家具の学校

『家具の学校』から始まったモノづくり
現在は、ダニエル元町本店にてワークショップ体験をご案内

2011年12月3日 上級特派員便り

2011年12月05日 | Weblog
上級特派員便り

2011年12月3日 @伊勢原校   雨

今週も引き続きキャビネットの製作。
つい2,3日前は小春日和の良いお天気だったと言うのに、今日の伊勢原は天気も悪く、えらく寒くなりました。

長い、長い工程を経て、キャビネット製作も最終盤になりました。前回も述べましたが、キャビネット製作は実に様々な工程があり、それらのどの工程もおろそかに出来ず、家具製作は気の抜けない神経の磨り減る作業です。集中力が続かない歳になるとなかなか大変な作業で、どうしても工程のいくつかはちょっとした失敗の虫に出会います。集中力だけではなく、無論技術の未熟による失敗もあります。それでも以前に比べれば失敗の数も減り、失敗の深刻さも軽くなってきたように思います。やはり教わるだけのことはあります。生徒の質は低くても教師の質が高いのです。

今週は、残りの作業である引き出しと扉の作製です。
扉は飾り面取りをスピンドルまたはルーターで加工。左右の扉の組違い加工。丁番が綺麗に収まるようにトリマーで彫る。
引き出しは、前板の左右と上部の縁を片ぎんなんの飾り面取り。下部はR加工。また、左右は側板を組むための丸鋸加工。
先板には側板を組み込む溝彫りのスピンドル加工と底板用の溝加工。側板には先板を受ける切欠き加工と底板用の溝加工。スピンドル加工前に加工寸法に併せあらかじめ毛引きをしておく。そうすることによって切削面が綺麗に仕上がる。細かいです。
ところで、ケビキは毛引きでも罫引きでも、どちらでも良いそうな。
前板は、基本的に木裏を表面に出し、木目は左から右に流れるように選ぶのが綺麗に見えるのだそうな。そんなこと、かって考えたこともなかった。このように細かいことが色々あってとても覚えきれません。
引き出しの組み立ては、前板と側板はボンドと釘。釘も内側に斜めに打ちます。釘はあらかじめダボ穴を開けておきくぎを打ち込んだ後テーパーダボを打ち込む。
先板と側板は、ほど穴のような溝加工を施した側板にほぞ加工のような先板を嵌め込んでボンド。底板は、前板、側板、先板の溝にはめ込んでボンドはせずにタッカーで固定。
あんなこんなで、覚えきれずに抜けた加工もあったかもしれませんが、引き出し組み立て完了。

本日の佐宗おやつはリクエストのあった「山梨県産巨峰の干しブドウ入りチーズケーキ。前回同様美味しい。作りも味も一定しているのがすごいと思う。
伊勢原訪問中の横浜事務所の大谷さんにもおすそ分け。秋葉さんには話さぬようにと釘刺され。


写真1: 扉の飾り面取り

写真2: 側板の加工

写真3: 引き出しの組み立て
  
写真4: 引き出し用取っ手数種

写真5: 本日のおやつ チーズケーキ


『お道具拝見コーナー』その9(三枝氏投稿)

今回は、正野先生ご愛用の筋罫引きの紹介です。
この罫引きは 正野先生が、職業訓練校に在学中に製作した物だそうです。
普通の罫引きは棹と同じ方向に楔が入っており、この楔を締めて棹を固定する物が多く使われていました。
しかし従来の罫引きの欠点は、楔を締める時に どうしても棹が若干動く事です。この欠点を改良したのが 縦にカンヌキが入る形の、写真の罫引きです。
私は大田区の職業訓練校の木型課でこのタイプの罫引きを使うのを見た事が有ります。 精度を要する木型製作においては、必然的にこのタイプの罫引きが使われたのでしょう。
今ではネジで締め付けるタイプの罫引きが安く購入出来るので、市販品を購入すれば用が足りると思いますが、矢張り自作した物には、格別の愛着が有ります。余り見掛けないこのタイプの罫引きを製作する事をお勧めします。 
このように道具類を自作すると、道具に対する理解が深くなるばかりでなく、工作技術の向上にも役立ち、木工を深く理解するきっかけにもなるでしょう。
写真を見て戴くと、その構造は理解できると思います。 罫引きには、色々な形が有ります。 持ち易い形を色々工夫すると面白いでしょう。
青雲の志に燃える(?)正野青年が、多忙な職業訓練校での授業の合間に、指導教官の罫引きを真似て製作した記念の、愛着ある品物なのだろうと思います。
木工を長くやっていると、何故か時として物作りに自信を無くしたり、木工が嫌になる時が必ずあります。
そんな時には、木工に情熱を傾けた当時に製作した、このような罫引きを見て、初心を思い起こし、惰性に流されがちな現状を反省し、新たな目標を立て、気分を新たに木工に取り組める、そんな記念の品物を持っている人は幸せです。

写真6: 罫引き

写真7: 罫引き、縦に入るカンヌキ

文責・編集  堀江


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