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「世界の終わりとハードボイルド・ワンダーランド」

 村上春樹の「世界の終わりとハードボイルド・ワンダーランド」を読んだ。
 昨年、「ねじまき鳥クロニクル」の第三部を読み終わった時、次は「ノルウェイの森」を読もうと書棚を探したのだが、あるはずの本が見つからず、どうしようかなと思っていたら、この「世界の終わりとハードボイルド・ワンダーランド」を見つけたので、読んでみることにした。しかし、なんでこう村上春樹の本を何冊も持っていて、しかもほとんど読まずに書棚の飾りとなっていたのか、よく分からない。読まないくらいなら買わなきゃよかったのにと思わないでもないが、まあ、理由は分からずとも買っておいたお陰でこうやって読むことができたのだから、何十年も前の私のファインプレーだと言えなくもない。

 読後感を書き留めようと思ったのだが、ちょっと困った、本の細かな内容をよく覚えていない。これは悲しいことだけど、600ページもの小説を読むのが私の脳にはもう難しくなってきたのかもしれない。ただ、「ハードボイルド・ワンダーランド」という章題で描かれる現実世界(かなり怪しい言葉だけど)と「世界の終わり」という高い壁に囲まれた世界とが別々の物として描かれ始めながら、次第に互いに表裏のパラレルな世界として描かれていく過程が、なかなか複雑でぼんやり読んでいると意味不明になってしまうなあ、という大雑把な感想しか残っていない。そうは言っても、読んでいる最中は村上春樹の駆使する日本語の美しさ、的確さに唸ること度々であり、これほどの大作を飽きさせることなく最後まで読み通させてくれるのだから、やはりストーリーテラーとしても卓越した能力の持ち主だなあ、と感心させられた。今まで読んだ村上作品の中でも上位にランク付けできる面白さだった。
 ただ、「世界の終わり」で描かれる世界は、2年前に読んだ「街とその不確かな壁」で描かれた世界と同じであるのは何故だろうと、ずっと不思議に思いながら読んでいた。時系列的に言えば、「世界の終わりとハードボイルド・ワンダーランド」が1985年の作であり、「街とその不確かな壁」が2023年だから、私は順序を逆に読んでしまったことになる。もし、時系列的に読んでいたら、もっと理解が深まったのかな、とちょっと残念に思った。

 ここまで来たら、残りの村上春樹の長編小説を全部読もうと決めた。これだけ脳の力が落ちているのが実感できたから、大急ぎで読まないと間に合わないかもしれないが。
 長編小説として未読なのは、
「風の歌を聴け」
「1973年のピンボール」
「ノルウェイの森」
「ダンス・ダンス・ダンス」
「国境の南、太陽の西」
「スプートニクの恋人」
「アフターダーク」
くらい。何とか今年中に全部読もうと思う。

 LEGOで野球場を組み立てる以外に今年の目標が新しくまた1つ増えた。頑張ろう!!


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「二番目の悪者」

 林木林「二番目の悪者」を読んだ。



 これは少し前にネットで話題になった本で、2014年に発行された本ではあるが、兵庫県知事選で問題となったネットでの偽情報の拡散がもたらしたのと同じようなことが、動物の世界に仮託して描かれている。

 『金色のたてがみを持つ金ライオンは、一国の王になりたかった。自分こそが王にふさわしいと思っていた。
ところが、街はずれに住む優しい銀のライオンが「次の王様候補」と噂に聞き、金のライオンは銀のライオンに関するデマを次々に広めていく。始めのうちこそ信じなかった街の動物たちもいつしか銀ライオンの悪評を真実と思い始めて、とうとう金ライオンが次の王様の座に着いてしまう。
が、王となった金ライオンは自分中心の無茶苦茶な政治を行い、その国を滅亡の淵に追い込んでしまう。国の人々はなぜ、こんなことになったのか、自分はただ聞いた噂を別の人に伝えただけなのに、と後悔するものの覆水盆に返らず・・。
その様子を見ていた雲は嘆く、
「誰かにとって都合のよい嘘が
世界を変えてしまうことさえある。
だからこそ、なんどでもたしかめよう。
あの高くそびえる山は、本当に山なのか。
この川はまちがった方向へ流れていないか。
皆が歩いて行く道の果てには、何が待っているのか」』

 兵庫県でまだ権勢を振るっている金ライオンのことを思うと暗澹とするばかり。
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「くるまの娘」

 宇佐美りん「くるまの娘」をやっと読み終わった。記憶がないほど前に読み始めて、途中何度も放置しながら、今朝起きて残り50ページほどを一気に読んだ。

 やっと読み終えた安堵感はあるものの、この作者の小説はやっぱりよく分からないという印象が強い。「かか」「推し、燃ゆ」も読んだが、ずっとよく分からないという印象が拭えない。それは文体が私の頭には馴染まないということもあるだろうが、しっかり読んでみると情景を描く記述は独特な言葉を使って濃密に描かれているし、人物の心理も細かく表現されている。しっかりした文体の持ち主であることは理解できるが、かなり硬直化した私の読解能力を超えているらしく、容易には私の心に染み込んでこない。
 なら、なぜ3冊も読んだのか、自問してみるが、うーん、なぜだろうという答えしか出てこない。筋立てとしては暗い、最初から最後まで暗い。希望らしきものも仄見えない。それが現代の重苦しさだと物知り顔で語るのは私の趣味ではないし、己の心の闇に通じるものがあるかもしれないなどと安っぽいことも言いたくもない。ただ何となく読んでしまう魅力があると、ぼんやりと思っているくらいが私にはぴったりな気がする。

 昨日ハッと気付いたことがある。なんだか最近一つ一つキチッとやっていかないと気が済まないような陥穽にハマってしまい、自分を窮屈にしてしまっていたんじゃないか、だから妙に疲労感に苛まれているんじゃないだろうか、そんな気がした。
いい加減な人間が変に肩肘張っていたら、そりゃ疲れるわな、それはいかん、元来の「いい加減モード」に戻していかなきゃ!と心に決めた。
ということなので、この「くるまの娘」の感想もこんな中途半端な感じで終わることにする。
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『「NHKから国民を守る党」とは何だったのか?』

 選挙ウォッチャーちだい『「NHKから国民を守る党」とは何だったのか?』を読んだ。
兵庫県知事選挙で暴れまくっている立花孝志とはいったい何なのか?私には全く理解できない思考回路を持ったこの男とは一体何者なのか?そうした喫緊の疑問に答えてくれるだろうと思って、哲学系YouTuberじゅんちゃんのチャンネルに何度か出てきてクソミソに立花を貶しているちだい氏の本を読んでみた。

 17日の投票日の前に読み終わろうとかなり飛ばし読みしたせいか、細かな内容はよく覚えていないが、とにかく未曾有の危ない奴だということは分かった。選挙を金儲けの手段と考え、自分に敵対するものは裁判に訴えたり、嫌がらせをしたり、とにかく相手の嫌がることを繰り返してきた男、そういう姿が微に入り細に入り描かれているので、読んでいて気が重くなるほどだった。もう絶対に相手したくない男、そんな感想しか私には持てなかったので、4年間にわたって立花と対峙してきたちだい氏はすごいなあと心から思った。

 この本は2021年11月に刊行されているから、現在はそれから3年経っているため、その間に立花孝志がどういう活動をしてきたかは当然書いてないが、今回の兵庫県知事選挙で行っていることを見れば大概の想像はつく。果たしてこの選挙が終わった後、立花孝志の身がどうなるか、も選挙結果とともに注目している。願わくば、立花の思い通りにはならないように!
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「ねじまき鳥クロニクル」第3部

 「ねじまき鳥クロニクル」第3部があると知って、慌てて探してみたら、メルカリで単行本が売られているのを見つけた。文庫本を買えばいいのかもしれないが、1部・2部を単行本で読んだから、3部も単行本で読まなきゃいけないだろうと、意味不明な気持ちで買ってみた。
送られてきたものはほぼ新品と言ってもいい状態のもので、まあ満足。ならば一生懸命読まなくっちゃ!と意気込んで読み始めた。



 しかし、なんだかちょっと肩透かしにあったような気が途中からし始めて、うーんって感じになった。面白いことは面白い。さすがの文章力でどんどん読み進めることができ、グイグイ小説の世界に引き込まれていく。でも、ちょっと待てよ、これはオカルト的すぎないか、という場面が増えてきて、最終局面ではもう何が何やらわからなくなってしまった。辻褄は合っているし、論理的な破綻もない、が、しかし、えっ??なに??とついていけなくなりそうになり、長い物語の終焉が、どうにも薄っぺらなものになってしまったような気がして仕方がない。
 3部の存在を知らずに、「いい小説だったね!」という2部までの読後感のままでいた方が良かったように思う。ちょっと残念・・。

 なんだかこのままだと悔しいから、ずっと読むのを避けてきた「ノルウェイの森」を読むことにした。(まあ、これも意味不明だけど)
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「羊をめぐる冒険」

 村上春樹「羊をめぐる冒険」を読んだ。
 書棚に眠る本を読むのもなかなか楽しいものだと気づいたので、ちょっとずつ在庫整理のような形で読んでいこうと思っている。
 不思議なのはハルキストではない私なのに、どういうわけだか村上春樹の読んでない著書が結構ある。「ねじまき鳥クロニクル」は少し前に発掘して読んだが、それ以外にこの「羊をめぐる冒険」とか「世界の終わりとハードボイルド・ワンダーランド」とか「恋しくて」。他にもあるかもしれないけど、なんでこんなにもあるのかよく分からない。まあ、「羊をめぐる冒険」は読み終わったから次は「世界の終わりとハードボイルド・ワンダーランド」かな・・。

 で、この「羊をめぐる冒険」についてだが、なんだかいくつか読んだ村上春樹の小説とは読んだ感じが違っていた。簡単に言えば文章が固い。村上春樹の小説とは、柔らかな文章ではあるが、含蓄のある重厚な文体で書き上げられた物語だという印象を持っているだけに、この小説はゴツゴツしていて澱みなく読めるという文章で描かれていない気がした。比喩がやたら多く、それを解釈するのに若干時間がかかるようにも思えて、なんだか逆効果かなと思わないでもなかった。
 これはいったいなぜなんだろうと考えてみたところ、文章が若いんだろうな、という思いに至った。
 そこで、ちょっと調べてみた。すると、1982年に発表された小説で、村上春樹が33歳の時のものだと分かった。やっぱりそうか、と納得できたものの、作品の年譜を調べてみて驚いたことはもっと別のことだった。それは、少し前に読んだ「ねじまき鳥クロニクル」には第三部があるというのだ。二部まで読み終わって、これで完結!と、えも言われぬ読後感で満たされたのを覚えているが、その続きがあるなんて全く知らなかった。ホントかよ!!と声を出してしまったほど驚いた。
村上春樹の小説には最後まで伏線回収しないことが多々あるので、作中で色々分からないところがありながらもそれに触れないまま終わったとしても違和感を持たないのに慣れているから、二部で終わりと早とちりしてしまったのかもしれない。

 だが、三部の存在を知った以上、読まねばならない!「世界の終わりのハードボイルド・ワンダーランド」はその後だな。
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「ムーミン谷の彗星」



 ちょっと涼しくなって本を読む気力も回復したけど、差し当たって読みたい本もないから、自室の書棚を焦ってみたら「ムーミン谷の彗星」が見つかった。いつ買ったのかわからないが、1992年発行の本なので、30年ほどは放置してあったように思う。まあ、久しぶりに本を一冊読もうとするにはこれくらいが手頃かなと思いながら読み始めた。

 登場人物はムーミントロール(最初から最後までトロールが付いているからこれが正式名称なんだろう)、ムーミンパパとママ、そして私の大好きなスナフキン(この本の中ではハーモニカが得意みたい)、スノークのおじょうさん(ノンノンなんだろうな、多分)、スノーク(ノンノンのお兄さん)、スニフ、ニョロニョロなどなど。
 お話は、彗星が近づいてきて地球にぶつかりそうだから、ムーミンがスニフと一緒に遠くの山の天辺にある天文台に彗星がいつぶつかるのかを聞きに行く道中で出会う人たち(?)とのあれこれ、といった内容で、他愛もないと言えばそれまでだけれど、仲間になったスナフキンやスノーク兄妹などとともに、迫り来る赤い彗星に恐れを見せることなくミッションをこなそうとするムーミンはなかなか凛々しい。映画「アルマゲドン」のように己の命を犠牲にして地球を守ろうなどとはしないけれど、それなりの緊迫感は感じられて、なかなか面白かった。

 ただ、スナフキンが浮世離れしたボヘミアンじゃなく、ただの変人くらいにしか描かれてなかったのは、アニメのムーミンに親しんだ私にはちょっと意外だった。
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「嫉妬」

 『友人同士のA子とB子がいる。A子はB男と恋愛結婚をしているが、C子は愛のない結婚をしてすでに離婚している。二人の交友はB男も含んで今も続いている。
そんなある日A子がC子の家にやってきて、B男が不倫を繰り返していると打ち明ける、しかもそれは結婚当初からずっとだと。A子がB男のことを見損なったとなじるのを聞いてA子は自宅へ戻る。そこで彼女はB男に今C子の家でC子がD男という金持ちの男と結婚することになったのを聞いてきたと話す。B男は驚き、そんなことはない、と断言するが、それを聞いたA子は、「あなたとC子が一年前から深い関係であることを知っている、それが事実であるのは今のあなたの動揺が全ての証拠だ」と言い放つ。それを聞いたB男は突然家を出ていき、何故かC子の家まで行き、C子に打ち明ける。「妻に言われたことを聞いて自分があなたを愛していることに気づいた」と。すると、C子も「同じように自分もA子によってB男を愛していることに気づいた」と打ち明ける・・。』

 A子はB男とC子の仲を疑って、一芝居うったつもりだったのだろうが、それが逆に寝た子を起こす結果になってしまったという、なんだかお粗末な話。堀口大学訳によるフレデリック・ブウテという人の「嫉妬」という短編を簡単にまとめてみたけど、100年も前の小説であるからか、今どきこんな話はありそうでなさそうだなあ、と思った次第。
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「成瀬は信じた道をいく」

 結局、「成瀬は天下を取りにいく」の続編、「成瀬は信じた道をいく」を読んだ。
 前作を読んだ後、なんだか竜頭蛇尾に終わった気がして成瀬あかりという強烈なキャラを生かしきれていないんじゃないかとモヤモヤが残ったのだが、今作を読んでそれが霧散した。面白かった!!
 読み終わった直後に感じたのは、私はもっと成瀬が知りたかったんだろうな、ということ。前作では途中から成瀬の姿が朧げになってしまっていたのが不満の要因だったと分かった。今作は全編、成瀬で溢れていて、成瀬の何たるかがかなり分かって嬉しかった。
 膳所高校から京大に余裕で合格し、大津観光大使となり、スーパーのレジ係のバイトを始め、時間がある時には腕章を付けて地域のパトロールをする、などなどなかなか大変な毎日を過ごしているにも関わらず、何の無理もせずにごく自然にこなしていく成瀬、本人は全く意識していなくとも、「信じた道をいく」という力強さで周りにいる人々を惹きつけていく成瀬、いつも誰に対してもタメ口で緊張したことがないという成瀬には爽快感さえ覚える。実にカッコいい!(表紙のイラストがなかなかチャーミングでこれが成瀬?と思わせるのもいい)



 前作ではイマイチ成瀬を表現できなかった感のあった作者が全力で成瀬をプロデュースしている今作は作者の成長を見るようで興味深かった。いつまでこのシリーズが続くのか分からないけれど、次作を楽しみに待とうと思う。
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「成瀬は天下を取りにいく」

 「成瀬は天下を取りにいく」を読んだ。週刊誌で作者の宮島未奈が京大文学部の卒業生だと知って、どんな小説なのか知りたくなって読んでみることにした。
主人公・成瀬あかりにまつわる短編がいくつか合わさって一冊の本となっている体裁。最初の一章二章は面白かった。成瀬あかりの中性的な物言い、緊張したことがないという行動力、二百歳まで生きるとかM 1グランプリに出るとか、ちょっとした大言壮語も成瀬のキャラを彩るものとして可笑しかった。
 しかし、語り手が相方の島崎から別の人に変わり、その人物の目線で語られ出してからは、なんだか面白くなくなった。どこかのマンガで読んだことのあるような話が多くなり、これならマンガの方が面白いぞと思い始めて、先を読みたい気持ちが少し萎えてしまった。逆に言えば、今のマンガのストーリーはそんじょそこいらの小説よりも遥かに豊かで想像力に富んでいるから、それらを超えて読者を惹きつけるには物語の面白みだけではなく、文章の独特な魅力が必要なんだろうなと思った。
 続編もあるようだから読んでみようかと思うけど、ちょっと迷うなあ、というのが読後直後の素直な感想。
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