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鮟鱇



 スーパーに行ったら、魚屋に鮟鱇が丸ごと一匹売っていた。
「生きてます。注意して下さい」
とわざわざ警告が添えてあるから、じっと見ていたら少し動いた。すると、妻が胸びれ辺りを指でつんつんした。
「やめろよ」
「ここなら噛みつかないでしょ。でも、どうするんだろうね、この鮟鱇」
「売るに決まってるだろ」
「でも、いくらとも書いてないし・・」
と話していたら、横で見ていたおじさんが、
「この鮟鱇いくら?」
と大声で尋ねた。
「1万円です」
との店員さんの返事を聞いて、私たちは「ほお・・」と溜息をついたが、そのおじさんは何も言わず、すぐに立ち去った。
「買えないよね、なかなか」
という妻の言葉に頷きながら、私もその場を離れた。

 家に戻って、鮟鱇の写真を眺めていたら、子規に鮟鱇を詠んだ俳句があったような気がして調べてみた。いくつかあったがその中でも次の一句が気に入った。

 鮟鱇鍋河豚の苦説もなかりけり

 外見はグロテスクな鮟鱇よりも河豚の方が愛嬌があるが、食べて危ないのは河豚の方だ。それを苦説と表したのだろう。鮟鱇はどこもかしこも食べられるから、1万円なら安いのかもしれないが、我が家の3人では食べ尽くすことはできないだろうから、切り身になった物を買って食べた方がいいのだろう。
 
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