入った。在留邦人の数は日本とその国の経済関係をある程度反映する。
タイの都市別在留邦人の増減をみると2023年、シラチャで ー5,630人と
前年比10%ほど減っている。シラチャには 日本企業が集中しているから
邦人駐在員が減少したとみるべきだろう。
漸減しているとはいえ、タイの在留邦人数7万2千人は 中国を除く
アジア各国の中ではダントツに多い。まだまだ日タイの経済関係は強固で
あるし、更なるビジネスチャンスも 存在しているともいえよう。
そうなると タイで一山当てようという人はいるし、その事業に協力しま
しょうという在留邦人、コンサルタント会社、法律事務所も犇めいている。
タイで発行されている邦字情報誌にはこの手の広告がたくさん載っている。
但し,ここはタイだから邦人はもちろん、タイ人弁護士もコンサルも100%
信用できるとは限らない。
⬛︎⬛︎戸島警察大佐の忠告
🔵日本人でタイ国家警察大佐となっている戸島国雄という人がいる。
警視庁で鑑識一筋36年。95年に国際協力機構(JICA)派遣の 鑑識専門家と
してタイ国家警察へ出向。98年任期を終え帰国。定年退職後、2002年か
らJICAシニアボランティアとしてタイ警察へ再び派遣。現在、82歳を越
えているが日タイを行き来してタイでの事件解決・鑑識技術の継承に 奔
走している。「タイに渡った鑑識捜査官」など著書も4冊ある。
彼の本務は鑑識技術の伝授であるが、邦人の関係する事件がよく 持ち 込
まれる。以下はニュースクリップ2024年10月の戸島大佐の再録「在留邦
人の危機管理」から。
「来タイ間もない、慣れない土地で暮らす日本人にとって、在タイ何十年
という同胞は頼もしい存在であろう。知り合って懇意の仲になると,つい
つい頼ってしまうことになる。しかし 頼る方は純粋な気持ちでも、頼ら
れる方は決してそうでない場合があ.『金だけは持っている無知』と見下
し、うまく巻き上げてやろうと画策する輩が常に存在し、在 タイ年数が
長ければ長いほどそのような者が目立つ。
🔵タイの日本人社会にはさまざまな会が存在する。集団を 好む民族なの
だろうか, 異国の地に暮らすのが 心細いのだろうか、誰もがすぐ会やクラ
ブといったものを 立ち上げて同胞を募る。自分で立ち上げた会で 自分に
格好いい肩書きを作り、名刺を刷って配る。
日本人は 肩書きに弱いから,名刺を受け取った方もその格好いい肩書きを
すぐに信用してしまう。すると また そこで問題が起きる。タイ語が分か
らないので,タイに長くてタイ語も堪能と自称する相手の話に,まんまと乗
せられてしまう。(引用終わり)
北タイの片田舎に住んでいてもこの手の話はよく見聞きする。
・出資しませんか、
・いい土地がありますよ、
そして,タイ語で書かれた書類にサインしてあとで騙された、と気付く。
日本にいたなら契約書をよく読むし,第3者にチェックして貰うでしょう、
と思うのだがどうして信用してしまうのか。
相手に「騙したなどとは人聞きが悪い、ちゃんとした大人が 契約にサイ
ンしたわけでしょう,じゃ出るところに出ますか」と言われて泣き寝入り。
⬛︎⬛︎カモネギの邦人
🔵詐欺師は、こいつからどれだけ取れるか値踏みして近づいてくる。自
分の周りでも金持ちとみられている邦人に怪しい人が、出資,出店話を持
ちかけてくるようだ。残念ながら自分に儲け話を持ってきた人はいない。
ベンチャーを起こすなら, 金を持っている層をターゲットにすべきですと
教えていたが詐欺もベンチャーの一つか。戸島大佐は言う。
「さんざん騙された挙句、最後は警察に泣きつくことになる。 警察とは
いえ,日本人のやり取りにタイ人が介入したいとは思わない。証拠も提示
せずに『今夜の飛行機で日本に逃げるつもりだ。空港で捕まえてくれ』
と電話してきた被害者もいた。警察は令状なしに動けないのである」
彼も本務は鑑識技術の伝授なのに、邦人がらみの事件を 持ち込まれて困
っている様子が見て取れる。彼は 騙されないための注意点を述べている
が、アドバイスがあっても騙される人は騙される、それも 何度も騙され
るらしい。資産を持たない自分から金品を騙し取ろうと いう人はまずい
ない、これも幸せのうちかもしれない。
・タイ航空のエアーバス
⬛︎⬛︎タイ-日本間の航空便
🔵バンコク-東京間の直行便はJAL, ANA、タイ国際航空を含む6社が運航
していて毎日30便ほど飛んでいる。飛行時間は7時間前後であるが, 7時間
も機内に閉じ込められると疲れるという人もいる。でも東京-パリ,東京
-ニューヨーク間は14時間かかる。それに日本とタイの時差は 2時間だ
から時差ボケもなく、タイは気軽に行ける外国と言える。
直行便は飛行時間が短いし、発着時間も無理はない。直行便以外には1,2
都市を経由して飛ぶLCCがある。LCCは深夜、早朝の発着とかの不便さが
あるし、経由地での乗り換え時間を入れると 東京に辿り着くまで26時間
かかるといった難行苦行のフライトもある。
便利で早い直行便、不便だが安いLCC、どっちを選ぶかは各自の懐具合と
体力による。自分には時間的余裕があるのでLCCを利用することが多い。
ダナン、台北などを経由して日本に行ったことがある。台北では2泊ほど
観光してから日本に行った。バンコクー台北、台北ー羽田の飛行時間はそ
れぞれ3時間ほどであるからエコノミークラス症候群の心配もない。
🔵中国系航空会社
前回の4月、今回9月の一時帰国では羽田-チェンマイを それぞれ中国国
際航空、中国南方航空の中国系の便で飛んだ。2社ともLCCではないので
機内食が出たし、20キロの預け入れ荷物もOKだった。ただ、中国国際航
空は羽田出発が遅れ、北京空港でのチェンマイ行きの乗継便に間に合わず、
北京一泊となった。
中国南方航空も40分ほど出発が遅れたが何とかその日のうちにチェンマイ
到着。中国南方航空は、アジア最大規模の航空会社で運用機数はエアバス
A300 を始め657機という。CAはきれいなおねえさんばかりだったが、 制
服の仕立てがいまいちで体にフィットしていないのが可哀そう。機内食で
は珠江麦酒(パールリバービール)も飲めたのでまあ満足。
自分の席はエコノミークラスの最前席、3人掛けだが通路側は空席、と思
っていたら離陸前にガタイの大きな客室乗務員が座って, シートベルトも
締めず爆睡、大きく開いた足が自分の足に密着してきた。このあんちゃん
は着陸の時にも隣に座り、やはりシートベルト無しで居眠り30分。中国南
方航空の仕事はかなりブラックで疲れるのではないかと思った。
羽田-広州、広州-チェンマイの機内は満席、大半は中国人だった。そう
いえば帰国中、銀座にも出かけたがキャリーバッグを曳きずって歩く中国
人をよく見かけた。大きな声で話すのですぐわかる。ファミリー中国人も
少なくなかった。
🔵減ったけれども観光客は多い
中国経済に関する動画を見ると,不動産市況の低迷,失業率増大と雇用不安、
EV不振で輸出減少など,中国経済大崩壊の瀬戸際にあるという。デフレ下
でも食品は値上がりしている。個人消費は GDPの4割を占めると いうが
失業、給料減、貯蓄代わりの不動産の価格暴落で 国民の財布の紐は固く
なっている。とても海外旅行の散財などムリではないか、と思うのだが、
自分の見た銀座の風景や空港の繁忙は 偶々だったのか。いや、そうでは
ないことがデータでも示されている。
政府観光局(JINTO)の調査によると、2024年1月から9月までの訪日、中国
人観光客数は525万人となっていて、韓国に次いで第2位である。香港か
らの観光客(1-9月で200万人弱)を含めれば2024年の中国からの観光
客数は1位になるだろう。相変わらず中国人は多い。
中国人は日本にだけ押しかけているわけでもない。タイ ニュースクロス
オーバー7月4日付の記事から。7月2日スームサック観光スポーツ 大臣
は、2024年1月1日から6月30日までに、1,750万人以上の外国人観光客
がタイを訪れ、前年比35%増加したと発表しました。
国別では、
・中国が最大で3,439,482人、続いて
・マレーシア(2,435,960人)、
・インド(1,040,069人)、
・韓国(934,983人)、
・ロシア(920,989人)、
・ラオス(618,782人)、
・台湾(533,280人)、
・米国(507,251人)、
・ベトナム(501,895人)、
・英国(485,093人)
の順位になっています。(引用終わり)
なお,同時期の訪タイ日本人観光客は約47万人でベストテンからは漏れて
いる。チェンライで見かけるアジア人はまずは中国人、次いで韓国人か。
チェンライの店員はまず「ニーハオ」、反応がないと「アンニョンハセヨ
ー」、それでダメなら「コンニチワ」となる。ラオスやミャンマーでも先
ずは「ニーハオ」だった。
中国経済の動画を見ると5億人が飢餓の瀬戸際、などとある。飢餓は別に
しても海外旅行に行ける富裕層がまだまだいるということか。動画と自分
の目で見たことの乖離はどう説明すればいいのか。世の中、わからないこ
とだらけです。
⬛︎⬛︎チェンライ滞在15年 (人生の転機)
🔵認知症が進んできた母を伴ってチェンライに着いたのは2009年の1月
だった。2009年(平成21年)というと8月に総選挙があり、官僚主導の
政治打破を掲げた民主党が過半数(241議席)を大きく上回る308議席を
得て圧勝した。
自民党は、公示前の300議席から119議席に激減する結党以来の歴史的大
敗を喫し、戦後初めてとなる、野党第1党が単独過半数を獲得しての政権
交代が実現、9月には鳩山内閣が発足している。
世界同時不況でトヨタ自動車は純損益が2兆円以上悪化して 約4369億円
の赤字に転落し、ソニーは1万6千人の人員整理をおこなっている。
日本経済はデフレでGDPは35年ぶりに二桁減少、利用客が少なくて銀座に
は客待ちのタクシーの長い列ができた、とある。
海外ではオバマ大統領が「核なき世界」を訴えてノーベル平和賞を受賞し、
マイケル・ジャクソンが死去,さらにイスラエルが ガザ地区に侵攻し,停戦
までの約2週間でパレスチナ側に1300人の死者が出ている。
イチローの9年連続200安打、松井はワールドシリーズMVPといった出
来事もこの年のこと。チェンライで新生活に慣れることに心が奪われてい
たせいか、内外のニュースについてあまり記憶がない。
今,年表を見て、そんなことがあったなあと思う程度。ただ,ドル円レート
は90円ほどで今とは 比べモノにならないくらいの円高。ドルと リンクし
ているタイバーツは安く、家財道具や車の購入、ビザ取得のための預金が
必要だった我々にとってはよかったと言える。慣れない異国の生活に戸惑
うことも多く、瞬く間に日々が過ぎていくという年だった。今振り返って
みると内外の大事件とは関係なく、ささやかに 個人的な人生の転機が訪れ
ていたのだろう。
・チェンマイの花売り娘
⬛︎⬛︎何故か居つく
🔵今年は2024年、2009年にチェンライに移り住んだから、本年でタイ在
住15年となる。母は日本で「3ヵ月でお亡くなりになります」という医師
のご託宣を受けていた。ご飯を食べようとしないから、点滴となり、点滴
では十分な栄養が取れないからそれで寿命が尽きるとのこと。このまま入
院していたら死んでしまうと病院から家に連れ帰った。
帰宅すると箸で卵焼きなどを食べているので一安心。日本の病院や施設で
は認知症の母は尊厳ある人間ではなく一病人としてしか見てもらえない。
これは日本の介護、医療体制からすれば仕方のないことだとわかってはい
た。それで日本では十分なケアは期待できない、と思い詰めて薄い縁にす
がってチェンライに移り住んだ。
3ヵ月の命と言われていたし もってもせいぜい3年と思っていたが、チェ
ンライの気候が良かったのか、女中さんの親身な介護がよかったのか 10
年ほど母は生きながらえて2018年に天寿を全うした。
つい先日亡くなったような気がするが,6年も前になってしまう。介護ロン
グステイとして暮らしていたのだし、一段落ついたら帰国してもよかった
のであるが, そのままチェンライに居ついている。 居ついているばかりで
なく、2023年には家を建て、ここが終の棲家になるのではと 考えている。
⬛︎⬛︎自分らしく生きる
🔵海外に移住してよかったと思う事はありますか?という質問があった。
よかったと思うことがあるから異国に住み続けている。
人によって自分の専門が生かせる仕事が見つかった。パツ金のカミさんと
一緒になれた、人間関係のほとんどが異国にある、などいろいろな理由が
あるだろう。
自分の場合、自分が自分のままで過ごせる、が主な理由だろう。ウズベク
にカレッジの講師として赴任した途端に30年以上飲み続けてきた胃潰瘍の
薬がいらなくなった。チェンライに来てからは更に人づきあいのストレス
が無くなった。付き合いたい人とだけ付き合えばよく、自分とは合わない
人と付き合う必要はない。対人関係のストレスはゼロだ。
🔵もちろん日本は安全で、便利で、清潔で、和食に限らず食物は美味しく、
人々は礼儀を弁えていて,医療は充実していて、と数えきれないほどの利点
はある。外国人が賞賛してやまない 日本の美点を紹介するユーチューブを
視聴すると、望郷の念が湧き上がらないこともない。
でもこの素晴らしい国にいつでも帰ることができる。今は 今の生活を楽し
もう。今日もコートに行って6ゲーム先取のダブルスを2つ。シャワーを 浴
びてパソコンへ、音楽も時事解説もスポーツ番組も思いのまま,昼食を自分
で作り、眠くなれば昼寝、
「春立つや新年古き米五升」ではないが、庭にはバナナが五本以上実
をつけているしビールとラオカオも充分ある。
自堕落な自分を責める人もいない。飢えず凍えず満ち足りた日々を異国で過
ごせることに感謝、心からそう思う。
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