30代、40代半ばまで、会計事務所で働いていた。
就職した年の秋、1993年10月、職員旅行で東北地方に1泊で連れて行ってくれた。
事務所持ちで、私たちの出費はなしだった。
まだバブルがはじけてなかったのだろうか。
所長は、まちがえて別の用事を入れてしまったので、職員だけで行ってくれ、ということになった。
げいび渓の舟下り、中尊寺などを男性職員が計画してくれて、初めての東北新幹線にも乗った。
翌年の夏、男性職員に、なにげなく
「香嵐渓は紅葉の名所できれいだと聞いていますよ。もし旅行に行くなら今年どうですか」
と、ただの思い付きで話した。
写真はお借りものです
秋が近づいたころ、事務所の関与先の会社は、経営が苦しくなってきたところが増えた。
会計事務所は、関与先の会社の業績が悪化すると、顧問料を下げてさしあげたり、関与先の売り上げが激減したら事務所に来る仕事も少なくなり、事務所の経営も厳しくなってくる。
それで、この年、職員への福利厚生も削減になってきた。
さきほどの男性職員から、
「この前、香嵐渓って話題出ていたけど、今年は職員旅行は行わないことになったんだ。申し訳ない。」
というようなことを言ってきた。
私としては、思い付きで言っただけで、連れて行ってほしい、というつもりではなかったが、「そうですか」と答えておいた。
紅葉の季節が来ると、この一件を思い出す。