写真は「遊就館」大型展示ホールの特攻兵器・人間魚雷「回天」
もっと小さいと思っていたが、想像以上に大きかったので驚いた
靖国神社「遊就館」視察レポートの続き
映像ホールでは1時間に一回プロパガンダ映画「私たちは忘れない」(50分)を上映している。
この映画は、各種展示と相乗効果を持って、アジア・太平洋戦争(靖国神社では、一貫して「大東亜戦争」と表現)が、欧米諸国の植民地支配からのアジア解放の「聖戦」であったという意識を来館者に植え付ける役目を果たしている。
これまでの護憲派の知り合いの話では、一緒に連れて行った若者が、視聴後一時的に『軍国主義者になった』とか、若い女の子が涙を流していたとか、聞くいわく付きの映画である。
映画の細部を、ここで再現するスペースも表現力も無いので、大まかな流れと感想を述べるにとどめる。
※ まず、うまくできた映画である。(良い映画という意味ではない)
多くの日本人が見て、「そうだねぇ~」と思わせる導入を図っている。
※ 出だしは、可愛い子どものアップというイメージ戦略である。
そして、今の繁栄した?日本の有様を映し出し、これは大東亜戦争で散っていった英霊達のおかげであることを強調する。
ここでは、何故多くの有能な若者が死に至らさしめたかは不問である。
※ そして、19世紀からの欧米によるアジアの植民地化の歴史を映し出し、欧米が如何にアジアを侵略し収奪したかを描く。
ここでも、初めて見る者にとっては、「なるほど、そうだったのか!」と思わせる演出を施している。(残念ながら引き込み方は“うまい”という他は無い)
※ この欧米のアジア支配から、アジアを解放するためには、大東亜共栄圏をつくり、アジアが協力して欧米に対抗しようという戦略が解説される。
これに、中国や朝鮮の代表(実は傀儡)も賛成したが、中国共産党やソ連やアメリカの介入により反日抵抗運動が起こり、問題が起こったとされる。
(長くなりそうなので、もっと要約)
※ 東条英機は戦線の拡大を避け交渉での妥結を図ったが(よく抜けぬけとこんなことが言えるものだ!)、アメリカのルーズベルトが日米交渉で無理難題を押し付け、交渉が決裂し、真珠湾を攻撃し大きな成果を得た。この日本の攻撃をルーズベルトが『思惑通り』と発言したことを持って、日米開戦はルーズベルトの謀略であったと断定する。
※ そして、ありとあらゆる断片的情報や当時のニュースや、日・米・アジアの人々の証言を編集して、この戦争がアメリカによって押し付けられた「やむをえない参戦」であったことを視聴者に印象付ける。
※ 前回の記事でも述べたが、この編集方針は
「つまみ食い史観」
と言わなければならない。
一つひとつの情報は、一定の事実を含んでいるので、それなりの説得力がある。編集方針を全く反対にすれば(たとえば、護憲の観点から編集すれば)、同じ情報を使っても全然意味の違う結論を導きうる情報も少なく無い。
そういう意味でも、「うまいつくり」と言える。
※ 一方では、靖国神社の聖戦史観に邪魔になる情報は全く無視されている。
中国・朝鮮の女性を犠牲にした「従軍慰安婦」や、南京大虐殺や、対華21か条要求や、傀儡政権のでっちあげなどには言及しない。
また、現に日本軍の侵略によって、ひどい目に合わされた人々の証言は、当然のことながら全く出てこない。
特攻兵器の開発と出撃も詳しく描かれる。これまで海軍のゼロ戦などによる空中特攻と回天による海中特攻そして戦艦大和の特攻は知られてきたが、陸軍による海上特攻兵器も紹介され、多くの若者が大東亜共栄圏実現のために英霊となったことを強調する。
ここでは、それら特攻や、補給なき戦地で、多くの有能な若者が死に至らされた根本原因が、大日本帝国政府の誤った国策と軍部の誤った戦略と戦術によるものであることには全く触れられていない。
最も重要な問題は無視し、多くの若者が英霊となり靖国神社に祀られていることを強調して、天皇の参拝を求めるのである。
※ 映画の最後は、日本兵の遺骨収集の様子である。まだ帰れない英霊が多数現地に残されていることを紹介し、これらの英霊を一日も早く、「靖国で会おう」の志に応えてお迎えしなければならないと言い(遺骨収集も、ある意味では当然のことなのであるが)、涙をさそうエンディングとなるのである。
いままで、浮かれて暮らしていた若者達には衝撃があり、一気に意識を変えさせることのできる「プロパガンダ」となっている。
まさに巧妙に仕組まれた「洗脳映画」である。
ナレーターは浜畑賢吉・上村香子であるが、上村香子のナレーションがだんだん絶叫調になり、北朝鮮のアナウンサーみたいになって耳につき、白け気味になって来るという“効果”はあった。
さて、この映画のひどさを検証するために1本買って帰ろうとすると、そうは行かない。ビデオは「非売品」であり、靖国神社の考え方に同意し、記名の上、賛助会費2000円以上を御納付頂いた方に差し上げるという仕組みにしている。
すなわち、これに“同意”して“買った”人は、靖国神社の考え方を支持した人としてデータベースに登録される訳だ。
こうすることによって、批判的勢力にビデオが流出することを制限している訳である。
はっきり言って護憲派や左翼勢力の宣伝戦略は靖国神社に負けている。
「私たちは忘れない」を超える若者にも訴求力のある情報を提示してゆく必要がある。
前回も書いたが、靖国神社の考えには反対なので、リンクは張りません。
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【最後まで御覧頂きありがとうございました。ついでにワン・クリックしていただければ嬉しいです。】
もっと小さいと思っていたが、想像以上に大きかったので驚いた
靖国神社「遊就館」視察レポートの続き
映像ホールでは1時間に一回プロパガンダ映画「私たちは忘れない」(50分)を上映している。
この映画は、各種展示と相乗効果を持って、アジア・太平洋戦争(靖国神社では、一貫して「大東亜戦争」と表現)が、欧米諸国の植民地支配からのアジア解放の「聖戦」であったという意識を来館者に植え付ける役目を果たしている。
これまでの護憲派の知り合いの話では、一緒に連れて行った若者が、視聴後一時的に『軍国主義者になった』とか、若い女の子が涙を流していたとか、聞くいわく付きの映画である。
映画の細部を、ここで再現するスペースも表現力も無いので、大まかな流れと感想を述べるにとどめる。
※ まず、うまくできた映画である。(良い映画という意味ではない)
多くの日本人が見て、「そうだねぇ~」と思わせる導入を図っている。
※ 出だしは、可愛い子どものアップというイメージ戦略である。
そして、今の繁栄した?日本の有様を映し出し、これは大東亜戦争で散っていった英霊達のおかげであることを強調する。
ここでは、何故多くの有能な若者が死に至らさしめたかは不問である。
※ そして、19世紀からの欧米によるアジアの植民地化の歴史を映し出し、欧米が如何にアジアを侵略し収奪したかを描く。
ここでも、初めて見る者にとっては、「なるほど、そうだったのか!」と思わせる演出を施している。(残念ながら引き込み方は“うまい”という他は無い)
※ この欧米のアジア支配から、アジアを解放するためには、大東亜共栄圏をつくり、アジアが協力して欧米に対抗しようという戦略が解説される。
これに、中国や朝鮮の代表(実は傀儡)も賛成したが、中国共産党やソ連やアメリカの介入により反日抵抗運動が起こり、問題が起こったとされる。
(長くなりそうなので、もっと要約)
※ 東条英機は戦線の拡大を避け交渉での妥結を図ったが(よく抜けぬけとこんなことが言えるものだ!)、アメリカのルーズベルトが日米交渉で無理難題を押し付け、交渉が決裂し、真珠湾を攻撃し大きな成果を得た。この日本の攻撃をルーズベルトが『思惑通り』と発言したことを持って、日米開戦はルーズベルトの謀略であったと断定する。
※ そして、ありとあらゆる断片的情報や当時のニュースや、日・米・アジアの人々の証言を編集して、この戦争がアメリカによって押し付けられた「やむをえない参戦」であったことを視聴者に印象付ける。
※ 前回の記事でも述べたが、この編集方針は
「つまみ食い史観」
と言わなければならない。
一つひとつの情報は、一定の事実を含んでいるので、それなりの説得力がある。編集方針を全く反対にすれば(たとえば、護憲の観点から編集すれば)、同じ情報を使っても全然意味の違う結論を導きうる情報も少なく無い。
そういう意味でも、「うまいつくり」と言える。
※ 一方では、靖国神社の聖戦史観に邪魔になる情報は全く無視されている。
中国・朝鮮の女性を犠牲にした「従軍慰安婦」や、南京大虐殺や、対華21か条要求や、傀儡政権のでっちあげなどには言及しない。
また、現に日本軍の侵略によって、ひどい目に合わされた人々の証言は、当然のことながら全く出てこない。
特攻兵器の開発と出撃も詳しく描かれる。これまで海軍のゼロ戦などによる空中特攻と回天による海中特攻そして戦艦大和の特攻は知られてきたが、陸軍による海上特攻兵器も紹介され、多くの若者が大東亜共栄圏実現のために英霊となったことを強調する。
ここでは、それら特攻や、補給なき戦地で、多くの有能な若者が死に至らされた根本原因が、大日本帝国政府の誤った国策と軍部の誤った戦略と戦術によるものであることには全く触れられていない。
最も重要な問題は無視し、多くの若者が英霊となり靖国神社に祀られていることを強調して、天皇の参拝を求めるのである。
※ 映画の最後は、日本兵の遺骨収集の様子である。まだ帰れない英霊が多数現地に残されていることを紹介し、これらの英霊を一日も早く、「靖国で会おう」の志に応えてお迎えしなければならないと言い(遺骨収集も、ある意味では当然のことなのであるが)、涙をさそうエンディングとなるのである。
いままで、浮かれて暮らしていた若者達には衝撃があり、一気に意識を変えさせることのできる「プロパガンダ」となっている。
まさに巧妙に仕組まれた「洗脳映画」である。
ナレーターは浜畑賢吉・上村香子であるが、上村香子のナレーションがだんだん絶叫調になり、北朝鮮のアナウンサーみたいになって耳につき、白け気味になって来るという“効果”はあった。
さて、この映画のひどさを検証するために1本買って帰ろうとすると、そうは行かない。ビデオは「非売品」であり、靖国神社の考え方に同意し、記名の上、賛助会費2000円以上を御納付頂いた方に差し上げるという仕組みにしている。
すなわち、これに“同意”して“買った”人は、靖国神社の考え方を支持した人としてデータベースに登録される訳だ。
こうすることによって、批判的勢力にビデオが流出することを制限している訳である。
はっきり言って護憲派や左翼勢力の宣伝戦略は靖国神社に負けている。
「私たちは忘れない」を超える若者にも訴求力のある情報を提示してゆく必要がある。
前回も書いたが、靖国神社の考えには反対なので、リンクは張りません。
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