◆自由な投句箱/花冠発行所◆

主宰:高橋正子・管理:高橋句美子・西村友宏

10月25日

2013-10-26 07:27:40 | Weblog
●河野啓一
草深き秋野のほとり吾立ちぬ★★★★
草深い秋野に自分を立たせて思うこと。それは、草深い秋野の自然がもつ思いそのもののような気がする。(高橋正子)
 
赤バラの小さきを愛でて窓開ける★★★
秋の夜や今宵も句作はインターネット★★★

●桑本栄太郎
警報のテレビ画面や野分荒れ★★★
荒畑の雨に明るき泡立草★★★
束ねらる小菊咲き初む朝の雨★★★

●佃 康水
 霜降の日松の菰巻き
菰巻きや縄目きりりと立ち揃い★★★★
新しい菰で幹を蒔かれ、縄をきりりと結んだ木は、風格が一段と増して見える。冬越しの準備が整い、気持ちが引き締まる思いだ。(高橋正子)

伽藍まで伸び行く松は色変えず★★★
水音の高き小流れ石蕗の花★★★

●多田有花
蛍光灯終日点し秋の雨★★★

直角に台風曲がり沖を去る★★★★
この10月は台風が次々追っかけるようにやってきて、進路に心配した。幸い、この台風は、気が変わったかのように、直角に曲がって沖へ去った。台風が生き物のように捉えらえている。(高橋正子)

灯火親し深海生物写真集★★★

●小口泰與
あどけなき子犬のあくび花野かな★★★★
花野は草紅葉、芒、小さな花などがあって、繊細な野である。子犬にもやさしい。あどけなく、あくびなどしたりする。愛犬がかわいらしく詠まれている。(高橋正子)

瑕謹なき高原の空紅葉かな★★★
草に沿い草の高さに秋の蝶★★★

●古田敬二
夕暮れの秋の山並み田に煙★★★
田に煙山並み逆光紀伊の秋★★★

無人家の芒の白銀新しき★★★★
無人の家の芒の穂だけが白く銀色に輝いて新しい。無人家は古びるばかりだが、植物は季節がくれば、また新しい輝きを見せてくれる。(高橋正子)
コメント (5)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

10月24日

2013-10-25 06:59:11 | Weblog
●河野啓一
雨上がり待ちかね庭に小鳥来る★★★
石榴の実威風堂々裂けており★★★
星屑の匂うごとくに金木犀★★★

●小口泰與
秋茄子の乾ぶるままや風の中★★★★
秋茄子も終わりに近づき、木になったまま風に乾くのを任せている。作者の住む上州を思えば、乾びる茄子も風もわびしい景色だ。(高橋正子)

来る雲の千変万化野分かな★★★
外に出づと虫の音絶ふる朝かな★★★

●桑本栄太郎
雨降れば楚々と色付く柿の村★★★
雨に濡れ黄花コスモス更に映え★★★
秋雨を夢に聞きおり夜もすがら★★★

●多田有花
昇る月ほどよく散りし雲照らす★★★
霜降の窓に静かな雨の音★★★

晩秋の嵐ゆっくり近づきぬ★★★★
10月も終わりというのに、今日26日は台風27号がゆっくり西日本に接近している。晩秋の台風は、晩年の台風ということか。(高橋正子)

●古田敬二
秋祭りだんじりを引く綱太し★★★★
「綱太し」に祭の威勢の良さ、力強さが表現されている。太い綱でだんじりが引かれ、地方の祭が盛り上がる。(高橋正子)

軋みつつだんじり坂を秋まつり★★★
さわやかに幟はためく秋まつり★★★

●小西 宏
刈蘆の蘖(ひこばえ)の田に小鷺立つ★★★
霧雨のロマンスグレー桜の葉★★★
実ばかりとなる花水木秋寒し★★★
コメント (2)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

10月23日

2013-10-23 04:58:32 | Weblog
●小口泰與
木犀や夕べの風を身の内に★★★
群れなして阿鼻叫喚の稲雀★★★
風に反り風にたわわや散る柳★★★

●河野啓一
秋野行く厚き雨雲仰ぎつつ★★★
庭先の小菊を摘めば雨模様★★★★
菊日和という言葉もあるが、ときには小雨が降る日もある。庭先に咲いた小菊を少し摘むと、今にも雨が降りそうな曇り具合。小菊はそんな日も、輝いている。(高橋正子)

柿の実の雨に濡れたる艶の良き★★★

●黒谷光子
秋晴れに宗祖の遺蹟訪ぬ旅★★★
筋塀の続く寺町薄紅葉★★★
街の灯のひろびろ秋の高速道★★★

●桑本栄太郎
双葉菜の列の乱れに野風かな★★★
秋蝶の日差しに酔いてさ迷える★★★
木の実降る水面の楽となりにけり★★★

●古田敬二
夕されば濡れてさびしき柿落葉★★★
子を待てば濡れてさびしき柿落葉★★★
あけび揺れるほんのちょっぴりほほ笑んで★★★

●小西 宏
団栗の茶の濃くなりぬ艶放ち★★★★
団栗は、熟れるとつやつやしてきて、茶色の色も濃くなる。充実した木の実となる。(高橋正子)

椋鳥の柿の実散らし騒がしき★★★
日を避けて通りし径の今は黄葉★★★
コメント (2)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

10月22日

2013-10-22 00:24:31 | Weblog
●小口泰與
朝寒の雨粒いよよ白きかな★★★★
朝はうすら寒くなった。雨が降れば、雨粒に白ささえ見える。辺りに「白さ」を感じるは秋なのだ。(高橋正子)

鳶を追う阿修羅の鴉秋の暮★★★
白波を起こす風道秋の湖★★★

●迫田和代
今日もまた広い空あり菊日和★★★★
「今日もまた」とあるから、日和続きの今日この頃である。菊の花の香る菊日和は、なんとも晴れ晴れとするよい天気だ。(高橋正子)

春竹の林の穴から朝日射し★★★
実を落としだけど青々銀杏の葉★★★

●河野啓一
柿の葉のきらきら光る朝の風★★★★
柿熟れて葉のきらきらと朝の風(正子添削)
もとの句は季語がないので添削した。柿が熟れるころは晴天続きで、ひんやりとした朝の風に柿の葉もきらきらと光って、心楽しい朝である。(高橋正子)

台風の進路気になる昨日今日★★★
秋冷の気を切りさいてバイク行く★★★

●多田有花
秋晴れや信号は全て青で過ぎ★★★
澄む水をたたえし寺の手水鉢★★★
石蕗の花黄色き蝶の来てとまる★★★

●桑本栄太郎
杓子菜の穫られ菜屑の乱れけり★★★
コスモスの風の狼藉絶え間なし★★★

蘆刈の空開かれて明らかに★★★★
背丈が人の丈以上もある蘆が刈られると、そこだけすっぽりと空が開かれたようになる。明らかに空がある。蘆を刈り取ったあとの空が新鮮で、さっぱりとしている。(高橋正子)

●小西 宏
アカゲラのせせらぎに来て枝の揺れ★★★★
アカゲラもせせらぎに来ることがあるようだ。せせらぎへと伸びた枝に止まったのだろう。アカゲラがいて、枝が揺れている。間近にアカゲラの動きを見るのは楽しいことだ。(高橋正子)

脚弾む道に団栗うかと踏む★★★
黄落の白樺染める夕日影★★★

●古田敬二
秋祭り果て山影に月上る★★★
秋冷の入り来る列車止まるたび★★★
朝の陽に落ちしばかりの栗光る★★★
コメント (6)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

10月21日

2013-10-21 05:55:55 | Weblog
●小口泰與
花そばや溶岩の傾斜に道祖神★★★
峪筋の禽の高音や紅葉時★★★

ままごとのお椀かろしや赤のまま★★★★
「お椀かろし」がいい。作者はたわむれにままごとのお客になったとも思えるが、赤のままをいれたお椀があまりにも軽いこと、そこに感銘がある。(高橋正子)

●河野啓一
麗らかや妻はパン屋へパン買いに★★★★
秋麗(あきうらら)妻はパン屋へパン買いに(正子添削)
「麗らか」は春の季語。この句は、今作られたことであるし、「麗らか」より、「秋麗」のほうが、句意に沿っている。
パンには、洒落た雰囲気がある。秋空高く、天気のよい日は気持ちも楽しくなって、パン屋へおいしいパンを買いに出かける。心軽さが身上の句。(高橋正子)

虫食いの葉でもまあるい柿の実が★★★
はらからに電話を掛ける秋の午後★★★

●桑本栄太郎
秋雨や楚々と色づく庭の木々★★★
雨雲の峰駆け昇り山粧ふ★★★
実みずきの桂西口駅の雨★★★

●小西 宏
朝日差す黄葉うすき白樺に★★★★
白樺の黄葉は、白い幹を際立たせて洒落た美しさがある。朝日が差すと日に透けて黄葉はさらに美しくなる。(高橋正子)

休耕の畑よりの湯気霧深む★★★
笹青き知床五胡のきりぎりす★★★

●古田敬二、
杜鵑草旅終え帰れば真っ盛り★★★★
旅を終えて家に帰ると、旅に出る前はまだほつほつ咲いていた杜鵑草だが、今を盛りに咲いて迎えてくれた。旅に出ている間も、杜鵑草は花を咲かすべく確実に日々を過ごしていたのだ。(高橋正子)

赤々と入日に映える唐辛子★★★
陽の色の唐辛子採る夕来たる★★★

●佃 康水
楝の実空の青さへ磨かれる★★★
池淵へ寄り来る鯉へ石蕗の花★★★

掌へ全き熟柿捥ぎくれる★★★★
「全き熟柿」は、透けるような朱色で、今最高点の熟れ具合の柿。その熟柿を崩さないよう掌にそっと受けている。時の完熟を掌に受けているとも言えそうだ。(高橋正子)
コメント (5)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする