JUNSKY blog 2015

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オレステス

2006-09-10 00:22:05 | 観劇レビュー
 渋谷のシアターコクーンで蜷川幸雄演出、藤原竜也主演のギリシャ悲劇
「オレステス」 を見た。

 急なことだったので、いつもの通り当日券狙いで、これもいつもの通り立見席2階。 今日(正確には昨日)も上手側。 3千円也。
S席:9000円。 A席:7500円。

 内容は、トロイヤ戦争に出向いた父の不在に母が不倫をし、帰国した父を母と愛人が殺害。その息子のオレステスと姉が、母を殺す。というすさまじいものである。

 オレステスを藤原竜也、姉のエレクトラが中嶋朋子(北の国からで有名)。
叔父に吉田鋼太郎、その妻の極悪非道な絶世の美女ヘレネに我等が香寿たつき。

 リチャードⅢ世のときも、香寿たつきの出番は少なかったが、今回も最初と最後にでてくるだけ。その上台詞のあるのは最初の出番だけ。 最後に出てくるときは幻の宙吊りで空間をたゆとう設定。
そしてアポロンによって、極悪非道な女ではなく、純粋無垢な女性として許され天上に上るという役どころ。

 舞台はエレクトラの独白から始まり、いきなりの本水を大量に使った豪雨の演出。
舞台上を水が客席に向かって流れるという演出。舞台端末の溝から水は回収されるので客席までは流れてこない。(技術的な話になってすみません。)

 しかし、最前列の観客にはビニルが配られている。

 芝居途中では、ずぶぬれになった出演者が客席を歩き回ったり走ったりという演出で、通路もびしょぬれであった。

 蜷川の演出は、どうしてこうも俳優を怒鳴らせるのだろうか?
メリハリなく全編怒鳴っているので、疲れるし、覚めて(冷めて)しまう。

 その中で、宝塚で鍛えられた香寿たつきは、怒鳴らなくても活舌よく、明瞭に伝わり、その上すっかり美女に変身し、存在感を示していた。
演出上、腰まで切れた衣装から敢えて右太腿まで見せる立ち方を常にし、このヘレネという女性の素性を表わす演技に集中していた。

 最後の最後の演出は、911を明確に意識したもの、というか911の時の音や、ブッシュ大統領の演説が聞こえ、上階からイスラム圏の国旗を配したと思われるビラが空中に(客席に)ほうり投げられ、まさに911後の憎しみの連鎖をどのように断ち切るのか? という問題提起であった。

 蜷川氏の言いたかったのは、この最後の問題提起に尽きる。

2006年10月1日までシアターコクーンで。

その後、
大阪:シアタードラマシティ
 10月6日~16日

名古屋:愛知厚生年金会館
 10月21日~24日

で公演継続。