材木の香り

　妻がコストコに行きたいと言うので、一緒に出かけた。
　しかし、クリスマス前の今の時期、駐車場までは入れたものの、駐車スペースがまるで空いていなかった。一周して、もうダメだと諦めて、妻を下ろして私はすぐ側にあるホームセンターで時間を潰すことにした。　

　案の定、ホームセンターの駐車場はガラガラで、店内も人がチラホラいるだけで、閑散としていた。それが私にはかえって幸いし、めちゃくちゃ広い店内を自由に歩くことができた。
　「セメントはどこにあるんだろう？」と建築資材のある一角を探して行ったところ、材木が整然と並べられたところに出た。





　すると、なんだか懐かしい香りに包まれた。ああ、材木の匂いだ・・。

　私の母は材木屋の娘、父は大工だから材木に囲まれて育ったと言っても過言ではない。森の香りとは違う建築資材としての材木から滲み出てくる香り、鼻腔を思いきり開いて吸ってみた。
　懐かしいなあ・・
　
　もうすぐ母の実家の材木屋が取り壊されると聞いているので余計に懐かしく感じたのかもしれないが、自分のルーツに触れたようで、ちょっと熱いものが胸に込み上げてきた。
　
　今年は私にとって大きな禍ばかりもたらされたが、自分の原点とも言うべき香りを再確認できたのは、気持ちを新たにするにはいいことだった気がしている。